1.HSCだったわが家の娘
みなさんは、HSC(Highly Sensitive Child)という言葉を知っていますか?
「ひといちばい敏感な子」「繊細な子」と呼ばれる子どもたちは、5人に1人いると言われています。
たとえば、
・音や光、匂いに敏感 ですぐに疲れる
・ お友達が怒られても自分が怒られたように感じる
・ はじめての場所や人の前だとママから離れない
こんな様子があれば、お子さんもHSC繊細な子かもしれません。
私は、娘が小学校に上がり、学校に行き渋るようになるまで、娘の繊細さに全く気づいていませんでした。
思い返せば、服のタグを嫌がる・大きな音を嫌がる・ずっと昔の嫌だったことを昨日のことのように思い出すなどの兆候はあったものの、幼稚園ではお手本と言われ、明るく活発だった娘は、まるで繊細とは真逆な子だったのです。
しかし、行き渋りが始まると、性格は180度一変しました。驚くほどに繊細さを見せるようになったのです。
実は、繊細な気質は遺伝の影響が47%、環境が53%だと言われています。
毎日決まったことを先生からの手厚いサポートのもと行う幼稚園から、毎日違う時間割で一斉指示で動く学校生活では、 環境がガラリと変わります。
小学校に上がるタイミングを機に、娘のように繊細さが増してしまい、行き渋りに発展するということは、実は少なくないのです。
みんなは当たり前に学校に行けるのに、なぜうちの子だけ?と思っていた私が納得したその理由について、次の章でお伝えします。
2.繊細な子が小学校で行き渋りしやすい理由
繊細な子の脳は、まわりの刺激を敏感にキャッチするセンサーがとても強く、小学校の環境に適応するのに時間がかかるということがあります。
教室のざわざわした音やにおいに敏感、 先生や友達のちょっとした表情や言葉、 新しいルールや急な予定変更など・・・
こうした小学校での刺激が見えないストレスとなり積み重なると、脳の「危険センサー」が過剰反応し、「学校は安心できない場所」と感じ、不安になってしまうことがあります。
気持ちを伝えるのが苦手な繊細な子は、どんなに不安でも、困っていてもSOSが出せません。
ギリギリまで無理をしすぎた結果、脳の反応で朝になるとお腹が痛くなったり、「行きたくない」と訴えたりする行き渋りになってはじめて周りが気づくということがとても多いのです。
繊細な子の小学校行き渋りは、「わがまま」ではありません。無理に「頑張らせる」のではなく、正しい順番で、心と脳を整えてあげるおうちでの過ごし方が大切です。
3.繊細な子の行き渋りは初期対応が肝心!
繊細な子の小学校行き渋りは「無理をさせる」のも「ただ休ませる」のも逆効果!
まず必要なのは、心と脳のコンディションを整えることです。
先ほど、繊細な子の脳は、まわりの刺激を敏感にキャッチするとお伝えしました。
実はそれだけでなく、繊細な子の脳は ネガティブな感情と、そのときの場面をセットで記憶するのもとても得意です。
たとえば、
・ 授業中に答えられず恥ずかしい思いをした →「教室=怖い」
・ 先生に注意されてショックを受けた →「先生=怖い」
・ 友達とうまく話せず不安になった →「休み時間=つらい」
こうして脳が「学校=嫌な場所」と学習してしまうと、朝になるだけで気持ちが沈んだり、お腹が痛くなったり するのです。
だからこそ、行き渋りの初期対応では、「学校は安心できる場所」と脳にインプットし直すこと が大切!
まずは一番安心できるおうち、ママとの時間で、小さな安心と成功の体験を積み重ねる ことで、脳のイメージを書き換えていきましょう。
次の章では、実際に私が娘に行った対応をお伝えしますね。
4.今日からできる!脳が喜ぶママの声かけ
まずは不安になりやすい娘の安心と自信を育てるために、発達科学コミュニケーションで学んだ、「肯定的な声かけ」をベースに対応していきました。
今日はそのポイントを3つお伝えします。
◆肯定9:否定1の法則
肯定は目減りして伝わり、否定は10割増しで伝わるということを知り、「出来ないこと」ではなく「出来ていること」に目を向けることを意識しました。
・朝起きる→「起きたね」
・トイレに行く→「トイレ行ったんだね」
・ただ座ってる→「くつろいでるね」
・あくびをしてる→「かわいいあくび!」
・寝坊する→「たくさん寝れたね!」
今までは当たり前すぎてスルーしていたことや、否定的に見てしまっていたことでさえ、ポジティブに注目し、声をかけるようにしました。
◆子どもに注目しすぎない
繊細な子どもにとって、先回りの指示や過度な注目が逆効果になることがあります。
たとえば、「手洗った?」や「着替えないと間に合わないよ」などの声かけが、実は否定的なメッセージとして感じられやすいのです。
そこで、私は意識的に娘に注目しすぎるのをやめました。
着替えてほしい時、じっと見守るのではなく、自分の家事をすることで、娘が自分のペースでできるようにしました。
また、離れた場所で(今できていることはどこ?)と、娘の肯定ポイントを考えるようにしました。こうすることで、指示や先回りを封印し、できていることを肯定する声かけができるようになりました。
◆スキンシップを増やす
肌は「第3の脳」や「露出した脳」と呼ばれるほど、脳に大きな影響を与えます。
たとえば、ママに優しくギュッとされたり、ママの温かい感触と香りを一緒に感じることで、脳の中でオキシトシンという幸せホルモンが分泌され安心感を与え、自信を育てる効果があります。
私はすれ違うたびに、頭をヨシヨシしたり、「おいで」と声をかけてたくさんハグしたり、手をつなぐ、優しく背中をさするなど、娘とのスキンシップを増やしました。
スキンシップは、子どもだけでなく大人側にもリラックス効果があるため、私自身も穏やかな気持ちになり、親子で幸せなひとときを感じられることが増えました。
声かけを変えてわずか4日後には、いつもだったら癇癪(かんしゃく)を起こす場面で「まいっか」と気持ちを切り替えたり、ちょうど1週間後の2年生の始業式では、約8か月ぶりに自分からランドセルを背負い、笑顔で登校する姿を見ることができました。
繊細な子の小学校行き渋りを解消するには、正しいSTEPで対応していくことが大切です。まずは脳が安心できるママとの関わりをつくることを、一緒に始めてみませんか?
執筆者:ふじい あきな
(発達科学コミュニケーショントレーナー)