1.外出先で大満足からのギャン泣きだった繊細な子
わが家には、ひといちばい敏感な何でも知りたがる博士ちゃん(通称:ミカ)とフワフワの物が大好きで触覚と嗅覚がすごく敏感な息子(通称:シン)がいます。2人は2つ違いの仲良し姉弟でいつもくっついて遊んでいます。
これは、ミカが小学1年生でシンが年中の頃に動物園へ行ったときのお話です。
初めて自分たちのお小遣いで、お土産を買おうと商品を選んでいました。金額を確認して「これは何円だから買える!」と2人が楽しそうにお財布と相談しながら商品を物色している光景に、私は成長したな〜と遠目に眺めていました。
好きなものを選び、レジでお金を手渡し、お土産が買えた!小さな成功体験だ!とニコニコお店を出た瞬間・・・シンがお店の外でギャン泣きしているではありませんか。ミカは何やら必死に説明してあげています。
さぁ、こんな時どうしますか?
今までの私は駆け寄り「どうしたの?大丈夫?」と泣いている理由を必死に聞いていました。なぜなら、私の想定外なことが起きているから、公共の場でのギャン泣きは人の目が気になるから、何とかこの場を穏便におさめたいからと思っていたためです。

2.先回りする親が繊細な子に与える影響
ミカが年長の頃、私は子育ての悩みのドン底にいました。外では”いい子すぎる”、家では”怒ったり泣いたりが激しすぎる”このギャップをどうすればいいのか、本やネットを読み続ける毎日でした。そんなとき、お家で脳を育てる「発達科学コミュニケーション」に出会い、その中でも繊細な子専用の心と脳の仕組みを学び始めていました。
今までの私のように先回りする親が、何でもしてあげているとそれが当たり前になり、子どもの考える力が育たないということを知りました。
それを知ったときは、「私が良かれと思ってしていたことが、この子たちの考える機会を奪っていたんだ・・・」とハッとしましたが、先回りを手放していくうちに自然と納得できるようになりました。
そして、この日も先回りせずに、2人でトラブルを乗り越える”背中を押せるタイミング”だと判断し、私は少し離れて見守ることにしました。
どうやらギャン泣きの理由は、お財布が空っぽになったからでした。
自分の欲しいものの金額、自分のお小遣いはどれだけあるかは、目に見えてわかる事実です。しかし、お金を払うと自分のお財布の中が空っぽになるという先の見通しがたっていなかったのです。
そして自分の知らないこと、手に余ることが起きてしまうと、どうしたらいいのかわからずパニックになりギャン泣きに繋がってしまいます。
3.小さな成功体験として記憶を残す秘訣
このままでは、初めてのお買い物が2人の中で「お財布空っぽ事件」になりかねないので、トラブルがあっても小さな成功体験として記憶に残るように2つのことをしました。
①小さな「できた」をたくさんピックアップする
自分たちでは意識せずにやっていることも、言葉にして伝えてあげると「私できたんだ!」と気づくことができます。そして、それをたくさん積み重ねることで「できた」の自信が育ちます。
・2人で初めて物が買えたこと
・店員さんにお話しできたこと
・お金を計算できたこと
・ミカが泣いている弟に優しく話してくれていたこと
・ママのところに走ってくるのではなく自分たちで考えられたこと
目を向けるとたくさんの小さな「できた」が詰まっています。私がハラハラせず俯瞰で見守っていたことにより、今までの何倍もの情報をキャッチすることができました。
②次の楽しいことへ気持ちを切り替える
①で小さな成功体験の記憶が作れたので、次は気持ちを切り替えるお手伝いをしました。普段は私がしていますが、この日はミカが弟に対して率先してこの役目を果たしてくれたので、私は見守るだけでした。
・あっちでアイス食べようか
・あの雲って恐竜に見えない?
・帰りの車で○○ゲームしない?
しっかり弟目線になってあげているミカを見て、私よりも上手なことに驚きました。気持ちの切り替えができるとシンも「あのときビックリしたんだ」「お金が無くなって悲しかった」と自分の気持ちを話してくれました。
4.繊細な子の自信を育む「できた」の種
この日のお財布空っぽ事件は、一見するとトラブルのように思える出来事でしたが、私にとっては子どもたちの成長が大きく感じられた大切な1日になりました。子どもたちにとっては小さな成功体験を自分たちの力で重ねられた日。
子どもたちは自分で考え、行動し、気持ちを立て直す力を少しずつ身につけていました。泣いたことも、戸惑ったことも、全てが小さな「できた」の種になっています。
そして私自身も、先回りする親を卒業でき、すぐに手を差し伸べるのではなく一歩引いて見守ることの大切さを改めて実感できた日でもありました。
繊細な子は敏感な故に、ちょっとした変化や想定外の出来事に大きく心が揺れます。そのたびに親が先回りして対処するのではなく、そっと背中を支えてあげることで、小さな一歩を踏み出すことができます。
それがまた自信となり、次の挑戦への力となっていきますよ。

執筆者:やまさき うみ
発達科学コミュニケーション