家から出ない!登園渋りが止まらない繊細な子が「いってきます」できたママの関わり

わが子の登園渋りが続いていて、朝、どうしても家から出ない…と困り果てることはありませんか?繊細な子の「行きたくない」に隠れている本当の困りごとを解消する親子の関わりで、笑顔で「いってきます!」ができるようになったわが家の記録をご紹介します。

1.どうしてうちだけ? 涙の登園が続く繊細な子の「登園渋り」

 

我が家には、不安が強く感受性の豊かな繊細な子、通称・ゆうちゃん(年少・3歳・男の子)がいます。

 

朝のリビングで、ゆうちゃんはお気に入りのトミカのミニカーを手に、床にうつ伏せになって遊んでいます。

 

時計の針が出発の時刻になり私が声をかけても反応がない、または「やだ、まだ遊びたい」と小さな背中は動きません。


私は「また今日も泣きながら登園するのか、泣きながら先生に担がれて園のお部屋の奥に消えてゆくのか……」と、朝から気持ちが重くなっていました。

 

「登園渋りなんて、どんな子にもあるよ」

 

周囲から言われても、なぜうちだけ毎日こんなに泣いているんだろう、どうして涙なしで登園できないんだろうと、心の中は不安と戸惑いでいっぱいでした。


泣いているゆうちゃんを見るのがつらくて、園には長居せず、そそくさと立ち去る日々。

 

「またダメだったんだね〜」

 

何気ない周りのママたちの言葉に勝手に傷つき、「今だけだよ」の言葉も本当なのか疑わしくなり、何か理由があるんじゃないか、どうしてうちだけ?と考えるようになっていきました。

 

 

2.「家から出ない」悩みが爆発する、とある曜日

 

ある曜日になると、「家から出ない」と強く主張するゆうちゃんの抵抗が一段と強くなります。

 

玄関どころか、部屋の奥へ奥へと逃げ込んでしまい、時には朝起きたときから「今日は行きたくない」と泣いて訴えることもありました。


実はこの曜日、担任の先生が不在になることが多い日。

 

曜日感覚がしっかりしているゆうちゃんは

 

「〇曜日=いつもの先生がいない日」

 

ということをきちんと覚えていて、その分不安が大きくなり「行きたくない!」という気持ちが爆発してしまうようでした。


繊細な子はネガティブな出来事や記憶をとくに強く覚えてしまう傾向があり一度「〇曜日=不安な日」というイメージができてしまうとなかなか払拭できず、毎週同じような抵抗が起こるのです。

 

 

3.「繊細な子」の本当の困りごとに気づくまで

 

保育園に通い始めて1年8か月ほど。

 

涙なしで登園できた日は、入園してから片手で数えられるほどしかなかったと思います。

 

本当は、自分も子どもも笑顔で「バイバイ」がしたかった。

 

ただただ、この登園渋りをどうにか解決したい一心でした。

 

夜な夜な「泣きながら登園」「保育園きらい」などと検索を繰り返し、たどり着いたのが「繊細な子の心と脳を強くする親子の関わり方」を専門に教えている、むらかみりりかさんでした。

 

とにかく息子が笑顔で登園できる日を1日でも多く作りたい。

 

その願いを叶えるために、むらかみりりかさんの元で発達科学コミュニケーションを学び始めました。

 

 

学び始めて3か月。

 

家の中で肯定の声かけが当たり前になってくると、親子の安心と信頼の関係が築かれ、ゆうちゃんの行動が変わり始めました。


呼びかけに応じてくれるようになり、次の行動への移ることもスムーズに。

 

その結果、一人で起きてくるようになり、「朝ごはんだよ」と声をかければ席に着き、着替えにも以前ほど時間がかからなくなりました。

 


登園時も「行かない」と言うことはあっても、泣かずに行ける日が増えていったのです。

 

少しずつ他の曜日には泣かずに登園できるようになってきた頃、私は
「もしかしたら、〇曜日にも“楽しいことがある”とわかれば、行けるようになるのでは?」と考えるようになりました。

 

定期的に指導を受けている療育の先生にも相談し、

「担任の先生がいないなら、不安になるのは当たり前。いっそ“〇曜日はお休みの日”と決めて、その日はお家で楽しいことをする日にしてもいいのでは?」

という提案ももらいました。


その考え方もアリかもしれない、と一度は思いましたが、少しずつでも他の曜日にはスムーズに行けるようになってきている今、ゆうちゃんの「行きたくない」の本当の理由は、先生がいないことだけではない気がしていました。

 

「目に見えている困りごとはほんの一部分。本当の困りごとはもっと違うところにある。」

 

むらかみりりかさんから教わったこの言葉が、ずっと頭の中に残っていました。

 

その曜日の朝が近づくと、私の胸はどんよりと重くなります。

 

無理やり抱えて車に乗せて園まで連れて行ったことも、何度もあります。

 

入り口に着いた途端、この世の終わりのように泣き叫ぶ息子。

 

その姿を見るたび、他の先生方にも申し訳ない気持ちでいっぱいになり、私は逃げるように園を後にしていました。

 

