1.家ですら元気をなくし不登園になった繊細な子
我が家の繊細な三女(通称:はーちゃん)は、ガヤガヤした場や静かすぎる場が苦手で、誰かが辛い状況だと自分も辛くなったり、オルゴールの音で寂しさが溢れ出したり、冗談で飛び交う怖い話に本気で怯えたり、観客を前にした演技ではカチンコチンになるなど、集団生活で体験する様々なことが苦手です。
年少さんで入園してから基本的に登園渋りな毎日。園に行けばお友達とは楽しく遊んでいて、「明日の服は同じ色ね」「明日のおはしは同じキャラにしよう」などと楽しい見通しがたっている翌日は朝の支度もスムーズでしたが、ちょっとした嫌だったできごとをきっかけに登園渋りに戻っていました。
好きなもので励ましたり、半日登園にしたり、休みを挟んだり、なんとか通わせる日々。
せっかくの夏休みすら外出を嫌がり、年長の2学期が始まると、「幼稚園行きたくない。運動会には出ない。家がいい。ママがいい。」と表情もがくっと暗くなりました。チックの症状も出始め、口数も減り、遊びに誘ってもテレビやゲームなどのメディアばかり。家の中ですら元気がない無気力状態になってしまいました。
このままでははーちゃんの心が壊れてしまうと思い、お休みして元気を取り戻し自ら「幼稚園に行きたい」と言い出すのを待つことに。
エネルギーが溜まったら行けるようになるかなと休ませたものの、休んだからと言って園に行きたくなる気持ちが湧く様子は全くなく、「もっと楽に社会とつながる方法はないものか」と思っていたところで出会った、お家で脳を育てる発達科学コミュニケーション(以下、発コミュ)。
繊細な子の子育てを教えているむらかみりりかさんの、「繊細さはギフト、繊細さを強みに」という言葉に、「繊細さを強みにできるなら教えてほしい!」という思いで、年長の11月から発コミュを学び始めました。
2.就学前検診でママとの別れ際にしがみついて泣く
発コミュを学び始めて数日で、小学校で就学前検診を受ける日が来ました。途中、母と別れて行動する時間があるので、そこでどうなるかハラハラしながら会場へ。
案の定、母との別れ際はしがみついて泣くはーちゃん。
近くにいた先生に「離れられない場合、どうしたらいいでしょうか。」と聞いてみたところ、
「今少し離れられたので、たぶんすっと保護者席に行ってもらえれば大丈夫だと思いますよ。」
と言っていただきました。
そこで、泣いているはーちゃんのところには戻らず、「あの席に座るからね」の合図をして保護者の席へ。
6年生のおねえさんが声をかけてくれてどうにか泣きやみ、検診で合流したときには泣いておらず、再び母と別行動になるときには泣かずに離れられ、無事就学前検診を終えました。
就学前検診で母と離れる時に泣く様子を見ていた校長先生から
「まずは安心して来てもらうのが一番です。」
「お母さんが大丈夫なら、最初から母子登校されてはどうですか?」
「一人で行けると自分から言い出すのを待つ方が、結果的に自立が早いと思います。」
とご提案いただき、「まずは学校を安心な場所にしたい!」という思いで、最初から母子登校することを決めました。
3.不登園からの学校生活に挑戦するには
繊細な子が自ら外の世界へ飛び出すには、親子の愛着を強くし、集団生活に困らない力を育てる必要があります。
はーちゃんの登園拒否から2ヶ月後の年長の11月に学び始め、親子の愛着を強くし安心の範囲を広げられる準備をしました。また、親子の対話を増やし、情報を整理して処理する力をつけることを意識してきました。
親子の愛着を強くする肯定的な関わりに徹してからのはーちゃんの変化、入学式の様子については以下で紹介しています。よろしければご覧ください。


準備期間と見通し作戦により、入学式は無事に笑顔で終わることができたはーちゃん。
翌日からの登校を踏み出すには、「それならできそう」のスモールステップでの背中押しです。
4.「それならできそう」のスモールステップ作戦
◆最初から母子登校で安心にGO!
