1.わが子が繊細な子!? 明るく活発な娘が突然不登校に
我が家には小学2年生の、こだわりが強く真面目で繊細な子(通称つぼみ)がいます。
明るく元気なつぼみは、今まで一度も保育園や学校に「行きたくない」と言ったことがありませんでした。
そんな彼女に、何の前触れもなく変化が訪れたのです。
2年生の7月。
つぼみが学校に行くと、腹痛を訴えるようになりました。
最初は様子を見ていた私も、家に帰ると元気になる姿を見て、ストレスによるものだと気付きました。
真面目で家族に心配をかけたくないつぼみは、自分を奮い立たせて学校に行っていたのです。
「教室のみんなの声がうるさい」
「先生の注意する声が怖い」
みんなが気にしないような事を、つぼみはとても敏感に感じ取り、心に強く響いてしまう。
つぼみが感じる世界は、私が想像していたものとはまるで違っていたのです。
私はそこで初めてつぼみの繊細さに気付きました。
学校に行きたいのに行けない。
この葛藤が、つぼみの心をますます不安定にしていきました。
そこから娘の不登校は始まったのです。
2.YouTube見過ぎ!繊細な娘にイライラ…不安と焦りの日々
不登校になり学校に行けず、家にいるつぼみがしていることは、YouTubeやゲームばかり。
パジャマのまま1日中ソファの上で、画面を見続けやめられない様子です。
「ちょっとYouTube見過ぎじゃない?休憩したら?」
と声をかけても、私の声は届かず、時には怒り出すこともありました。
「今頃みんな勉強しているのに」
「YouTubeばかり見て大丈夫?」
「このままじゃ…」
そんな娘の姿を見て、胸の奥がぎゅっと痛み、不安と葛藤でいっぱいになっていました。
そして学校にも行かずに1日中YouTubeを見ている娘を見て、イライラしてしまう自分がいました。
学校に行けないのは仕方ないけれど、家での過ごし方を考えたい。
もう少し時間を決めて、違うことにも挑戦してほしい。
そう思いながらも、どう関わればいいのか分からない自分に戸惑っていました。

3.ココロファインダーで分かった、ママの声が届かない理由
8月、不安と焦りの中で、眠れぬ夜が続き、「何かできることはないか」と必死に情報を探していた私に、おうちでわが子の脳を伸ばす「発達科学コミュニケーション」(以下、発コミュ)との出会いが訪れました。
脳科学に基づいたコミュニケーションで、脳は育てられる。
発コミュを知った瞬間、私の中にひとすじの光が差し込みました。
「娘のことを理解できる!」
「私の関わり方を変えれば、娘はまた笑顔を取り戻せるかもしれない」
そう思い、迷わず受講を決意したのです。
受講して分かったのは、不登校で学校に行けず、不安やストレスを抱えていた繊細なつぼみは、YouTubeに夢中になることで、つらい気持ちから少しでも逃れようとしていたということでした。
つまり、YouTubeを見過ぎていたのは「ただの怠け」ではなく、心を守るための方法だったのです。
さらにYouTubeは、次々と面白い動画が流れてきて脳に「ごほうび」を与えます。
そのたびに「もっと見たい!」という気持ちを強めるドーパミンという物質が出るため、やめにくくなってしまうのです。
加えて、子どもの脳はまだ「やめよう」と自分をコントロールする部分(前頭前野)が発達途中。
不登校で生活リズムが乱れると、この働きがさらに弱まり、ますますやめられなくなってしまいます。
だから、つぼみがYouTubeを見続けてしまうのも無理はなかったんだ。
あの時間は、つぼみなりに不安な心を守るために必要な時間で、脳がそうさせていたのだと理解することができました。
そして、つぼみの心の状態を客観的に理解するために、心のコンディションと脳の育て方がわかる「ココロファインダー」というツールを使って、分析してもらいました。
このツールは、普段は見えにくい子どもの心のコンディションをグラフなどで分かりやすく“見える化”するものです。
ココロファインダーには5つのカテゴリーがあります。
親子の信頼と安心の関係から育まれる「親子の愛着」、様々なストレスに自分で対応する力「ストレスコントロール力」、行動を抑制する機能をコントロールする力「心のブレーキ」、行動や挑戦を積極的に行う力「心のアクセル」、あらゆる環境で自分らしく適応していく「適応力」です。
この5つの力をどんな順番で育てていけば、子どもの”行動”につながるのかを分析できるため、わが子専用の脳の育て方が分かります。
なぜなら、脳は「行動することで育つ」からです。