…ふと気がついたのは、先生が不在の日に登園するのを嫌がるのは、私たち親も他の先生方もみんなが知っている周知の事実だったということ。

 

「今日は大丈夫かな」

 

「また泣くかもしれない」

 

大人たちが構えているその空気を、ゆうちゃんは敏感に感じ取っていたのかもしれません。

 

ーもしかすると・・・

 

大人が作り上げていた魔ものが、息子の不安をさらに大きくしていたのかもしれない…そう思うようになりました。

 

本当の困りごとは、子ども自身だけでなく、私たち大人の心の在り方や雰囲気にもあったのだと、少しずつ気づき始めたのです。

 

 

4.「登園渋りの壁」を越える!「カーズが遊びに来るよ」作戦

 

発達科学コミュニケーションを学ぶ中で、繊細な子の脳は自分の感情を調節するのが苦手で、人の感情にはとても敏感に反応する特性があること、そして大好きなママの反応が子どもにとって大きな影響力を持つことを知りました。

 

実は、共感的な声かけは「行きたくない」という気持ちをますます強めてしまい、ネガティブな感情が膨らむことがあるそうです。

 

優しく寄り添うだけでは、脳が行動しない方を選びやすくなり、結果として「行かない」という選択につながることもあると学びました。

 

そこで、共感をやめ、否定も肯定もせず、ただ受け止めるだけの対応に切り替えました。

 

そのうえで、楽しい提案を加えて気持ちの切り替えを手伝うことを意識するように。

 

〇曜日の朝は、相変わらず「行きたくない」の大合唱でしたが、私はもう無理に連れて行くことはやめました。

 

そして、「行きたくないんだね」「嫌な気持ちもあるよね」と共感的な声かけをするのではなく、否定も肯定もせず、ただ受け止めるだけ。

 

「そっか~」とだけ返して流すことを意識してみました。

 

はじめは本当に勇気がいることでしたが、思い切ってやってみることに。

 

焦らず、ゆうちゃんが自分の気持ちをそのまま出せるよう、静かにそばにいることから始めました。

 

このとき、私が実際に試みたことは次の通りです。

 

◆行動を細かく分けて、その都度認める声かけ

 

これは特定の曜日だけでなく、毎朝意識して続けていたことです。

 

その場で立ち上がったら「立ち上がったね!」

 

玄関に向かったら「お、玄関に向かってるね!」

 

靴を履こうと座ったら「靴を履こうとしてるんだね!」

 

どんな小さな一歩も拾って、実況中継のように声かけをしました。

 

◆特定の曜日のネガティブなイメージを「楽しい記憶」で上書きする工夫

 

ゆうちゃんの大好きな「カーズ」が助手席に遊びに来る、という特別作戦を決行。

 

カーズのトミカを車の助手席に忍ばせておきました。

 

「今日の出発時刻の5分前に、カーズが助手席に遊びに来るって!」と伝えると、

「え?どういうこと?!」と目が一気に輝き、今までのぐずりが嘘のように一人で玄関まで駆けていきました。

 

車に乗り込むと「カーズ、待っててくれた!」と満面の笑み。

 

こうしてある曜日が、少しずつ「楽しみ」や「期待」に上書きされていくのを実感しました。

 

◆先の見通しを具体的に伝える

 

「あと5分で出発だよ」

 

「車に乗ったらカーズが待ってるよ」

 

何が起こるかを事前に伝えて不安をやわらげるようにしました。

 

また、前日の夜にはギューっと抱きしめたり膝の上に座らせて絵本を読むなどのスキンシップをはかり、安心できる時間を意識して作ることも心がけました。

 

この積み重ねが、ゆうちゃんの「できた!」という自信につながっていくのを感じるようになりました。


無理に「乗り越えさせよう」とするのではなく、子どもの気持ちを受け止め、小さな「できた!」を積み重ねていく。

 

その積み重ねこそが、難関も少しずつ突破できる力になっていきました。

 

 

5.「家から出ない」子の朝が変わった

 

あの1日を境に、「家から出ない」と言っていたゆうちゃんの抵抗はすっと消え、登園前の葛藤はほとんどなくなりました。

 

今では、ゆうちゃんが「今日はカーズ来てる?」と自分から聞いてくるほど、家を出ることが楽しいイベントに変わったのです。

 

ある特定の曜日が行けるようになったことで、ほかの曜日はますます一気に問題なく登園できるようになりました。

 

まだ特定の日の朝には少し緊張した様子があっても、私がどんと構えていられることがとても大きいです。


息子と同じように、私自身にも自信がついてきているからです。

 

これからも、もしまた同じような壁が現れても、胸を張って言えます。

 

「これは何かのサインだから見逃さないようにしよう。この“家から出ない”悩みには必ず意味があり、必要なものなんだ」と。

 

苦手だったことが好きなことに変わる経験を積み重ねて、一歩ずつ進む息子の姿を、これからも見守りながら背中を押していくことが、私の新たな目標になりました。

 

 

執筆者:ふじもとはるな

発達科学コミュニケーション

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