1.繊細な子がいる家庭で見落としがちな兄弟のSOS
我が家は、小学4年生の長男アキラ君(仮名)と、年長の次男エイジ君(仮名)の二人兄弟。
アキラ君は、自分のことは自分でこなし、弟を気づかいながら「いい子」として振る舞ってくれる頼もしい兄でした。
一方で、弟のエイジ君はとても繊細な子。
保育園に行く前には涙を浮かべて激しく抵抗し、毎朝が嵐のよう。自宅でも癇癪がひどく、物を投げたり泣き叫んだり…。
私たちは常に気を張り詰めて対応していました。
そんな日々の中で、家庭の空気は自然と“次男中心”に回るように。夫婦で協力しながら、エイジ君が少しでも穏やかに過ごせるよう、最優先で動く日々が続いていました。
その陰でアキラ君は「手がかからないから大丈夫」と思われながら、静かに我慢を続けていたのです。
ところがある日、学校から突然電話がかかってきたのです。
「アキラ君くん、最近先生に対して暴言を吐いたり、態度がとても悪いんです」
耳を疑いました。
それからというもの、学校からの電話は頻繁にかかってくるようになり、私は信じられない思いでいっぱいでした。
2.繊細な子ばかり気にして、“いい子”の兄に気づけなかった私
次男・エイジ君はとても繊細な子で、保育園への行きしぶりや自宅での激しい癇癪に、私たち家族は日々対応に追われていました。
私はそんなエイジ君と向き合うために、繊細な子の心と脳を強くする親子の関わり方を専門に教えているむらかみりりかさんと出会い、発達科学コミュニケーション(発コミュ)を学びを始めていました。
けれど、気づけばその学びはエイジ君のためだけのものになっていて、長男・アキラ君の心には意識が向けていなかったのです。
アキラ君はずっと「いい子」でいてくれました。でも、学校での暴言や態度の悪化という形で、静かにSOSを発していたのです。
「なぜ気づけなかったんだろう?」「気づいていたけど大丈夫と軽視していた?」と自問する中で、私は初めて理解しました。
“問題が見える子”だけに目を向けていた自分が、アキラ君の心の声を見逃していたのだと。
発コミュは、誰か特定の子のためだけのものではない。
発達に不安を抱えていてもいなくても、誰にでも対応出来る、それが発コミュなんだと改めて理解したのです。
3.兄弟それぞれに合った“ほめ方”で、心がグッと近づく!
兄弟でも肯定の方法をアレンジすると効果倍増
①兄にはラフにほめるのが正解!ちょっとした言葉が心をほどく
発コミュは「誰にでも使える関わり方」。そう気づいた私は、今度は長男アキラ君にしっかり向き合おうと決めました。
小学校高学年になっていたアキラ君。弟と同じように丁寧に声かけをしても、どこか照れくさそうで反応が薄いこともありました。
そこで私は、「長男に合った伝え方」を試してみることにしました。
「ナイス!」「助かる〜」と軽めに言うだけでも、彼はふっと笑顔を見せてくれるようになりました。
ハイタッチをしたり、肩をポンと叩いたり、頭を撫でたり。
言葉にしすぎず、サラッとできるラフな肯定が、長男にはしっくりきたのです。
すると、自宅での表情が穏やかになり、学校でも以前のような強い言葉を吐くことが減っていきました。今では本来の姿が見えるようになり、友達と一緒に遊ぶときも中心にいて、誰からも好かれるアキラ君に戻っていったのです。
大げさな言葉よりも、いつもの会話の中にある“ちょっとしたプラス”が、長男の心にじんわりと届いていくのを実感しました。
②繊細な子には“実況中継ほめ”が効く!見守りの言葉で安心感
一方で、繊細なエイジ君には、まったく違うアプローチが効果的でした。
彼が合っていたのは、「実況中継での肯定」。たとえば、「ご飯食べてるね」「トイレ行けたね」「靴はけたね」と、している行動をそのまま言葉にするスタイルです。
「ちゃんと見てるよ」「気づいてるよ」というメッセージが、彼にとっては何よりの安心感につながっていたようでした。
同じ“認める”でも、伝え方は子どもによってまったく違う。
だからこそ、一人ひとりの性格や成長段階に合わせて関わることが大切なんだと、私は実感しています。
4.兄弟それぞれの個性を活かす、安心の家庭づくりを目指して
今回、長男の学校での異変をきっかけに、私は「本当に見るべきもの」に気づくことができました。
声を荒げるでもなく、わかりやすい困りごとを見せるわけでもなかった長男。
けれど、彼もまた、心の中で精いっぱいのSOSを出していたのです。
発コミュを学び、子どもたちそれぞれに合った関わり方を実践する中で、見ていたようで見きれていなかった二人の肯定のポイントに気づきました。
親が変われば子どもの力はもっと発揮できると、未来を楽しみに思うようになりました。
困っているように見えない子ほど、実は我慢している。
困っていないから大丈夫!ではないこと。
何も言わない子ほど、心の奥では「わかってほしい」と思っている。
私は、これからもその小さなサインを見逃さずにいられる母でありたい。
そして、兄弟それぞれの個性を活かしながら、子どもたちが「自分らしく安心して生活できる家庭」をつくっていくこと。
そして安心の場所から一歩飛び出し、たくさんの挑戦をしてほしいと思っています。
執筆者:ますながゆみこ
発達科学コミュニケーション