1.突然繊細な息子が靴下を嫌がるように
我が家の次男エイジ君は、保育園へのいきしぶりがあり、初めてのことが苦手。
家では元気いっぱいなのに、外ではおとなしくしている、そんな繊細な子です。
そんなエイジ君が、ある日突然、靴下を履くことを強く嫌がるようになりました。
それまで何度も履いていた靴下なのに、「気持ち悪い」と泣き出してしまったのです。
急な変化に戸惑い、最初は「靴下がおかしいのかもしれない」と思い、別の靴下に履き替えさせてみました。
けれど、何足も替えても「これも嫌だ、気持ち悪い」と繰り返すばかり。
ただ靴下を履くだけのことで、どうしてここまで拒否するのか分からず、私はイライラして強く言ってしまったり、「もう履かなくていい」と突き放してしまったりしました。
そのときは、何が起きているのか全く理解できず、私自身もとても混乱していたことを覚えています。
2.「感覚過敏」は心と脳に合った対応が必要
エイジ君が靴下を「気持ちわるい」と嫌がっていた頃、ちょうど保育園に行くのを嫌がっていた時期でもありました。
フルタイムで働く私は、朝の送迎と出勤に追われ、毎日がバタバタ。
保育園へ行き渋るエイジ君への対応に悩む中、何気なく見ていたインターネットで、息子とそっくりな状況の投稿を見つけました。
その投稿を何度も読み返すうちに、「もしかしたら、エイジ君には“繊細な気質”があるのかもしれない」と気づいたのです。
そして私は、繊細な子の心と脳を強くする親子の関わり方を専門に教えているむらかみりりかさんと出会い、紹介されていた発達科学コミュニケーション(発コミュ)の学びを始めることにしたのです。
その中で初めて、息子が靴下を嫌がっていたのは「感覚過敏」だと知ったのです。
感覚過敏は、光や音、肌ざわりなどを脳が過剰に受け取ってしまう状態で、心と脳に合った関わりが必要なサインでもあるのです。
言葉として耳にしたことはあったものの、これまで自分には無関係だと思い、深く理解したことはありませんでした。
3.繊細な子の感覚過敏の和らげ方
①親子の愛着
発コミュを学び始めてまず実感したのは、「靴下をどうにか履かせようとするのをやめること」でした。
無理に履かせる必要はなく、そもそも「どうにかさせよう」とする考え自体を手放そうと決めたのです。
なぜなら、エイジ君と親子の信頼関係、愛着関係をしっかり築くことこそが大切だとわかったからです。
「靴下がイヤなら裸足でOK」。私の中の「当たり前の常識」を一度捨て、関わり方を変える決断をしました。
以前は「ちゃんとさせよう」と出来ていないことばかりに注目していましたが、これからは「やろうとしていること」や「出来たところまで」を言葉で伝え、肯定的に関わることを意識しました。
この関わりを続けるうちに、親子の信頼関係が深まり、あんなに気になっていた感覚過敏も少しずつ和らいでいったのです。
②感覚過敏はなくなる
気づけば、肯定的な関わりをするうちに感覚過敏は自然と気にならなくなり、エイジ君は何も言わずに靴下を履けるようになっていました。
それは、いつのまにか「当たり前の光景」に戻っていたのです。
背景にあったのは、親子の関わり方の小さな変化。
心と脳に合った関わりを積み重ねることで、子どもは大きく成長できるのだと実感しました。
③感覚過敏は心のバロメーター
感覚過敏を経験し、私はエイジくんのうした経験から、私はエイジ君の感覚過敏を「心の状態を知らせるバロメーター」として捉えるようになりました。
日々、肯定の関わりをしながら過ごしていますが、外での世界はストレスがたまることも多く、イベントなどがあればなおさらです。
たまに靴下を嫌がる日もあります。そんな日はストレスが溜まっていると判断し、お手伝いを多めにしたり、スキンシップを多めにして過ごすようにしています。
そのように対応していると、またいつものように靴下を履き、毎日過ごせるようになりました。
4.正しい感覚過敏の理解
こうして今では感覚過敏を「子どものこころの声」として受け止められるようになりましたが、最初から理解できていたわけではありません。
「ただのわがままなんじゃないか」「せっかく買ったのに着てくれないなんて…」と、いつも自分の気持ちや都合ばかりを優先して考えていたように思います。
感覚過敏の原因を知ろうともせず、「なんでこれくらい我慢できないの?」と、無理に慣れさせようとしてしまったこともありました。
しかし、学びを重ねる中で、感覚過敏にはいろいろな種類や度合いがあることを知りました。
たとえば
・洋服のタグがちくちくしてどうしても着られない
・カーペットの感触が不快で上に座れない
・ヌルヌルしたものを触るのが苦手
など、肌に触れるあらゆるものが苦痛に感じられる場合があると知ったとき、「わがまま」ではなく「本当にツラい感覚なんだ」とやっと気づけたのです。
親子の愛着関係が整うと、子どもも少しずつ「試してみよう」という気持ちが芽生えてきます。
最初は苦手で全く触れなかったものも、練習を重ねるうちに
「洋服のタグはちょっと気になるけど着てみる」
「ヌルヌルは好きじゃないけど、触っても大丈夫」
と、大丈夫な範囲が少しずつ増えていきました。
その変化を焦らず見守ることで、エイジ君自身も「できることが増えた」と自信をつけています。
親として、正しい理解を持つことが、子どもを支えるための最初の一歩だと感じています。
執筆者:ますながゆみこ
発達科学コミュニケーション