分析の結果、すべての数値が低く無気力状態。
そして、親子の信頼と安心の関係から育まれる「親子の愛着」がとても低く、この土台が不安定なために他の力も発揮できないでいたことがわかりました。
当時の私はつい、注意や指摘ばかりを口にしてしまい、
「少しくらい勉強したら?」
「YouTube見過ぎ!」
と心配で不安になり、眉間にしわを寄せ、笑顔を失っていました。
そんな私の態度や言葉が、繊細なつぼみには重くのしかかり、脳が「ママの声は聞きたくない」と無意識にシャットアウトしてしまっていたのです。
そのため、どんなに声をかけてもつぼみの心に届かなくなっていました。
私の言葉をスッと届けるには、まず親子の信頼と安心、つまり親子の愛着を整えることが大切だということに気づいたのです。

4.親子の愛着がカギ!繊細な子とYouTube時間の整え方
YouTubeを見過ぎていた理由が分かると、つぼみへのイライラする気持ちがなくなっていきました。
「つぼみは怠けているんじゃない」
「学校に行かなくても不安で辛いんだ」
そのことに気づくと、私の見方が変わり、つぼみにかける言葉や態度も自然と否定的なものではなくなっていったのです。
◆否定や指示はゼロ!ありのままを肯定
まず私がやったことは、否定や指示はゼロで娘のありのままを肯定することでした。
だけど学校に行かずに1日中パジャマ姿でゲームやYouTube。
肯定するポイントなんてない…と思っていた私。
肯定は何かできた時にするものではなく、好ましくない行動以外すべて肯定ポイントだと教えてもらいました。
「おはよ〜!起きてきたんだね」
「美味しそうにご飯食べてるね」
「トイレ行ったんだ」
「お風呂入ってさっぱりしたね」
と、当たり前にできていることでも、言葉にして伝えることで「できてるよ〜」と脳に教えてあげることができます。
そして、娘が観ているYouTubeに興味や関心を示すようにしました。
「楽しそうに観てるね!」
「面白いね、これ!」
「これってどうなってるの?」
と、つぼみが観ているYouTubeに関心を持って、一緒に観るようにしたのです。
こうした声かけは、行動を評価するわけではありません。
「自分の世界を尊重してくれている」という安心感を子どもに与えます。
繊細な子は、自分の世界を理解しようとしてくれる存在がいるだけで安心し、YouTubeやゲームをしている時間すら、「親に理解されている」という肯定感につながるのです。
この小さな関心の積み重ねが、親子の信頼関係=愛着の強化につながります。
このような関わりを1ヶ月ほど続けていくと、つぼみに変化が起きてきました。
笑顔で過ごすことが多くなり、私との会話が増え、言い返してくることがなくなり、素直に話を聞けるようになったのです。
これは、親子の愛着が強くなり、ママの声が素直に届くようになったから。
親子の愛着が育つと、ママの声が届くようになり、伝えたいことも否定的に捉えずに、受け止められるようになります。

ですが、まだ不登校中。
YouTubeの制限についてすぐに話すことは避けました。
心の拠り所を奪ってしまうと、安心感が揺らいでしまう可能性があったからです。
11月、肯定的な関わりを続けることで、つぼみは学校へも少しづつ足が向くようになってきました。
「今なら話を聞いてくれる!」
そう感じた私は、YouTubeの使用時間について話し合うことを決めました。
そして同じ時期に、もっと学びを深めたいと、発コミュの基礎講座から、Nicotto講座へとステップアップしました。
基礎講座では、脳の仕組みを通して親子のコミュニケーションの基礎を学び、Nicotto講座では、その学びをさらに深めながら、日常の関わりに生かし、仲間とともに学び合いながら実践力を高めていくことができます。

