1.何で挨拶できないの?ただの人見知りじゃないの?
わが家には、ひといちばい敏感で何でも知りたがる博士ちゃん(通称:ミカ)がいます。
現在小2のミカが小学1年生になった4月、期待を膨らませていた小学校でしたが、環境がガラリと変わり親子で戸惑っていました。
ミカは普段から人見知りの傾向があり、初めての人と会う際は、慣れるまでママの後ろから様子を伺い「大丈夫」と思えたらお話しできるようになります。だいたい1時間くらい過ごして大丈夫と思えるときもあれば、もう少し時間がかかるときもあります。
小学1年生は、学校、教室、お友達、先生・・・と全てのことが「初めて」です。時間はかかるだろうなと予想はしていましたが、毎日行っていればそのうち慣れるだろうとも思っていました。
しかし、1ヵ月経っても「おはようございます」と先生に挨拶できない、声をかけられてもうつむいていることが先生からの連絡帳で発覚しました。
「新しいお友達できたよ」とミカが話してくれていたので、てっきり慣れてきたのだと私は思い込んでいました。

2.話したくても話せない場面緘黙
ミカが年長の頃、外ではいい子で頑張りすぎちゃう、家では怒ったり泣いたりが激しく親子の会話もできない状況で、どうしたらいいのかわからず私は悩んでいました。
本やネットを読み続け、たどり着いたのが「お家で脳を育てる発達科学コミュニケーション」でした。その中でも、ご自身も繊細な子のママである「繊細な子の心と脳を育てる専門家のむらかみりりかさん」の元で学び始めていました。
繊細な子の心と脳のしくみを学んでいくと、ミカが先生に挨拶できない理由は、ただの人見知りではなく「場面緘黙」なんだと気づきました。つまり自分が安心できる範囲がすごく狭く、話したくても不安や恐怖心で話すことができないということです。
そして、ミカにとって新しい先生は、「知らない大人」として認識されていました。保育園では送迎時などにママが先生と話す様子を間近で見ることができ、安心を感じられましたが小学校ではママと先生が直接関わる機会がほとんどないためです。
繊細な子は人の感情や表情は、敏感に感じ取れますが、自分の感情を表現するのが苦手なところがあります。ママの居ない場所で、知らない大人(先生)に対して、「どんな人だろう」と観察しているうちに、不安がどんどん膨らんでしまい「コワイな」「イヤだな」と怖くなってしまい話せなくなるのです。

3.繊細な子と先生の”安心のかけ橋”の作り方
学校の先生は、ママが居ない学校で味方になってくれる唯一の存在です。ミカが安心して学校生活を送れるようになるには、先生と話せる関係になることが大切だと考えました。
私が実際に行った、「先生は安心できる存在」なんだと感じられるようになるママからのミッションをご紹介します。
①先生に興味を持つ”観察ミッション”で安心の土台を作る
繊細な子の不安が膨らんでしまっている状況で、「大丈夫だよ」は通用しません。まずは、話さなくてもわかる先生を観察するミッションから始めました。
「今日の先生のお洋服は何色だったか、帰ってきたらママに教えてね」
「先生はミカのこと何て呼んでくれているの?」
「ありがとう!先生のことよくわかったよ」
「先生のことよく見てるね」
ママは先生のことを教えてあげると嬉しそうと思えると、先生に対してポジティブな印象を持てるようになります。
②ママが先生と繋がることで不安を減らす
電話でもお手紙でもいいかと思いますが、私は担任の先生に直接お電話をしました。ミカの学校での様子を聞きたかったからです。
こちらからは、ミカはこんな子ですとお伝えしながら、今の状況とこれからどうしていきたいかを話しました。他の子たちが慣れていく中、ミカは挨拶できない、話しかけてもうつむいている姿に「大丈夫かな?」と心配してくれていたので、状況を理解してくれ、これから慣れるためにどうしていくかという方向性もすり合わせができました。
繊細な子にとってママと先生の連携はすごく大事だと実感しています。
③”質問ミッション”で会話することにステップアップ
先生にポジティブな印象ができてからは、観察してわかるミッションから質問したらわかるミッションにステップアップしていきました。ミカにとって話しやすい学校とは関係のない話題を選びました。先生の答えがミカの興味のあるものであれば、会話が続くような質問を考えました。
「先生の好きな食べ物は何かな?」
「先生のおうちにペットはいるかな?」
「先生はミカの好きな色は知ってるかな?」
日に日にミッションをクリアしていき、私に話してくれているミカの表情がみるみる明るくなっていきました。

4.繊細な子が力を発揮できる環境づくり
新しい環境が苦手な繊細な子にとって、ママのいない学校での安心を感じられる存在は絶対的に必要です。先生に自分の気持ちを話せるようになれば、困っている時にも助けてもらえます。
大人には些細なことに感じられる”観察ミッション”や”質問ミッション”を活用し、その子に合わせたスモールステップで一緒に進んでいくことで、「大丈夫」の安心が育ちます。安心できる範囲が広がると「場面緘黙」が和らぎ、話せるようになっていきます。
日によっては、ミッションクリアできなかった日もありました。そんな日も「ミッションやろうとしたんだね、ママ嬉しいよ」と次もやってみようと思えるような声かけをしてあげると、次の日の自信に繋がっていきました。
ミカも1日1日少しずつ先生との距離が近づいていき、1週間ほどで先生の「おはよう」に「おはようございます」と返せるようになり、2週間目には「自分からおはようございますと言ってくれました!」と先生から嬉しいお手紙をいただきました。
今では挨拶できないと不安になっていた日が信じられないほど、元気に挨拶できています。
繊細な子が自分らしく力を発揮するには、安心と自信が必要なんだと実感しました。これからもミカの安心を育てるためにはどうしたらいいかを考えて一緒に取り組んでいきたいです。
執筆者:やまさき うみ
発達科学コミュニケーション