「教室がうるさい!」繊細な子の聴覚過敏を和らげた“脳を安心させる”ママの関わり方

「教室がうるさい!」聴覚過敏のつらさから教室に入れなかった繊細な息子。ママが“安心を引き出す関わり”を実践し脳の過剰反応が落ち着いたことで、特製のお守りの力も発揮され「大丈夫だったよ〜」と笑顔になれました。教室の音に悩む繊細な子へのサポートのヒントを実体験を通してお伝えします。 

1.教室がうるさい!息子のつらさを理解できずに悩む日々

 

我が家には、はじめてのことや環境の変化が苦手な敏感で繊細な子しょうくんがいます。

 

普段の生活では特に音に敏感な様子はなく、電車の警告音やら映画館の大音量に驚くことはあっても、それほど気になる様子ではありませんでした。

 

ところが、小学校に入学してから「教室がうるさい!休み時間だけじゃない、授業中もだよ!耳が痛くなる。」と訴えるようになりました。

 

保育園は、小規模で15人程度のクラスだったのが、小学校では1クラス30人になり、環境の変化が大きく影響しているのかなと思っていました。

 

担任の先生に確認すると「そこまでうるさくないですよ~おとなしい子が多いクラスですし。」との返答でした。

 

息子の感覚と現実のギャップをどう理解すればよいのか悩む日々がはじまりました。

 

 

2.耳が痛い!聴覚過敏という視点に辿り着く

 

そんなある日、事件は起きました。
小1の秋、友達の制服にマジックでいたずらした疑いをかけられ、先生から事情を聴かれたしょうくん。

 

「僕はやってないのに悪者にされた!学校は地獄だ!」その日を境に、しょうくんは強く登校を拒むようになり、ついには「学校なんかやめる!」と、不登校寸前になりました。

 

3か月間、学校を休みがちになり、私は不安と焦りの中であらゆる相談機関を訪ねましたが、なかなか具体的な解決策は見つかりませんでした。

 

そんなとき繊細な子の心と脳を強くする親子の関わり方を専門に教えている発達科学コミュニケーション(以下:発コミュ)むらかみりりかさんと出会いました。そこで「脳と心が育てば、繊細な子も挑戦できるようになる」と知り、希望の光を感じ学びを始めました。

 

学び始めてから13日目。なんと、しょうくんの口から「学校へ行く」と自ら言い出したのです。

 

ところが登校を再開したものの、帰宅後には「教室がうるさいから耳が痛い」「頭が痛くなる」と話していました。

 

発コミュで脳のしくみを学ぶ中で、私はふと気づきました。「もしかしてこれは、聴覚過敏なのかもしれない」と。

 

 

3.聴覚過敏を緩和する手段を探して

 

繊細な子の脳は、「こわい!」「びっくり!」を感じる部分(扁桃体:へんとうたい)が敏感で、不安やストレスに強く反応しやすいといわれています。

 

その影響で、音や光などの刺激を処理する感覚の部位(感覚野)も過敏に働いてしまい、日常の音が「つらい刺激」として感じられてしまうのです。

 

その学びから、ようやくしょうくんの「うるさい!」と苦しむ姿にしっくりくる理由が見えてきました。

 

2年生になっても、少しずつ新しい環境にも慣れてきたものの、教室がうるさい!耳が痛い」という訴えは続いていました。

 

発コミュで、ストレスがかかると脳が過敏になり、聴覚過敏が強まることを学んでいた私は、それが原因だと気づき次の2つを意識して関わるようにしました。

 

 

① 脳疲労の回復を優先すること

 

ゲームやYouTubeの時間を減らして刺激を少なくする
睡眠をしっかり確保する(就寝時間を21時から19時半〜20時に早める)

 

「しょうくんの脳は、情報をキャッチする名人なんだよ。だからゲームやYouTubeの音や画像を一方的に受け続けると、脳のHPが100からダメージを受けて50に減っちゃうの。HPを回復するには、睡眠をいつもよりとって、刺激を減らすことが必要なんだ」と伝えました。

