1.「カレー嫌いだから行きたくない」突然始まった給食嫌い
◇2021年(小学1年生・秋)
わが家の次女・千帆は、天真爛漫で好奇心旺盛。
一方で、大きな音にとてもびっくりしたり、ちょっとした友だちの言葉で深く傷ついたりする繊細な面もありました。
小学校にも毎日元気に通い、お料理教室やダンスの習い事も楽しむ活発な子です。
そんな千帆に、9月頃から突然、学校への行き渋りが始まりました。
きっかけは、国語の発表でみんなから注目されるのが嫌だったこと。
ですが、発表が終わった後も、国語、音楽、体育と苦手なことがあるたびに行き渋るようになっていきました。
◇2022年(小学2年生・春〜秋)
2年生になっても行き渋りは収まらず、学校を休む日は少しずつ増えていきました。
最初は1週間に1日だった欠席が、2日、3日と増え、だんだん学校へ行く日より休む日の方が多い状態に・・。
当時の私は、時間割や予定を見ながら、
「今日は行けそう」
と少し安心したり、
苦手な授業がある日は、
「どうしたら避けられるかな」
「どこまでなら参加できるかな」
と、なんとか学校へ行ける方法を考えていました。
とにかく、1日でも多く学校へ行けるように。
そればかりを考えていたのです。
◇2022年(小学2年生・冬)
そんなある日。
苦手な授業はなさそうな日だったので、
「今日はすんなり行けそう」
と、私は少し安心していました。
すると、毎日給食の献立をチェックしていた長女(小学4年生)が、
「今日カレーだ。白い服だと汚れたら落ちにくいよね」
と何気なく言いました。
すると、それを聞いた千帆が、
「え、今日カレーなの?」
そして、
「給食嫌い!今日、カレー嫌いだから行きたくない!」
と言い出したのです。
それまで千帆の口から「給食嫌い!」なんて聞いたことがありませんでした。
小1からはお料理教室に通い、これまで「食べること」で困ったことはなく、給食も毎回おいしく食べている様子だったのに!
慌てた私は先生に相談し、
「カレーは残していいよ」
と言ってもらいましたが、それでも千帆の気持ちは変わりませんでした。
その日以降、カレーだけでなく、親子丼の日にも
「親子丼嫌い!今日は行きたくない!」
と言うようになり、給食も学校へ行くときのブレーキのひとつになっていきました。
さらには、給食だけでなく家でも、今まで平気で食べていた、お肉や卵、パンまで嫌がるようになっていったのです。
私は、
「どうしてこんなに好き嫌いが多くなってしまったんだろう?」
と戸惑うばかりでした。

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2.好き嫌いではなく、感じ方の違いに気づく
◇2023年(小学3年生・春〜夏)
好き嫌いが増えていくことに戸惑いはありましたが、当時の私がいちばん困っていたのは、学校を休む日がどんどん増えていることでした。
苦手な授業に加え、友だちとのいざこざなど、さまざまなことが重なり、小学3年生になる頃には完全不登校に。
家にこもって過ごすことが増え、それまでの好奇心旺盛な姿もほとんど見られなくなりました。
こんな状況では学校どころではありません。
・なんとか外に出るきっかけをつくりたい。
・お出かけや学校行事くらいは楽しめるようになってほしい。
先生やカウンセラーさんに相談したり、本を読んだり、ネットで検索したり。
どうしたら千帆がまた外に出られるようになるのか、情報を探し続ける日々でした。
悩みながらも、子どもとの関わり方を模索する中で出会ったのが、繊細な子の心と脳を強くする関わり方を専門に教えている、むらかみりりかさんの脳科学・心理学・教育学をベースにした発達科学コミュニケーションの学び(以下、発コミュ)でした。
発コミュを学ぶ中で、匂いや味、食べ物の硬さや柔らかさ、音の大きさなどの感じ方は、そのときの心と脳の状態によって変わることがあると知りました。
私なら、
「このパン、ちょっとパサパサするなぁ」
「卵にも匂いはあるなぁ」
と感じても、多少気になるくらいで、そのまま食べられます。
けれど千帆にとっては、それが「食べたくない!」と感じるほど、不快なものになっていたのかもしれません。
振り返ってみると、
「カレーのお肉はブヨブヨしてイヤ!」
「卵は匂いがイヤ!」
「パンはパサパサしてイヤ!」
さらに、
「教室はいつもうるさい」
とも話していました。
それまで私は、食べ物の「好き嫌いが増えた」としか見えていませんでした。
けれど発コミュを学んだことで、千帆は、私が思っていた以上に、匂いや食感、音などを強く感じ取っていたのかもしれない、と見方が変わっていったのです。
そして、私が最も驚いたのは、発コミュは感じ方を変えるものではないということ。
感じ方は変えようとはせずに、行動を改善していくというその考え方でした。

