「花火が怖い」聴覚過敏のある小学生が花火大会を楽しめた親の声かけ

大きな音が苦手で、イヤーマフは生活必需品。「花火が怖い」と泣いて帰っていた繊細で聴覚過敏のある小学生の息子が、親の声かけで花火大会を最後まで楽しめるようになった体験談です。 「怖くないよ」ではなく、肯定の声かけで「できた」の経験を積み重ねることで、脳のストレスを減らし、怖い気持ちが「やってみよう」に変わっていった親子の変化を紹介します。

 

1.「大きな音が怖い」聴覚過敏な息子の不安

 

小学2年生の息子(通称みっくん)は、小さい頃から音にとても敏感な繊細な子でした。

 

大きな音やざわめきが苦手で、雷や強風の日には家の中でもイヤーマフをつけておびえながら過ごすほど。

 

小学校に入学してからは、聴覚過敏がさらに強く表れました。

 

みっくんの通う学校では、定刻になるまではグラウンドで玄関が空くのを待ち、チャイムが鳴ると一斉に靴箱へ向かいます。

そのときのざわめきが苦手で、登校時刻をわざと遅らせる必要がありました。

 

そして学校から帰ってくるといつも、「誰かが絶対に間違えて防犯ブザーを鳴らしちゃうから早退したい」と涙目になっていたのです。

 

 

2.「花火は怖い」泣いて帰った2024年の夏

 

音への敏感さは、本来楽しいはずのイベントでも現れました。

 

  • 楽しみにしていた映画を見に行った時
  • 大好きな映画が原作のミュージカルを見に行った時
  • 「行ってみたい!」と足を運んだ夏祭りに行った時

 

そして、2024年の夏に足を運んだ花火大会では、イヤーマフをつけていたにもかかわらず、一発目の花火が上がった段階で「花火怖い、帰ろう!」と涙目になりすぐに引き返すことになりました。

 

イヤーマフを常に携帯し、イヤーマフで対応できることもありましたが、それでもダメな時は「帰る」という選択をするしかありませんでした。

 

「楽しみにしていたけど怖かった」そんな言葉に、どうしてあげればいいのか分からず、胸が痛くなりました。

 

 

3.「怖くないよ」では変わらない、行動を変える声かけとの出会い

 

そんな時に出会ったのが、お家で脳を育てる発達科学コミュニケーション(発コミュ)のトレーナー、むらかみりりかさんでした。 

 

2024年1月末に学びはじめて、衝撃を受けたことが3つあります。

 

①認知に対する「行動」を改善していく

 

1つめは、発コミュは「性格」や「認知」を変えるのではなくて、認知に対する「行動」を改善していくということ。

 

つまり、聴覚過敏で大きな音を怖がる子に対して「怖くないよ」ではなくて、怖いかもしれないけれどその先の行動ができるようにサポートをすることで「怖かったけどできた!」「なんだか怖くないかも」と行動を変化させていくのです。

 

②脳がストレスでいっぱいだと「1」の刺激も「100」に感じる

 

繊細な子は脳の中でも聴覚や視覚などの感覚系が敏感で、刺激を受け取る=インプットする力が強いのです。

 

それに対して、刺激を処理する力=アウトプットが追い付かないために、脳の中がストレスでいっぱいになり、刺激に対して過敏な状態に陥りやすい。

 

みっくんの「大きな音が怖い」「ざわざわが嫌だ」も、まさにこの状態だったのです。

 

③ネガティブな気持ちへ共感することは逆効果になる

 

繊細な子の脳は自分の感情の調節が苦手なので、人の感情に敏感に反応します。特に、大好きなママの言うことは絶対!

 

つまり、「花火が怖い」と言うみっくんに「そうだよね、怖いよね」と共感していたわたしの声かけは、「やっぱり大きい音は怖いんだ!花火、怖い!」というみっくんの不安感を増してしまっていたのです。

 

 

4.肯定の声かけで「できた」の貯金をためる

 

まず意識したのは、肯定の声かけで「できた」という経験を積み重ねて脳のストレスを減らすこと。

 

肯定の声かけとは、できていることに目を向けて、事実を言葉にして伝えてあげることです。

 

「おはよう、1人で起きれたね」

「宿題のノート出したんだね」

「ご飯、もう半分食べたんだね」

 

など、子どもの行動をそのまま言葉にして伝えるだけで、「ママが見てくれている」という安心が増えると同時に「できた」という経験が子どもの中に貯金されていくのです。

 

「できた」の経験は「やってみよう」という行動につながるため、インプットしたものをアウトプットする力がつき、脳のストレスが減っていきます。

 

次に意識したのは、「ネガティブな気持ちに共感しない」こと。

 

みっくんが「今日学校で大きい声の子がいて怖かった。」「今日の朝はかなりざわざわして嫌だった」と話してくれた時も共感はしませんでした。

 

その代わりに「イヤーマフをつけたら大丈夫だったね」や「ざわざわが気になったけど、イヤーマフつけずに過ごせたんだね」と、ここでも肯定の声かけを続けました。

 

 

5.花火大会を最後まで楽しめた2025年夏の変化

 

ネガティブな気持ちに共感しないことと、肯定の声かけを始めて3ヶ月が経つ頃。

 

みっくんは強風の日も雷の日も、家の中でならイヤーマフをつけずに過ごせるようになりました。

 

そして2025年7月、声かけを変えてから半年後の夏。

1年前はイヤーマフをつけていても「花火が怖い」と泣いて引き返した花火大会に、「行ってみたい」とみっくんから言い出したのです。

 

イヤーマフをつけて、手をつないで、1年前と同じ場所へと向かいました。

 

そして一発目の花火がドーンとあがった時、みっくんの顔は少し緊張はしているものの、花火にくぎ付け!

 

その後もしばらく見たのちに「もっと近くに行って見ようよ」と、みっくんから提案があったのです。

 

わたしは内心、驚きと「もっと音が大きくなるけど大丈夫かな?」という気持ちもありましたが、「行ってみようか」と、みっくんのリクエストに応えてより大きく見える場所まで歩いていくことにしました。

 

2025年の花火大会は、1年前よりも近い場所で、最後まで鑑賞することができ、みっくんは嬉しそうに夏休みの絵日記に花火大会を楽しんだことを書いたのでした。

 

 

「花火は怖い」と泣いていたあの夏から1年。

わたしの声かけを変えるだけでこんなにも大きな変化をみせてくれたことに驚きました。

 

みっくんと見た花火大会の思い出は、忘れることのできない宝物です。

 

脳のストレスを減らすことで、聴覚過敏もやわらげることができること。

脳のストレスは、親の声かけで減らしてあげることができること。

聴覚過敏でどうしてあげたらいいのか分からない…そんなママの希望になると嬉しいです。

 

執筆者:みやざわちひろ
発達科学コミュニケーション

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