1.繊細な子どもとの片付けバトルに悩んだ毎日
息子のアサヒ(当時年少)は、ママと離れるのが不安な、少し怖がりで繊細な一人っ子。
遊んだおもちゃは出しっぱなしが当たり前で、リビングも子ども部屋も、いつもおもちゃでいっぱいでした。
「もうお片付けする時間だよ」
「お片付けして」
と声をかけても、まるで聞こえていないかのように無反応…。
過集中なのか、聞こえないふりをしているのか、私にはわかりませんでした。
だんだん私の声も大きくなり、
「片付けてぇ〜!寝る時間だよ!片付けないと捨てるよ!」
するとアサヒは、「ママきらい!そんなこと言う人は牢屋に入りな!」と怒り出し、私のメガネを投げるなど、片付けに応じない子どもとのやりとりは、いつもバトルになってしまっていました。
2.「聞く耳を育てる」ことから始めた関わり
入園以来、母子分離不安、癇癪や登園渋りに悩み、繊細な息子の将来が不安だった私は、繊細な子の心と脳を強くする親子の関わり方を専門に教えているむらかみりりかさんを見つけました。
そこで、おうちで脳を育てる「発達科学コミュニケーション」(以下発コミュ)というメソッドを知り、「アサヒへの対応に迷うことがなくなるかも!」「今から学べばアサヒの将来が明るくなるかもしれない!」と受講を決意したのです。
発コミュで最初に学んだのは、「子どもがママの話を聞く耳を育てること」。
そのために私が取り組んだのは、アサヒが「できていること」に目を向けて、実況中継のような声かけを始めることから始めました。
そうすることでアサヒは、「ママはちゃんと自分のことを見てくれている」「ママは自分の味方なんだ」と感じられるようになり、ママとの信頼関係が育っていったのです。
また、子どもの脳は、言葉の意味よりもまず「表情・声色・語調」を先に感じ取るということも知りました。
だから私は、お願いしたいことがあるときは、ゆっくり・笑顔で・優しい声で伝えるようにしました。
3.ポジティブな記憶で「自分からお片付け」へ
「できていること」に目を向けて実況中継する関わりを続けたことで、アサヒの中に「ママは味方だ」という安心感が育っていきました。
すると、それまで届いていなかった私の声がアサヒの心に届くようになり、すっと行動に移してくれることが増えたのです。
そんなある日、私は片付けの時間にこんな声かけをしてみました。
そろそろ寝る時間が近づいてきたので、私はやんわりと伝えました。
「アサヒくん、もう9時になるよ〜」
「今日も、おもちゃたちとたくさん遊んだね。楽しかったね。」
と、まずはポジティブな気持ちを思い出させて、こんな風に語りかけました。
「おもちゃたちって、9時までにおうちに帰りたいんだって」
「アサヒも、夜はおうちに帰って寝たいよね?」
「9時までに帰らないと、お星さまになっちゃって、もう遊べなくなっちゃうんだって」
「おうちに帰してあげれば、また明日楽しく遊べるから」
「もう、おうちに帰してあげようか。ママも一緒に手伝うから」
実は、繊細な子どもにとって「お片付け」は、「もう遊べない=楽しい時間の終わり」というネガティブなイメージになりがちです。
また、「どうしたらいいのか分からない」「うまくできる自信がない」という不安を抱えやすく、やりたくないのではなく“どう始めていいのか分からない”ことも多いのです。
だから私は、「お片付け=また明日も楽しく遊ぶための準備」と、ポジティブな意味づけに変えて声かけをしました。
さらに「ママも一緒に手伝うよ」と伝えることで、「一人でやらなければならないプレッシャー」や「できなかったらどうしよう」という不安をやわらげていきました。
「一緒にやろう」という声かけには、「ママはあなたの味方だよ」というメッセージが込められています。
それが「安心感」や「信頼」に変わり、片付けを嫌がっていた子どもが素直に行動できるようになる大きなカギになったのです。
すると、アサヒは「うん!」と素直に片付けを始めました。
終わった後には、おもちゃたちに向かって「あしたまた出してあげるからね!また一緒にあそぼうね!」と話しかけていました。
私も、「わ~!お部屋きれいになったね!お部屋が広くなって気持ちいいね!おもちゃたちも、『アサヒ君、おうちに帰してくれてありがとう!』って言ってるよ〜」と、片付けたことを一緒に喜びました。
※我が家では「亡くなること」を「お星さまになる」と表現しています。
遠くに行って会えなくなってしまうけど、空からずっと応援してくれる存在という優しい意味を込めています。
4.「できた」を重ねて、片付けが自然にできる子どもに
発コミュを学び始めて半年。
我が家の部屋は以前よりスッキリし、私のストレスも、子どもとの片付けをめぐるバトルも大きく減りました。
「片付け=楽しい時間の終わり」ではなく、「片付け=また明日も楽しく遊ぶための準備」と伝えることで、子どもにとって片付けがポジティブな記憶として脳に残るようになったのです。
すると、アサヒは「もう9時?遊ぶ時間ある?」と時間を意識するようになり、「お片付けの時間だね!」と、自分から行動できることが増えていきました。
「捨てるよ!」と脅すのではなく、「また明日も楽しく遊べる」と伝える声かけで、子どもの行動は大きく変わります。
これからも、アサヒの心と脳の成長を信じて、 「できた!」「たのしい!」「またやりたい!」を一緒に積み重ねていきたいと思います。
執筆者:高橋 りえ
発達科学コミュニケーション