「恥ずかしい…」挨拶ができない繊細な子がグラウンドに響く声で言えた!ママの3ステップ

子どもが「恥ずかしい!」と頑なに挨拶ができないことに悩んだことありませんか? 挨拶ができない繊細な子が大好きな野球を通し、スモールステップで自信をつけ、自分から挨拶ができるまでに成長した体験を紹介します。

1.「挨拶ができない…」繊細で恥ずかしがり屋な息子

 

我が家の息子しょうくんは、小学2年生。新しいことや環境が変わると、少し戸惑ってしまうような、繊細な心の持ち主です。


しょうくんは幼い頃から、とても恥ずかしがり屋さんで、人見知りが強い子でした。

 

1歳頃から言葉が話せるようになっても、いつもママの背中に隠れてしまうような状態でした。
保育園の先生やお友だちの中で、心を許しているほんの数人だけに小さな声で挨拶できるくらい。

 

小学校入学後は、「小学生だから、挨拶くらいは元気にできてほしいな」と私も思っていましたが、しょうくんは変わらず、「恥ずかしいよ、言えないよ。ママが言って!」と答えるばかりでした。

 

どうして言えないのか、恥ずかしいという気持ちがどんなものか、正直なところ、私にはよくわかりませんでした。

 

実は、小学1年生の秋、しょうくんは学校を休みがちになり、不登校の一歩手前の状態が3か月続きました。

 

解決策を探る中で、「発達科学コミュニケーション(以下:発コミュ)」繊細な子の心と脳を強くする親子の関わり方を専門に教えているむらかみりりかさんと出会いました。

 

「繊細な子どもも、脳と心を育てれば挑戦できるようになる」

 

その言葉に希望を感じて、私は学びはじめていたのです。

 

 

2.大好きな野球で気づいた「挨拶の大切さ」

 

しょうくんは野球が大好きで、年長さんの頃に自らの意思で野球のクラブチームに入りました。野球チームでは「挨拶」がとても大切にされています。

 

挨拶は、チームワークの第一歩であり、礼儀や感謝の心を育む大切な習慣です。
声を出すことで仲間とのつながりが生まれ、プレーの質にもつながっていきます。

 

そのため、監督、コーチ、サポートしてくれる保護者の方々、対戦相手チームの関係者にまで、子どもたちは帽子をとって一礼し大きな声で挨拶を交わします。
仲間を応援し、練習中も「はい!」としっかり返事をするのが基本です。

 

しかし、監督やコーチ、夫や私が何度も「挨拶しようね」「返事が聞こえないよ」と言っても、返ってくるのは「恥ずかしい!言えない!」の言葉ばかり。

 

挨拶ができないことに対する強い抵抗感が伝わってきました。

 

小学2年生となったしょうくんは、チームの下級生の手本となる“ルーキーチーム(二年生以下チーム)で一番上の学年”になりました。


監督から「下の子たちの見本になってほしい」と言われても、本人は「恥ずかしいよ~ぼくには無理、向いてない」と自信を持てずにいました。

 

 

3.繊細な子が挨拶できない理由は脳のしくみにあった!

 

「なんで挨拶ができないの?」「恥ずかしいってどういうこと?」
そう思っていた私に、発コミュの学びは大きな気づきをくれました。

 

挨拶ができないのは、甘えや性格の問題ではなかったのです。

 

発コミュでは、脳のしくみから対応方法を教えてもらいました。


人の脳には、大きく3つのはたらきがあります。

 

「やろう」と考える“前頭前野”

 

感情を感じる“大脳辺縁”

 

そして、危険から命を守る“脳幹”

 

このうち、繊細な子は、「感情の脳」である大脳辺縁がとても敏感に働きます。

 

そのため、周りの視線や声のトーン、少しの雰囲気の変化にも反応してしまいます

 

たとえば、野球の練習中に監督やコーチの表情、高学年のお兄さんたちの目線、
「挨拶は大きな声で当たり前!」という空気感、それらすべてを、しょうくんは一気にキャッチして、「どうしよう…」と不安な気持ちが膨れ上がっていたのだと思います。

 

