ADHDとASDグレーゾーンで不登校になった息子の経験をもとに、脳の疲れやストレスによる不登校の仕組みを解説。「保留・受容・理解・共感」の4ステップで子どもの心を落ち着け、自ら動き出す力を育む方法をお伝えします。
1.素直で優しい子が一変…無気力から「学校潰れろ!」と言うようになっていった息子
我が家には小学校6年生の注意欠陥多動性障害(ADHD)と自閉症スペクトラム(ASD)のグレーゾーンの息子がいます。
小学校1年生の時から行きしぶりはありましたが、担任の先生と息子が登校しやすいように色々工夫をして環境を整えていったことで、大好きなお友達がいる学校へ再び楽しく通えていました。
「もう安心して大丈夫かな?学校にも慣れたよね?」と、気楽に考えていた小学校3年生の夏休み明けに、息子の異変を感じ始めたのです。
その頃から、息子に不登校の前兆ともいえる変化が現れ始めました。

学童から帰って、夜、漢字の宿題に取りかかっても、書いては消すを繰り返しいっこうに進まない…。
朝起きての第一声は「疲れた」と言い、日に日に学校に行く足取りも重くなっていたのです。
そんな息子を見て、熱もないのに学校を休むのが許せなくて、引っ張って無理矢理連れて行く日々でした。
そのうち私と先生がどれだけ息子をなだめても応じないようになり、最終的には「学校潰れろ!」とまで言うようになり、ついには完全不登校になってしまったのです。
2.ただの甘えじゃない!ADHDグレーゾーンの不登校の子が疲れやすい脳のしくみ
不登校の子の脳は一体どうなっているのでしょうか?
実は、脳と心が常に緊張状態にあり、心のエネルギーが切れかけてストレスにおかされている状態なのです。
不安や緊張が長く続くと、脳の中で“警報ベル”の役割をしている部分が過敏に反応し続けます。
この“警報ベル”は「扁桃体(へんとうたい)」といって、怖い、イヤだ、不安…といった気持ちをキャッチする場所です。
ここがずっと鳴りっぱなしになると、脳は「危険だ!」と判断して、体を戦闘モードに切り替えます。
すると、脳は体に「もっと頑張れ!」と信号を出し、ストレスと戦うためのホルモンを出します。
これは本来、ピンチのときに体を守るための大事な反応なのですが、長く続くとホルモンの分泌過剰となり、体や心が疲れ果ててしまいます。
つまり、脳が休めないまま「ずっと緊張している状態」になってしまうのです。
心と脳が休まっていないエネルギー切れの状態のまま学校に行くと、ただ座っているだけでも消耗してしまい、集中する力や頑張る気力はほとんど残っていません。

そんな状態で過ごしていると、学校では周りからできていないところを指摘されたりして、 自分でも「どうして自分だけできないんだろう」と比べてしまい、完全に自信をなくしてしまいます。
その結果、こんなサインが子どもに出てきます。
・すぐ疲れる
・やる気が出ない
・怒りっぽい
・不安が強い
・気持ちが落ち込みやすい
さらに、ADHDグレーゾーンの子どもは、定型発達の子どもに比べて周囲からの刺激を敏感に感じやすく、疲れやすいといった特性もあるので、より荒れやすくなったり、不登校に陥りやすくなってしまうのです。
3.「小3の壁」でつまずいた息子…勉強と集団行動が苦手な子が抱える見えないストレス
当時の私は、そんなADHDグレーゾーンの特徴も持つ息子の気持ちを分かってあげることができませんでした。
宿題は全部するもの、運動会の演技も「みんなに教えてもらったらできるようになるよ!」というスタンスを変えることができずにいたのです。
「学校行きたくない!」と言われても「行ったら楽しいよ」「みんなに置いていかれるよ」と、息子の心の声を聞いてあげることができていませんでした。
その結果、素直で優しかった息子は一人では抱えきれなくなったストレスを暴言・暴力、癇癪として家でも学校でも表すようになり、挙げ句の果てに不登校になってしまいました…。

