学校行事に参加したいけど不安な五月雨登校の繊細な子が自分で踏み出した20日間の関わり

お子さんが学校行事に参加したい思いがあるのに不安ばかりを口にすることはありませんか?五月雨登校していた繊細な娘は、卒業式に出たいけれど不安がいっぱいでした。スモールステップの目標設定で、式に参加して笑顔で卒業の日を終えた体験談をご紹介します。

1. 学校行事の雰囲気に耐えられるか不安な五月雨登校の繊細な子

 

我が家の長女いーちゃん(通称)は、とても繊細で人の感情や場の雰囲気に敏感です。また、非常に感受性が強いため、別れの場面や寂しい雰囲気が大の苦手。

 

2度の不登校とひきこもりを乗り越えて、6年生の2学期終わり頃には、好きな授業だけに参加する五月雨登校で学校に通っていました。学校で過ごす時間がどんどん楽しくなってきていた2月の終わり、卒業式について先生から連絡が来ます。

 

「来週から卒業式の練習が始まります。式に出るなら最初の練習は参加した方がいいです。」

 

式に出たいかどうかいーちゃんに聞いてみたところ、

 

「最後の学校行事だから出たい!」

 

と、目を輝かせました。

 

卒業式では、先生が決めたセリフを一人一言ずつ担当する「別れの言葉」のプログラムがあります。セリフには、いーちゃんが苦手な「お別れ」という言葉や、参加したい気持ちはあったのにどうしても参加できず、たくさんの涙を流した修学旅行の思い出を振り返る言葉も。

 

いーちゃんがどんな心境でその場にいることになるのか、私も複雑な気持ちでしたが、本人が出たいなら応援しようと心に決めました。

 

 

2. 練習や本番前に溢れ出す不安な気持ち

 

「卒業式に参加するぞ!」という強い想いで、本番3週間前に始まった練習初日から、かかさず練習に参加するいーちゃん。

 

練習が本格化し始めた3日目あたりから、以下のように次々と辛く感じることが出てきます。

 

「別れの言葉で自分の番が来るまでに号泣して、ちゃんと言えなくなりそうで心配。」

「気疲れしやすいから、独特な雰囲気の式でしんどくなりそうで心配。」

「最後までいるのは無理かもしれないけど、退場してもいいのか心配。」

「参加できなかったり途中で体調が悪くなったら、別れの言葉の自分のセリフはどうなるか心配。」

「歌で泣いてしまいそう。」

 

また、参加する方向で迎えた本番の朝も、不安な気持ちが溢れ出し、緊張のあまり頭痛や気持ち悪さなど体調にサインが出ました。

 

 

3. 繊細な子に合った不安な気持ちへのコミュニケーション

 

いーちゃんのひきこもりや妹たちの不登校、不登園が重なったことをきっかけに様々な勉強をしました。変わるべきは自分と気づき、「子どものありのままを大事にしよう」と思うようになりましたが、「とはいえ、もっと楽に社会とつながる方法はないものか」と思っていたところで出会った、お家で脳を育てる発達科学コミュニケーション(以下、発コミュ)。

 

発コミュのマスタートレーナであるむらかみりりかさんの、

繊細な子にネガティブな感情への共感は逆効果

繊細さはギフト、繊細さを強みに

という言葉に、

 

「繊細な子には共感が大事なんじゃなかったの!?」

繊細さを強みにできるなら教えてほしい!

という思いで発コミュを学び始め、3カ月が経過していました。

 

発コミュの学びである「肯定:否定=10:0」の関わりによって子どもたちみんなが自信をつけ、最も変化が大きかったいーちゃんは、自分の「やりたい!」をどんどん叶えてきましたが、とてもとても繊細なので不安な気持ちが湧き出ることはあります。

 

不安な気持ちや挑戦したいのに一歩踏み出せないときの対応については、発コミュで次のように勉強していました。

 

①不安な気持ちは共感せず気持ちを一旦預かる

 

不安な気持ちには「それは不安だよね〜」と共感せず、「そうなんだね〜」と、気持ちをひとまずお預かりします。

 

共感すると、「ママも同じ気持ちなんだ。やっぱりこれは不安だよね。」と不安がますます大きくなり、より強く脳にネガティブな感情を記憶してしまいます

 

②不安な気持ちにすぐアドバイスしない

 

不安な気持ちを聞いて「だったらこうしたらどう?」とすぐさまアドバイスするのは控えます。

気持ちを昇華する前にアドバイスを与えることで、気持ちを十分に吐き出しきれないことがあるためです。

 

③繰り返し言う不安は、言語化して分解を手伝う

 

気持ちを吐き出しても不安が消えない場合は「心配なことはなぁに?」と心配なポイントの言語化を手伝います。心配に思っていることが何なのかがわかると、案外解決できることが見つかることもあります。

なお、言葉にすることで、感情の脳から理性の脳に切り替える効果もあります。

 

④それならできそうのスモールステップで挑戦する

 

不安のもとがわかったら、乗り越えられそうなスモールステップの目標を設定し、「それならできそう!」で背中を押します。

 

スモールステップで挑戦し、「できた!」のポジティブな記憶を作ることが大事です。

 

⑤大事なのは結果ではなく過程

 