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3.娘の「できていないこと」から「できていること」へ変えた視点
◇2023年(小学3年生・夏)
発コミュを学び始めた私が最初に取り組んだのは、外に出すことでも、学校に連れて行くことでも、食べ物をどうにかすることでもありませんでした。
千帆のできていることを見つけて伝える、肯定的なコミュニケーションでした。
それまでの私のコミュニケーションと言えば、
「早くして」
「こうした方がいいよ」
「そろそろやったら?」
と、指示や命令、アドバイスをすることが多く、できていないところばかりに目が向いていました。
私の思うように動かない千帆を見て、イライラしたり、声を荒げたりすることも。
そんな私は、発コミュを学び始めても、最初のうちはどこをどう肯定すればいいのかわかりませんでした。
けれど、次の2つのポイントを意識して千帆を見るうちに、少しずつ私にも千帆のできていることが見えるようになっていきました。
① 25%OKルール
100%できていなくても、25%でもできているところを見つけてOKを出すこと。
たとえば、お茶碗を洗ってくれたら、少しくらい泡が残っていても、
「お茶碗洗ってくれてありがとう!」
ごはんを残した日であっても、
「これ食べられたね!」
②気づいていると知らせる
実況中継のように見たままを言葉にすること。
歯磨きをしていたら、
「歯磨きしてるね」
YouTubeを見て笑っていたら、
「YouTube面白そうだね!」
できていないことを何とかしようとするのではなく、好ましい行動に肯定的な注目をしていきました。
毎日取り組むなかで、どうしてもできていないところが目について、私の心がざわざわしてしまうタイミングもありました。
そんなときは、むらかみりりかさんが、学びの中でお話ししていた言葉
「淡々とコツコツと肯定を積み重ねていく」を合い言葉に毎日を過ごしていきました。
すぐに大きな変化があったわけではありません。
それでも少しずつ、千帆をお出かけや楽しそうなことに誘うと
「ちょっと行ってみようかな」
「やってみようかな」
と、自分から動く場面が増えていきました。
◇2023年(小学3年生・秋)
この関わりをコツコツ続けていくこと3ヶ月。
季節が夏から秋になる頃、運動会や社会科見学などの学校行事にも、千帆なりの形で部分参加できるようになったのです。
千帆に「できた」「なんとかなった」という経験が少しずつ増えていきました。
そして、この行動の変化を感じ始めた頃、思いがけないところで、あれほど嫌がっていた給食にも変化が現れたのです。

4.「給食嫌い」だった娘がカレーを完食した日
◇2023年(小学3年生・冬)
そして、少しずつ外へ動けるようになってきた冬の日のことです。
千帆は音楽発表会に参加するため学校へ行くことになりました。
実はその日の給食は、あれほど嫌がっていた「カレー」。
私は、
「給食がカレーだと知ったら、せっかく参加しようとしている気持ちにブレーキがかかるかもしれない」
と思い、あえてメニューを伝えずに送り出しました。
学校に着いたら、どこかでカレーに気づいてしまうかもしれない。
内心はヒヤヒヤしていましたが、音楽発表会が行われる体育館で千帆の出番を待っていると・・
列の一番最後にいる千帆が入場してくる姿を見つけてホッとしたのです。
そして、帰宅した千帆に、音楽会の演奏とっても感動したよ、と伝えると同時に
「給食、どうだった?」
と聞いてみると・・
「あっという間にカレー全部食べたよ~」と。
以前は、
「給食嫌い!今日、カレー嫌いだから行きたくない!」
と言っていた娘が、同じ給食のカレーを完食して帰ってきた。
「本当に!?」
私はとっても驚きました。
カレーを食べられるように練習したわけでも、苦手な食べ物を克服させようとしたわけでもありません。
毎日続けてきたのは、できていることを見つけて伝える、肯定的なコミュニケーションでした。
その日以降、家でもカレーを嫌がることはなくなり、給食がカレーの日には、
「給食のカレー好きなんだ〜!」
と言うように。
あれほど苦手だったカレーを、いつの間にか楽しみにするようになっていたのです。

5.苦手だったカレーも卵も、今では自分で料理するように!
◇2026年(小学6年生)
そして現在。
あれほど嫌がっていたカレーを、今では千帆は自分で作るようになりました。
圧力鍋のパッキンの向きや、ふたの開け閉め、火加減も一つずつ覚え、自分でカレーを仕上げます。
匂いが苦手だった卵も、チーズを入れたオムレツをささっと作ってペロリと食べてしまいます。
つい先日、ふと
「いつからカレーとか卵、食べられるようになったの?」
と聞いてみると、
「うーん、いつの間にか」
という答えが返ってきました。
そうなんです。
私や夫、千帆自身が「好き嫌いをなくそう」と頑張ったわけではありません。
肯定的なコミュニケーションを重ねる中で、気づけば、以前は匂いや食感を嫌がっていたものまで食べられるようになっていました。
「いつの間にか」
まさに、わが家の変化はその言葉どおりでした。
これからも、できていないことを一つずつ何とかしようとするのではなく、目の前の「できていること」を見つけながら、千帆の「やってみたい」を大切にしていきたいと思っています。

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執筆者:あなんしほ
発達科学コミュニケーション アンバサダー