そこで学んだことをもとに、娘のYouTube視聴時間について話し合うステップを考えました。
◆なぜYouTubeを見過ぎるとよくないのか、理由を伝える
学んだことのひとつが、子どもと脳の仕組みについて普段から話し合うことの大切さです。
親が思っているよりも、子どもは理解してくれること、そして理解することで納得し、自分で行動できるようになることを知りました。
そのためまず私は、娘にただ「やめなさい」と伝えるのではなく、なぜYouTubeを見過ぎてはいけないのかを納得できるように伝えました。
・目に影響があること
・YouTubeは見ている間は楽しいけど、脳はフル回転!
・たくさんの情報を受け取って、余計に疲れてしまうこと
・長時間の視聴は「過集中」といって、やめたくてもやめられなくなること
こうして理由を丁寧に伝えると、娘自身も「YouTubeを見過ぎるのはいけないこと」と理解でき、自然に「じゃあどうする?」と視聴時間について話し合うことができました。
◆一緒にルールを決める
納得できた後は、親子で視聴時間やタイミングのルールを一緒に決めることにしました。
子ども自身がルールづくりに参加することで、「親に決められた」ではなく「自分で守る」という意識が芽生えます。
自分で決めたことの方が納得感が強く、素直に従いやすくなるからです。
◆スモールステップで
繊細な子どもにとって、新しいことや変化は大きな負担になることがあります。
そのため、一度に全部変えようとせず、少しずつステップを踏むことにしました。少しづつ時間を短くしたり、タイマーをセットする習慣をつけるようにしました。
このように小さな成功体験を身につけることで、無理なく時間を制限していくことができました。
時間を制限するようになって1ヶ月もすると、自分からタイマーをセットして、やめられるように!
あんなに1日中YouTubeばかりの生活が嘘のように、今では時間を決めて視聴することができています。

5.子どもに変化を求める前に、まず自分が変わる
あの頃の私は、つぼみをなんとかしようと必死でした。
「YouTubeばかり見ないで!」
「もっと他のこともしてほしい」
そう願えば願うほど、心が離れていく気がして、不安と苛立ちが入り混じっていました。
しかし、脳の仕組みを知ったことで、「つぼみの行動」ではなく「心の中の不安や戸惑い」に目を向けられるようになったのです。
発コミュを学び私は変わっていきました。
できないことを責める代わりに、今できていることに目を向ける。
ありのままを肯定する。
そうやって関わり方を変えていくうちに、つぼみの表情が少しずつやわらぎ、親子の信頼関係が深まっていったのです。
この時のココロファインダーを見返すと、親子の愛着がぐんと伸びているのが分かります。
さらに、Nicotto講座での学びを深めていくと、つぼみにさらなる変化が訪れました。

これはNicotto講座での学びを深めて1ヶ月後のグラフです。
基礎講座の時点では、親子の愛着とストレスコントロール力は伸びていましたが、心のブレーキが外せずに、1歩踏み出す力が中々育ちにくい状態でした。
しかし、このグラフを見ると、心のブレーキの数値がぐんと上がり、続いてその後の数値も一緒に伸びているのが分かります。
この頃になると、少しずつ学校で過ごせる時間が増えていきました。
教室の雰囲気にも慣れ、表情に落ち着きが見られるようになってきた頃、なんと、つぼみが手を挙げて発言したのです。
今まで一度も挑戦したことのなかった「手を挙げる」という行動。
それは、つぼみにとって勇気のいる大きな一歩でした。
ブレーキが外れ、アクセルを踏めるようになったことで、外の世界でも「やってみたい」と自分の力を発揮できるようになってきたのです。
発コミュを学び私の子育ては大きく変わりました。
子どもを変えようとする前に、まず私が変わる。
その気づきこそが、すべての始まりだったと感じています。
親子の信頼関係は、安心して挑戦できる土台になります。
これからもその土台を大切にしながら、つぼみが自分らしく進めるようサポートしていきたいです。

執筆者:なかたに のぞみ
発達科学コミュニケーション