 

大好きなゲームに例えたことで、しょうくんもイメージしやすくなり、「早く寝ると脳が元気になって、明日が楽になるよ」という理由にも納得して、自分から行動に移せるようになりました。

 

② 肯定を普段より多めに意識すること


一緒にサイクリングや買い物を楽しみながら、安心感を与える言葉を普段より多めにかけました。

 

繊細な子は「できない」「また失敗した」という経験から不安を感じやすく、自己肯定感が下がりがちです。

 

だからこそ、日常の小さな行動を見つけて「できたね」「助かったよ」と肯定を積み重ねることが、子どもの安心につながります。

 

親からの肯定は「自分は大丈夫」という感覚を脳に刻み、過敏に反応していた心を少しずつ落ち着けてくれるのです。こうして親子の信頼関係の土台が整うことで、息子の心も穏やかさを取り戻していきました。

 

そこにプラスして、学校の中の音の調整するために、まず「イヤーマフ」の使用も提案しましたが、「カッコ悪いから嫌だ!」と拒否。

 

授業中も顔を机にうずめて苦しんでいると聞き、どうしたものかと頭を抱えていました。

 

 

4. “安心”が“不快”を和らげる

 

発コミュで「感覚過敏の子は安心できる心地よい感覚(=快刺激)を与えることで、イヤな音などのつらさ(=不快な刺激)をやわらげることができる」と学んだことがありました。

 

おうちで親子の安心を整え、学校の中でも安心をプラスできるものはないかと探していた時にふと思い出したのが・・・

 

しょうくんが一歳のころから手放さずに、今も寝るときには必ず握っているお気に入りの毛布の存在です。そこで、大好きな毛布と同じような肌触りのタオルを学校用に用意できないかと思いつきました。

 

しょうくんに「ママ、試したいことがあるんだけど」と声をかけ、「お気に入りの毛布に似たタオルを探しに行こう」と誘いました。

 

「安心できるものがあれば、教室うるさい音が気にならなくなるかもよ」と伝えると、息子も「うん!ボタンもつけてほしい」と乗り気になってリクエストしてきました。

 

2人で手芸屋さんに行き、大好きな毛布に似た触り心地の良い生地を選び、しょうくんの好きな素材・硬さのボタンも見つけました。息子と相談しながら、ハンカチサイズの“落ち着くタオル”を完成させました。

 

担任の先生にも事前に事情を説明し、翌日持参。

 

その日、しょうくんは笑顔で「大丈夫だったよ〜」と帰ってきたのです。

 

「教室の音、今日はどれくらいだった?」と10段階で尋ねると、「2!耳も頭も痛くならなかったよ」と笑顔で答えてくれました。

 

今まで苦しんでいた教室の音が「10」とすると安心タオルで「8段階」も下がることができたことに私自身も驚きを隠せませんでした。

 

「安心が不快をこんなに緩和するなんて効果絶大!」
その後も「2〜3」と答える日が続き、やがてタオルなしでも登校できるようになりました。

 

今でもストレスがたまったときや、先生が大きな声を出した翌日などは、息子自らタオルを持って登校しています。

 

 

5. 聴覚過敏があっても学校生活は大丈夫

 

しょうくんは今、「友だちと遊ぶのが楽しい!」と学校の楽しみを見つけ、集団生活を前向きに受け入れられるようになりました。

 

聴覚過敏がある繊細な子も、おうちでの親子の安心の土台を整えたうえで、学校の中で“安心できるもの”を持たせてあげることで、不快な刺激を和らげ、学校生活を心地よく過ごすことができます。

 

もし、しょうくんと同じように「教室がうるさい」と感じている繊細なお子さんがいたら、ぜひ親子の安心の土台を整えたうえで、学校の中になにか子どもの好きな安心アイテムを取り入れてみてくださいね。

 

執筆者:いとう あやこ

発達科学コミュニケーション

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