母子登校での登校初日。
特に嫌がる様子もなく、「さぁ一緒に学校行こう~。」と誘うと「うん。」とすんなりと登校できました。
入学式のとき、教室の外からの見守りで行けたので、母から離れるまでの道のりが遠くならないよう、最初は教室の外に座って見守っていました。
2時間目の後、外に出ようとしますが、外には出てはいけない決まりで、母の元へ行きたいけど行けないもどかしさで半泣きになったはーちゃん。
早く離れられるように最初から距離をとっておくことよりも、安心して教室にいられることを優先すべきと考え、教室の中で見守ることに。
教室の後ろだったのが、「席の横に来て。」と言い、どんどん距離が近くなっていきました。今はそばにいる安心感が必要なときなのだろうと、席の横に座るスタイルへ。
席の横に座っても、自分で考えて動く力をつけてほしいので、口出しはしないよう気を付けました。
登校2日目から早速「おうちがいいのになぁ。」という発言もありましたが、発コミュでネガティブな感情は気持ちを一旦預かること、ご褒美作戦で脳を喜ばせることを学んでいた私は、「そうなんだね。」で気持ちを預かりました。
そこまで強い「行きたくない」じゃないことを確認できたら、「学校終わったらおやつドーナツにする?クッキーにする?」とご褒美がある声かけをすると、「ドーナツ!」と気持ちを切り替え泣かずに登校でき、登校すると笑顔で活動を楽しむこともできていました。
慣れた動きや楽しそうな活動は母から離れることができたり、手をあげて発表する姿も見られ、確実に学校生活に慣れ始めていました。
しかし、母子登校4日目の朝、「学校楽しくない。おうちがいい。」と行き渋りが始まりました。
「行きたくない」の気持ちを預かっても預かっても「行きたくない」がいつまでも消えず、ご褒美にも乗ってこなくなり、学校への拒絶感が大きく膨らんでいる様子。
半年間の不登園生活から、ママと一緒とはいえ毎日通う学校への生活の変化。疲れもかなりあると思い、はーちゃんに合わせてさらに小さなスモールステップにペースダウンすることにしました。
5.安心そうな環境なら初めてでもママと離れて自分らしく過ごせた
初めて登校を渋った日、小4の次女と一緒に支援センターに行くことを誘ってみました。
入学前、「ねぇねが学校のときはママと学校、ねぇねが支援センターのときはねぇねと支援センターに行く!」と行っていたためです。
はーちゃんは「行ってみる!」とキラキラな目で即答しました。
次女の送迎で玄関までは行ったことがあっても、中に入るのは初めてなので、「最初だから午前だけで迎えに行こうか?」と聞くと、「ママは来なくていい。お弁当を持って行く!午後も遊んでから帰る!」と別れ際もあっさりと通室しました。
迎えに行くと、先生から「鬼ごっこするひとこの指とーまれ!と大~きな声で自分の気持ちを伝えながら活動してましたよ~!」と教えていただき、安心できそうな環境なら初めての場所でも外で自分らしく過ごす力がついていることを確認できました。
幼稚園に通っていた頃は、お友達にリードされて遊ぶことが多く、自分からこれをやろうと誘うことはあまりなかったようだったので、発コミュを始めた5ヶ月で随分成長したなと実感した日となりました。
安心できる場ならママなしでのびのび過ごせることがわかったので、次にするのは学校に対する嫌なイメージを払拭するだと考えた私は、次に学校に行く日を言葉の教室の日にしようと決めました。
はーちゃんは少し言葉の置換があり、週に一時間だけ学校内で言葉の教室に通うことになっています。言葉の教室は1対1の個別指導なので、学校内での安心の場にしたいという想いがありました。
学校を1週間お休みした後、「先生とはーちゃんとかぁかの3人だけでの楽しい授業があるんだよ」と、初めての言葉の教室に誘ってみたところ、「それなら行ってみようかな」となんとか登校できました。久しぶりの学校に緊張の面持ちでしたが、たくさんのハナマルをくれ、とても和やかな雰囲気の授業で緊張も和らぎ、先生にも少しずつ心を開き、授業が終わる頃には笑顔に。
また、その一週間後、担任の先生が「図工でねんどをするのできっと楽しいですよ」とお知らせしてくれて参加した粘土には授業には、声をあげて笑いながら参加。
寝るときに「今日何が楽しかった?」と聞くと、「ねんど〜」と答えたはーちゃん。
その後も、「それなら行ってみようかな」と思える授業に参加しながらクラスメイトとのコミュ二ケーションも増え、自分のペースで学校生活を経験しています。
6.少しずつ安心の範囲を広げていきたい
順調と思った翌日には疲れで「行きたくない」になったり、嫌だったことへのネガティブな感情がふくれあがり「行きたくない」になることもあるはーちゃん。
それでも、入学してから泣きながら学校に行った日が1日もないのは大ハナマルだと思っています。
今後は、先回りのお世話を封印して自分で考えて行動する力、嫌なことがあったときにポジティブな捉えなおしができる力、どんな環境でもラクに楽しく過ごせる力を育み、安心の範囲を広げていきたいです。
執筆者:たにぐちいろは
発達科学コミュニケーション