その上、勉強や集団行動が苦手な子が感じ始める小3の壁。
小学校3年生になると、学習面・生活面のハードルが一気に上がります。
勉強では漢字の画数が多いものが増え、算数では2桁の計算や割り算が始まります。
授業中に静かに座っていなければならない時間も長くなり、運動会や行事では細かい動作や協調性が求められるようになります。
ADHDグレーゾーンの子どもにとって、これらは大きな負担となり、学校生活のつまずきのきっかけになりやすいのです。
我が家の息子も、勉強についていけなくなっていました。
また、運動会の演技での細かい動作を覚えることも苦手で、周りと比べて自信をなくしていました。
今思えば、勉強が苦手、集団行動が苦手なADHDキッズにとっては3年生は一番ストレスがかかる学年だったのです。
4.不登校の子どもの心を落ち着かせて自分で動ける力を育てる4つの声かけステップ
ADHDグレーゾーンの子どもは、環境の変化や学校でのストレスが重なると、行きしぶったり、不登校になりやすいという特徴があります。
息子もそうでした。
息子のように自信をなくして心が荒れてしまっている子にやってほしいのは、「心を癒す会話の基本ルール」を使ってストレスを除去してあげることです。
そのルールとは、4つのステップを順番に踏むこと!
この会話の仕方の基本ルールを使うと、ストレスを除去して感情を落ち着かせていくことができます。
ステップ1 保留
子どもが「学校行きたくない」と言ったら、まずは何も聞かず、一旦そのまま受け止めて「保留」しましょう。
「どうして?」「行かないと困るよ」などと追及すると、子どもは「話を聞いてもらえない」と感じて心を閉ざしてしまいます。
まずは、安心して気持ちを出せる空気づくりが大切です。
ステップ2 受容
子どもが気持ちを言葉にしたら、「そう感じたんだね」「その気持ち、わかったよ」と、そのまま伝えて「受容」しましょう。
言い争いになると、家が安心できる場所ではなくなってしまうので、肯定も否定もせずに受け止めることで、「思ったことを言っても大丈夫」と子どもが安心できることが大切です。
家が安心できる場所だとわかると、子どもは少しずつ心を開いてくれるようになります。

ステップ3 理解
子どもが「何を考えているか」より「何を感じているか」に注目して、「悲しかった?」、「びっくりした?」など、感情を言葉にして確かめたり代弁してあげましょう。
自分の思いを代弁してもらえると、子どもは安心して気持ちを吐き出せるようになり、少しずつ自分でも言葉で気持ちを伝えられるようになるからです。
繰り返すうちに、自分の気持ちを言葉で伝えられるようになります。
ステップ4 共感
「それはつらかったね」、「そう思ったんだね」と、子どもの感じ方をそのまま受け止めて共感しましょう。
気持ちを理解してもらえたと感じると、子どもは安心して現実と向き合う心の準備ができます。
そして少しずつ、自分のペースで前に進む力が育っていきます。
この4つのステップを意識することで、子どもは心を開き、安心感を取り戻します。
我が家の息子はこのステップを順番に実践すると、暴言暴力、毎日の癇癪は嘘のように減っていきました。
ひどい時は、ストレスのコントロールができず不登校になり、衝動的に家や学校から飛び出してしまうこともあった息子でした。
しかし今では、「昨日友達と遊びすぎて疲れたから今日はしんどいわ」、「思ってた予定と変わってなんかイライラするわ〜」と、自分のモヤモヤや気持ちを困った行動ではなく自分の言葉で伝えられるようになりました。
ある時、息子がふとこう言いました。
「ママ、助けてくれてありがとう。」
ADHDグレーゾーンの子どもは、自分の気持ちをうまく言葉にできず、心のモヤモヤを一人で抱えがちです。
どんなに小さな一歩でも、ママが寄り添い続けることで、安心感ができ、子どもは再び動き出せます。
ママとの会話が、子どもの未来を支えてあげられるのです!
心と脳のエネルギーが不足して不登校になってしまっているお子さんがいるご家庭では、まずこの4つのステップを今日から少しずつ意識して取り入れてみてくださいね。
執筆者:山本みつき
(発達科学コミュニケーショントレーナー)
(発達科学コミュニケーショントレーナー)
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