一番大切なのは、結果ではなく頑張ってきた過程に注目すること。結果がどうなったとしても、残念な気持ちになったり否定したりしないことです。

 

学校行事に出ようと準備してきただけでハナマル、

学校行事に出たいなと思っただけでハナマル、

無事に卒業式の日を迎えたことだけでハナマルです。

 

当日どんな選択をしたとしてもハナマル!と心から親が思っていることが、子どもの安心につながります

 

 

4. 先生と連携しながらスモールステップ作戦

 

◆練習で出てくる不安は不安の種をみつけ、スモールステップで練習に参加

 

不安な気持ちを抱きつつも、どうしても卒業式に参加したい気持ちがあるいーちゃん。何が不安でどうすれば安心できるか一緒に考え先生にいーちゃんの気持ちや希望を随時共有し、安心して練習や本番を迎えられるよう、以下の方針で進めることにしました。

 

  • 式本番も練習中もいつでも途中で抜けてもOKとする

  • 抜けることになっても大丈夫なように、別れの言葉のセリフは担当なしにする

  • 本番の気持ち次第で動きのパターンを選択できるようにしておく
    L ① 証書を受け取った後、席に戻らずそのまま退場する
    L ② 証書を受け取った後、抜けやすい一番後ろの席に座る
    L ③ 証書を受け取った後、自分の席に戻る

  • どのパターンになっても大丈夫なように入退場の練習をしておく

  • 練習中にしんどくなってもすぐに帰れる安心のお守りとして母が車で待機するという依頼を、笑顔で快諾する

 

式の練習はほぼ毎日あります。声出しの練習日は無理に参加せずエネルギーの枯渇を防ぎ、入退場や流れの練習のときには参加するなど、先生とやりとりしながら練習を進めました。練習が始まるまでは週2~3回の五月雨登校でしたが、練習が始まった3月は週4で登校するリズムになっていました。

 

「それならできそう!」の安心感のもと、数回の練習と予行練習は、途中でリタイヤすることなくフル参加することができました。

 

前日には、

 

「私、本番に強いから結局自分の席で最後までいる気がしてきた。」

「式が始まる直前に参加する予定だったけど、みんなと同じ時間に教室に行くわ。」

 

ポジティブな見通しができている発言をして寝ました。

 

 

◆本番前の不安な気持ちは共感なし&スキンシップ

 

本番の朝、

 

「卒業式、心配。」

「頭痛い。あと気持ち悪い。」

「式に間に合うギリギリまで家にいる。」

 

と不安な気持ちを吐き出し、緊張から体調に不調サインが出ました。

 

不安の理由は「練習と違って保護者や来賓がいるから」という、避けようのないことだったので、共感せず「そうなんだね〜」と気持ちを預かるだけにしました。

 

そして、気持ちや体調に出てきた不調を落ち着かせるため、背中をさすったり頭をなでたり笑顔でスキンシップ

 

「ちょっと落ち着いたかも。」とはいうものの、支度を始める様子はありません。

 

これまでの経験から、着替えると気持ちが切り替わることが多かったので、「とりあえず、着替えてみる?いつも着替えたら気持ち切り替わってるよね。」とおすすめしてみるも、「いや、まだ着替えたくない。」と切り替えの提案も拒否。

 

これは、不安と緊張のあまり参加したい気持ちも薄れてきているかもと思い、

 

「式に出なくても、お母さんはどっちでもいいよ。」

「出るかどうかは自分で決めたらいいよ。」

「最後の教室だけ行きたかったら、そこから参加するのでもいいしね。」

 

と笑顔で告げると、

 

「そっか!」

 

と表情が和らぎましたが、教室から式場へ向かう時間に間に合うギリギリになっても動く様子はありません。

 

参加は無理かなと思いつつ、時間に気づいてないかもしれないので、

 

「もし式に出るなら今が着替え始めのタイムリミットだよ〜。」と伝えると、「どうしよっかな、、、。行くわ!」と自ら急いで着替え始めました。

 

ギリギリで間に合い、式に参加したいーちゃん。証書を受け取り戻ったのは自分の席でした。そして、式中泣くこともなく途中で退場することもなく、教室でのお別れ(号泣)、花道での送別まで無事に参加し、

 

「私、最後までおれたわ。頑張ったよな。」

 

笑顔で卒業式の日を終えることができました

 

 

5. 子育ての軸さえあれば何があっても大丈夫

 

環境の変化が苦手で、クラス替えなどがある春は不調なことが多い、いーちゃん。優しいクラスメイトに囲まれたあたたかいクラスだったので、「心にポッカリ穴が開いたみたい。」と卒業を寂しく思う気持ちが大きいようです。

 

また、中学校生活への不安から心身の調子を崩し気味ではありますが、気持ちを私に吐き出すこと、新しい文具の準備などでテンションを上げながら、新たな生活に向けて心の準備を始めています。

 

私はというと、発コミュを学び子育ての軸を得て、心のコンディションが落ちたときには「肯定:否定=10:0」を徹底すればいいことがわかっているので、不安な気持ちはありません。

 

この先何があっても大丈夫!という気持ちで新生活を応援したいです。

 

執筆者:たにぐちいろは

発達科学コミュニケーション

タイトルとURLをコピーしました