「9歳の壁」を耳にしたことはありますか?“壁”と聞くと、ちょっとやっかいなものに聞こえますが、この壁を上手に乗り越えると、発達障害の子どもが大きく成長するチャンスとなります。この「壁」を上手に乗り越える声かけを紹介します。 |
【目次】
1.子どもの変化に困惑するお母さん
2.「9歳の壁」ってこんなに大変!発達障害の前に立ちはだかる2つの壁
◆①学習面の壁
◆②精神面の壁
3.やる気を失う子どもたち
4.やってみよう!が育つお母さんの声かけ
1.子どもの変化に困惑するお母さん
小学校3~4年生ごろになると、今まではただただ可愛かった子どもが、急に口答えをするようになったり、言うことを聞かなくなったり…
そんな子どもの変化に困惑していませんか?
家に帰ってきてもダラダラとゲームばっかり。
「ゲームやめて宿題やれば?」と指示しても、「うるせー!」と口答え。
そんなお子さんの態度にお母さんも腹を立て、親子バトル。
そんな経験はないでしょうか?

でも実は、この時期の子どもたちは、学習や生活、友人関係など様々な「壁」にぶつかって、悩み苦しみ、葛藤している時期なんです。
それが「9歳の壁」の正体です。
だからお母さんはこの時期の子どもの発達をよく理解して、壁を乗り越えられるようお子さんをサポートしてあげて欲しいと思います。
2.「9歳の壁」ってこんなに大変!発達障害の前に立ちはだかる2つの壁
「9歳の壁」には大きく分けて2つの壁があります。
◆①学習面の壁
小学校3~4年生になると、学習の難易度がグッと上がりつまずく子どもが多いです。
学習内容が『具体的』から『抽象的』へと変化していくことが大きな要因の一つです。
<低学年>
りんごが2つありました。みかんが3つありました。合わせていくつ?
↓
<高学年>
0.258+2.358=?
このように、今までは頭でイメージできたものが、小数や分数など頭ではイメージしにくい内容へと変わってきます。
抽象的な概念の理解が苦手な発達障害やグレーゾーンの子どもにとっては、とても大きな壁となります。
またこの時期になると、思考力や理解力が求められ、より深い学力が必要となります。
ここで学習についていけなくなり、つまずくお子さんがとても多いと言われています。
その他にも、理科・社会・英語の教科が増えたり、6時間授業が増えたり、体力面でも負荷がかかりやすいのがこの時期です。

◆②精神面の壁
9~10歳ごろになると「自己客観視」ができるようになります。
小さい頃は天真爛漫だったお子さんが、自分を客観的に見えるようになり、「あれ…私って意外とできていない?」と気づき始めるのがこの時期です。
発達障害・グレーゾーンのお子さんは苦手なことが多く、みんなのようにできないことが多々あります。
だからこの時期に「自分は劣っている」と必要以上に落ち込み、自信を失い、自己固定感が低くなってしまうのもこの時期の特徴です。
また、人間関係も複雑になります。
友達グループができ、グループ内での暗黙のルールやアイコンタクトでの会話などが始まります。
そのため、言葉以外での会話が苦手な発達障害・グレーゾーンの子どもにとっては理解が難しく、友達とのトラブルが増えてくるのも時期です。

勉強はついていけなくなるし…
自信はなくすし…
9歳の子どもって、こんなに大変な時期だったんですね…
でも私たち大人は、こんなに大変な子どもたちにどのような声をかけているでしょうか?
3.やる気を失う子どもたち
私たち大人は、子どもたちの大変さも理解せず、心ない言葉をかけてしまっていることが多いです。
「もう宿題ぐらい一人でやりなさい」
「○○ちゃんは、あんなにできているよ」
「4年生なんだから、しっかりしなさい」
そんな言葉を子どもにかけていませんか?
そんな言葉をかけられて、子どもはどうでしょう。「よし!もっとがんばるぞ!」と思えるでしょうか?
たぶん思えないはずです。
「どうせ僕なんか…」
「やっても無駄だ…」
頑張っても頑張っても、うまくいかない。
9歳の壁につまずいた子どもたちは、どんどん自信をなくしてしまいます。

では、自信をなくしてしまった子どもたちはどうなるでしょう。
なにもかもやる気をなくし、やる気をなくすばかりでなく、新しいことにもチャレンジしようと思えなくなってしまいます。
だから、自信ってすごく大切です。
自信があれば、行動する。
行動すれば、成長する。
成長すれば、自立する。
だからこの「9歳の壁」を上手に乗り越えられるよう、お母さんの声かけで自信を授け、成長させてあげることが大切です。
もしここでつまずいてしまうと、この先の高学年・中学生とずっとついていけなくなってしまう恐れがあります。
だから9歳の今!お母さんの適切な対応で、この壁を乗り越えていきましょう。
4.やってみよう!が育つお母さんの声かけ
その「9歳の壁」を乗り越えるために必要なものはただ1つ。
子どもを「肯定」する。
ただそれだけです。
ありのままの子どもを受け止めて、ただただ肯定してあげましょう。
「あれしなさい!」「これしなさい!」はいったんやめて、「あれできたね」「これもできたね」と子どもがしたこと、できたことを肯定してあげましょう。
1番簡単な方法が『実況中継』です。
子どものしたこと、やっていることをそのまま伝えてあげるだけでOKです。
朝起きてきたら
「起きてきたんだね、おはよう!」
着替え始めたら
「着替えるんだね」と。
当たり前にやっていることをそのまま言葉にして伝えてあげましょう。
そしてその言葉にプラスして
漫画を読んでいたら
「漫画読んでいるんだね。どんな本?」
ゲームをしていたら
「ゲームやっているんだ!それなぁに?」
と、子どもの好きなことや、やっていることに興味を示してあげ、共感してあげるとより効果的です。
子どもは「お母さんが自分ことをちゃんと見てくれている」と安心し、親子関係が良好になっていきます。
そして親子関係が良好になると、お母さんの声がお子さんに届きやすくなり、指示を聞く耳ができてきます。
指示を聞く耳ができるということは、指示が通りやすくなるということで、お母さんにとっていいことづくしです。
ここで注意して欲しいことは、「またダラダラして…」「まだ宿題やってないの?」など否定的な言葉はいったん心にとどめ、言わないようにしてください。
否定的なことばかり言っていると、せっかくの肯定の言葉がお子さんには届きません。
だから、いったん否定的な言葉はストップし、肯定することに力を注いでみてください。
そして肯定的な関わりが増えると、子どもは少しずつ自信がつき、やってみよう!の気持ちが湧いてきます。
やってみよう!の気持ちがとても大切です。
やってみよう!の気持ちがあれば、高学年・中学生だって怖くありません。
自信を失いやすいこの時期は、まずは自信を失わないようたっぷり肯定的な声かけをして、お子さんのやってみよう!の気持ちを育ててあげてください。
脳は行動することで成長します。
だからお母さんの声かけで、どんなことでもやってみよう!と思えるよう、お子さんをたくさん肯定し、自信を授けてあげましょう。
もし子どもの褒めるところなんて見つからない!と思っている方はこちらの記事も参考にしてみてくださいね。
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執筆者:いたがきひまり
(発達科学コミュニケーショントレーナー)
(発達科学コミュニケーショントレーナー)