1.不登校の始まりともどかしさ
小学5年生の冬、些細なお友達トラブルから学校に行けなくなった繊細な息子(通称:優士)。1週間くらい休ませたら学校に戻れるだろうと思っていました。しかし、休んで元気になるどころか、どんどんソファーから動けなくなり、ついには完全な不登校になってしまいました。
私は、自信を付けてあげたくて、これまで頑張ってきた姿をたくさん褒めてきました。けれども、その想いとは逆に、優士を苦しめ、感覚過敏と癇癪は酷くなり、日に日に気力もなくなっていき、家から出ることも難しくなっていました。
そんな優士の変化に戸惑う私に対し、夫は「連れていけば何かとなるんだよ」と言い、長男も「これ以上休むと行けなくなるから、ごちゃごちゃ考えないで早くいけよ」と厳しい目で見ていました。
また、療育センターで相談していた専門家からは「まずはゆっくり休ませて様子を見ましょう」と言われたため、私は素直に受け入れ、ただ見守るだけしかないと思っていたのです。
しかし、時間だけが過ぎていく中で、焦りと不安は募るばかりでした。
2.褒めることが逆効果だった繊細な子の心と脳のしくみ
世間の褒めて子どもを伸ばすことが、子どもに良いと信じてきた私。優士が繊細な子と知ってから、発達科学コミュニケーションに出会い、繊細な子には褒める声かけが合わないと知り衝撃を受けました。
繊細な子にとって、褒められることが、「期待に応えないといけない」という重荷になってしまうのです。そのため、私は、日常の中で褒めることをやめると、感覚過敏は和らぎ、外に出られるようになっていきました。そして、自分の好きなことや将来の夢を見つけて動き始めるようになりました。
そんな優士の変化に、夫と長男は、「最近ちょっとずつ元気になってきたね」と気づくようになり、家族も少しずつ、優士の回復に希望が持てるようになっていったのです。
6年生に進級した優士は、放課後登校にチャレンジを始め、家族で遊んで笑いあう時間も増えていました。そして、「2学期から朝の教室に行ってみたいな」と話すようになってきました。
優士の中で、安心できる時間、安心できる場所、安心できる人が少しずつ増えていき、「行ってみたい」という気持ちに繋がっていたのです。
いざ、新学期が近づくと、優士の表情は硬くなっていました。「やっぱり行けないかも・・」とつぶやく優士に、夫と長男は、「行っちゃえばなんとかなるよ」と、言うのでした。
私は、そんな家族の姿を見ていて、「優士だけ頑張らせるわけにはいかない」と考え、優士が一番安心できる家族を巻き込むことを始めました。

3.不登校からの復帰に向けた家族の巻き込み方
では、ここから、私が実際に家族を巻き込んだ3つの方法をご紹介します。
①優士の心と脳の現在地を家族に伝える
優士は、感覚過敏も癇癪も落ち着き、自分の気持ちを伝えることや、お友達とも遊べるくらい回復していました。そのため
「今は優士の心が落ち着いているから応援して大丈夫。みんなの応援を伝えると優士は嬉しい気持ちになれるよ」
と、現在の心と脳の状態を簡単に伝え、応援のタイミングにあると伝えました。すると、家族は「それなら、優士を応援しよう」と応えてくれたのです。
②シンプルな声掛け方法をお願いする
繊細な優士にとって、強い励ましや、「がんばれ!」という言葉はプレッシャーになります。そのため私は、夫と長男に
✓優士が朝から登校しようと頑張る様子に注目してほしい
✓優士のことを信じていると伝えてほしい
とお願いしました。夫と長男は「それだけで大丈夫なの?」と半信半疑でしたが、声をかけた後の優士の穏やかな反応を見て、「本当にこれでいいんだ」と納得してくれました。
③家族の関わりに感謝を伝える
夫と長男は、とても協力してくれました。そのため、どんな小さな関わりにも感謝の言葉を返していました。
「今のタイミングで優士に声を掛けてくれてありがとう」
「一緒に笑って遊んでいるのが、優士の心はとても落ち着くんだよ」
こんな風に伝えることで、夫と長男も、自分の関わりが優士の心に元気を与えていると感じられるようになっていきました。
この感謝の言葉は、家族みんなの自信となり、家族が一体になるスイッチにもなることができたのです。
4.家族と一緒に息子が復学にチャレンジする日
新学期初日の朝、優士はソワソワしながら、「行こうかな・・やめようかな・・」と悩んでいました。
そのとき、夫と長男は笑顔で
「行こうと思っていることが成長だよ」
「もし、無理ならいつでも帰ってきて大丈夫だよ」
そっと背中を押していました。すると、優士は、「よし行く!」と言って10カ月ぶりに登校にチャレンジしたのでした。
「自分の気持ちを分かってくれる家族がいる」この安心感が、繊細な子どもの心の土台となり、挑戦する力を与えてくれます。
あの日、1人で頑張るのでなく、家族で背中を押してあげられたからこそ、優士はもう一度、教室へ向かう勇気を持てたのです。
あなたのご家庭にも、きっとできると信じています。
執筆者:増山陽香
(発達科学コミュニケーショントレーナー)