「また言われるかも…」「ちゃんとやらなきゃ…」と不安が大きくなると、
脳は自動的に“命を守るモード=フリーズ状態”に切り替わってしまいます

 

すると、「挨拶しよう」と思っていても、考える脳(前頭前野)の働きがストップし、体も声も動かなくなるのです。

 

これは「場面緘黙(ばめんかんもく)」と呼ばれる状態とも言えます。

 

場面緘黙とは、家など安心できる場所では普通に話せるのに、人前など緊張する場面では話せなくなってしまう状態のことです。


本人の意思で黙っているのではなく、「話したいけれど体が固まってしまって話せない」、そんな強い不安や緊張によって引き起こされるものです。

 

しょうくんも、「挨拶をしよう」「声を出したい」と思っていても、体がかたまってしまう。そんな状態に近かったのだと思います。このことを学んだとき、私はようやく気づきました。

 

しょうくんは挨拶ができないのではなく、不安から身を守ろうとして言えなかっただけだったのです。

 

そして、「できた!」とういう安心を積み重ねることが「やってみよう!」という気持ちにつながることも学びました。

 

「どうしてできないの?」ではなく、どうすれば、安心してできるか」を考えることが、繊細な子にとって何より大切なことに気づけたのです。

 

 

4.少しずつ「できた!」を増やすスモールステップ作戦

 

私が取り入れたのは、発コミュで学んだ「スモールステップ作戦」でした。

 

無理にやらせるのではなく、しょうくんの「できる」に合わせて、階段をのぼるように進めていく方法です。

 

実際に行った3つのステップをご紹介します。

 

①母の私が元気に挨拶し、気持ちよさを伝える(強制はしない)

 

まずは私自身が笑顔であいさつをし、そのあとに「挨拶って気持ちいいね」という思いを、言葉にして伝えました。

 

たとえば、「挨拶すると元気な気分になるね」「返してもらえるとうれしいね」

などの言葉を添えて、無理に促すことはせずに、挨拶の気持ちよさを感じてもらえるようにしました。

 

②声を出さなくても挨拶になる方法を伝える

 

声を出して挨拶することが苦手なしょうくんに、「声を出さなくても挨拶になる方法」を伝えました。

 

まず「会釈」からスタート。

 

最初は、私の背中に隠れながら、そっと頭を下げるだけ。

 

それでも、「今のは挨拶だったね」と認めて、小さな成功を一緒に喜びました。声を出さなくても挨拶となる行動があることを教えました。

 

③小さな声でもできたら、その瞬間に「聞こえたよ」と伝える

 

小さい声でもあいさつできたら、すかさず、できたことに注目して「ママには挨拶した声聞こえたよ。」「しょうくんの挨拶から向こうからも挨拶が返ってきたね〜」と伝える。

 

たったこれだけ。


少しずつ、しょうくんの中で変化が生まれてきました。

 

 

5.グラウンドで、堂々と挨拶できる日を夢見て

 

スモールステップ作戦を開始し1か月。

 

まだ先輩選手のような大きな声には及びませんが、挨拶が苦手だったしょうくんが、野球を通して仲間と声を出して挨拶をし、応援する姿を見ると、とても胸が熱くなります。

 

しょうくんは恥ずかしがり屋で、目立つのは苦手です。

 

だからこそ、大好きな野球を通じて少しずつ成長してほしいと願ってきました。

 

たくさんの仲間と経験を積みながら、
いつか、グラウンドで仲間たちと、堂々と挨拶できる日を夢見ていました。

 

そして今、あれから2ヶ月が経ち

 

しょうくんは仲間と一緒にグラウンドに声を響かせるほどの大きな声で返事や挨拶ができるようになりました。

 

「喉が痛くなったよ〜」と笑いながらいう姿に、あの頃の小さな一歩が、確かな前進だったことを実感しています。

 

繊細な子が挨拶ができないのは、甘えでも、育て方のせいでもありません。


「今はまだできない」だけ。

 

ただ、やり方やポイントが分かれば、少しずつ「できた」に近づくことができます。

 

私たち親子がそうだったように …できないと思っていた挨拶も、こうして少しずつ「できる」に変わっていくのです。

 


執筆者:いとうあやこ
発達科学コミュニケーション

 

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