インターハイ、次女から受け取った〇〇に涙があふれた理由

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「捨てといて」

大会後、次女が私に手渡してきたのは、
テーピングをボール状にまるめたもの。

以前、大怪我で手術したところが
大会前に再断裂してしまったんです。

立つのもやっとの状態で、
グルグルのテーピングで臨んだ試合。

必死に、歯を食いしばって、
次々と勝ち進んでいったけれど、
最後の最後、ほんのわずかな差で入賞を逃しました。

試合の後、
静かにテーピングをはがしながら、
次女はどんな思いでこの「玉」を作ったんだろう。

痛かっただろうな。
悔しかっただろうな。
勝ちたかっただろうな。

この量のテーピングは、
この大会のためだけじゃない。

次女が生きてきた18年間に、
必要としてきた、
彼女の心の傷を支えてきたものとも
私には思えるのでした。

いつもならすぐに捨てちゃうはずの
使用済みのテーピング。

それをこんな形にして
私に渡してきた意味とは?

そう考えたとき、思い出したのは
かぐや姫が出した難題。

武勇に優れた大伴御行に課したのは、
「竜の首にかかる五色に輝く宝玉」。

人間が到底手に入れられないとされた宝物。

私にはこのテーピングの玉こそが
その宝玉に見えたんです。

18年かけて、
次女が手に入れた宝玉。

生まれ持った特性に負けずに、
何度も折れては立ち上がり、
一度は命を手放しかけても、

挑んで、戦い続けて、
手に入れた宝物。

「応援に来てくれてありがとう」

家族全員に向けて次女が言ったその言葉に、
私は心の中で、そっとこたえました。

「終わりじゃないよ」
「これからも、ずっと応援し続けるよ」

この宝玉は、私にとって
“母”としての誇りであり、
“発コミュトレーナー”としての覚悟の証になりました。

「いつも見えるところに置いておこう」

本当は、こんなに傷だらけになる前に
もっと早く、正しいコミュニケーションで
次女の力を引き出してあげられていたら。

もっと楽に、もっと早く、
笑顔で前に進める道があったかもしれない。

そう思うと、今でも胸が痛くなります。

だからこそ私は、
これからも、発コミュトレーナーとしての
決意と覚悟を強く持って伝えていきたい。

出会ってくれたママたちと、
その子たちが、
こんなグルグルにならないで済むように。

今、目の前で苦しんでいる子がいたとしても、
その子の心に巻かれた“グルグル”を解いていけるのは、
ほかでもない、ママの関わり方

次女のインターハイを通して、
私はこれからも、
ずっとそんなママたちの味方でありたいと思ったのでした。

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