1.半年間不登校の長女が参加を希望した学校行事
①「失敗から学ぶ」子育て方法が合わない繊細な娘
私には小学6年生と小学4年生の二人の娘がいます。
私の子育てのモットーは、どんどんチャレンジさせて「失敗から学ぶ」こと。
ですが、娘たちは失敗すると、「よし!もう一回やってみよう」と気持ちを奮い立たせるどころか、励ましてもなかなか立ち直ることができません。学年が上がるにつれ習い事や勉強など自信を失っていくことが増えていきました。
私は本やインターネットで調べるうちに気付きました。「娘たちは世にいう『繊細な子』なのでは?」と。
そこで私は、繊細な子の心と脳を強くする親子の関わりを専門に教えているむらかみりりかさんに出会い、「繊細さを強みに変える」子育て法があることを知りました。娘たちの繊細さが強みに変わる未来があるんだと希望を感じ、発達科学コミュニケーションを学び始めました。
繊細な子にとって、私が今までやってきた「失敗から学ぶ」という育て方は、脳の特性からすると、やればやるほど自信を失っていく真逆の対応をしていたのだと知り、愕然としました。
失敗したことをどうにかしようとするのではなく、できていることに肯定的な言葉をかけていくと、娘たちの自信は徐々に育っていきました。
②不登校を経て学校行事の参加を希望
長女は、友だちも多く、学校行事や委員会活動なども積極的に参加する学校が大好きな子でした。ところが6年生の6月に、お友達トラブルに巻き込まれ、育ててきた自信を急激に失ってしまいました。
五月雨登校から不登校、家で過ごすことがほとんどで、お友達と遊ぶこともありません。
発達科学コミュニケーションを学んでいた私は、今は長女にとって家が絶対的な安全基地になること、それから少しずつ自信を回復していく時期と考えました。
家での肯定的な関わりを徹底し、些細なことでも「あなたはできているよ」という自信を育む声かけを続けていきました。
ただ学校との連携は続けており、私からは長女の家での様子を知らせ、学校からは「今どんな活動をしているのか」といった情報を教えてもらっていました。
そして不登校になって半年が経った頃、担任の先生が、1ヶ月後に学校行事で水族館に行く計画があることを知らせてくれました。
しばらくクラスの子たちと会っていない娘でしたが、先生の計画を聞くとすぐに「私も学校行事に行きたい」と参加を希望したのです。
2.教室での班分けに行こうとする長女が訴えた目の不調
学校行事2週間前、担任の先生から「明日、班分けをします」とお知らせがありました。
長女にそのことを伝えると教室で行われる班分けに「行く」と言うのです。
ずっと休んでいた長女にとっては思い切った挑戦であるはずなのに、具体的な計画がないまま当日の朝を迎えました。
そして、長女は布団の中で「目が痛くて開けられない」と訴えてきました。
3.班分け当日 繊細な長女のストレス反応
目の痛みは炎症などによるものなのかもしれませんが、数ヶ月ぶりに「教室に行く」緊張がストレス反応として現れた可能性もありました。
数ヶ月ぶり、ましてやその間、ほぼ会うこともなかったクラスメイトがいる教室。
繊細な長女にとっては、とても緊張や不安が高まる場面です。
不登校になる前、1日休んだだけでも「昨日なんで休んでたの?と言われるのが嫌なんだ」と言っていたこともありました。久しぶりの登校に過去の嫌だった気持ちがネガティブな記憶としてよみがえってきているのかもしれません。
そしてこの嫌だった気持ちをストレスとして感じているのかも知れません。
ストレスは外からの刺激だけでは無く、このように脳の中で自分から作り出し、体の不調を引き起こすこともあります。
気持ちを言葉にして吐き出すことでストレスを落ち着かせることができますが、このときの長女は目の痛みを訴えるのみでした。
さらに繊細な子に「大丈夫?」と心配したり、「痛いの辛いね」と共感することは逆効果です。
繊細な子の感情を扱う脳は他の人の感情に敏感なため、共感すればするほど、「これは大丈夫ではない、とっても痛くて大変なことなんだ」とどんどん痛みに気持ちがフォーカスしてしまいます。
こうなると「目が痛くて教室には行けない」「絶対無理」という「行かない理由」になってしまうからです。
炎症なのかストレス反応なのか分からないままでしたが、過度の心配も共感もせず、「そうなの~」といったん返事をしました。
4.班分けへの不安が安心に変わった親子の会話
①病院で立てた班分けの見通し
しばらくして、まだ目の痛みが続いていたので病院に行きました。
この時点で、「教室に行く」ことは決まっていましたが、何時に家を出て、教室までどこをどう通って行くのか、という具体的なことが何も決まっていませんでした。
私は、目の痛みが緊張や不安が原因なのであれば、長女と具体的な見通しを立てることで不安を少しずつ安心に変えていけるのではないかと考えました。
病院の待ち時間に、教室に行くまでの予定を相談することにしました。
ここで長女は「13時過ぎに家を出て昼休みに職員室に到着したら、5時間目に合わせて教室に行く」と決めました。
そして、「班分けが終わったらすぐに帰れるようにお迎えに来てほしい」と私に言いました。
教室に行くまでの見通しが立てられたこと、班分けが終わったらすぐに私が待っていることで、不安を少し安心に変えることができました。
受診するとアレルギー症状とのことでしたが、家に帰る頃にはもう目の痛みは消えていました。
②ストレスを落ち着かせ安心して参加した班分け
そして登校の時間が近づいてきました。
長女の動きがだんだんと鈍くなり、「う~行くの無理~、教室怖い~」と気持ちを言葉にすることができました。
「へぇそう~」とここでも共感をせずに気持ちを受け止めました。
そして、ハグして背中をなでてみました。小学6年生であってもスキンシップは不安やストレスを落ち着かせ安心感を与えます。
長女は気持ちが落ち着きしばらくするとすっと動き出し洗面所で身支度を調え、学校に向かうことができました。
そして5時間目が終わる頃、お迎えに行くと、班分けの様子を楽しそうに語ってくれました。
不登校のお子さんで行事に挑戦したい気持ちがあるとき、不安が襲ってくることもあるでしょう。
お子さんのネガティブな感情に共感しないことや見通しを立てることで不安な気持ちを少しずつ安心に変えていくことができます。
お子さんに不安な様子が見られるとき試してみてくださいね。お母さんとの会話が安心のお守りとなってお子さんが行動できる力になりますよ。
執筆者:あなんしほ
発達科学コミュニケーション