1.3歳頃から薬嫌いになった感覚過敏の繊細ちゃん
私には感覚過敏(味覚が敏感)で繊細な小2の娘、ぷにちゃん(通称)がいます。
ぷにちゃんは2歳までは薬を何も混ぜずにそのまま飲めていたのですが、3歳になる頃には、そのままでは飲めなくなってしまいました。
それでも最初の頃は、ぷにちゃんの好きな納豆に混ぜたり、ゼリーに混ぜたり、アイスに混ぜることで飲めていたのですが、数か月も経たないうちに、微妙な味の違いがわかるようになったのか、その「ごまかし」は効かなくなってしまいました。
市販の服薬専用ゼリーも警戒心の強いぷにちゃんは舐めることもせず拒否してしまいます。
小児科の看護師さんに相談すると「広範囲に混ぜてしまうと味がたくさん広がってしまうし、それを全て食べてもらわないといけなくなるので、薬は1,2滴の水で溶かして、口の中(頬の内側)に塗り込むようにすればいい」と言われましたが、その方法も嫌がっていました。
2.薬を1包飲むだけで40分かかる繊細な子ども
幸い、ぷにちゃんは月齢が上がるに連れ、保育園でウイルスをもらってくることも少なくなり、薬を飲ませる機会が減ってきていたのですが、5歳の夏、「耳が痛い」と言うので耳鼻科に連れて行ったところ、「中耳炎の一歩手前」との診断でした。
「2週間抗生剤を飲んで様子を見ましょう。改善されなければ切開が必要です。」
ちょうど薬を飲み終わる時期に、ぷにちゃんと一緒に新幹線で友人の結婚式に行く予定がありました。
切開なんてことになれば、その直後に長時間の移動は厳しいかもしれない…何としても抗生剤だけで治ってほしい!と私は思いましたが、
耳鼻科の薬は、小児科の薬と比べて、粉末の状態が荒く、味も子ども用に工夫されていない印象で、余計に嫌がることは予測できました。
しかも、抗生剤は解熱剤や整腸剤のように「こういうときだけ飲んでください」というものではなく、ウイルスを体から出し切るために、指定された日数全部飲み切らなければいけない・・・
最初は私も
「お耳が早く治るようにお薬飲もうね」
「お耳の中切らなくて済むようにお薬を飲もう」
などと、薬を飲むことのメリットを強調しながら優しく声をかけるのですが、10分経っても20分経っても一向に進まない様子に、朝は自分の仕事に間に合わなくなるという焦り、夜は寝かせるのが遅くなってしまうという焦りで徐々にイライラしはじめ、
「飲まないならママ先に行くからね」
「飲まないならもう〇〇させないからね」
という言い方をしてしまい、ぷにちゃんも泣きながら、むせながら何とか薬を飲むという日々でした。これで大体40分はかかっていました。
朝晩、薬を飲むだけで1時間20分もかかってしまう。
正直この状況は地獄でした。
3.振り返れば薬を飲んでも否定ばかりしていた私
頻繁に薬を飲むことがない健康体のぷにちゃんだからこそ、本人も薬を飲むことに一向に慣れないし、私も飲ませることに解決策を見いだせずにいました。
小1の夏休みにも薬を飲むことがあったのですが、私の予定が迫っていたこともあり、「〇分までに飲まないならママだけで行ってくるね!」と言って、一人でお留守番できないぷにちゃんは渋々薬を飲む、ということがありました。
夏休み明けから発達科学コミュニケーションを学び始めた私は、これまでの自分がいかに否定的な注目ばかりしていたかを知りました。
時間をかけて少し薬を飲んだぷにちゃんには「そのペースじゃ間に合わないよ!」と言っていたし、渋々でも泣きながらでも最後まで薬を飲めたときにも「もっと早く飲まないと時間がもったいないでしょう!」
などと、自分のイライラを抑えきれずに否定ばかりしていました。飲むのがイヤな薬を渋々飲んでも怒られてしまう。これでは、ぷにちゃんにとっていつまで経っても薬を飲むことは「イヤなこと」から抜け出せないことに気づきました。
4.肯定的な注目を始めてから繊細ちゃんに起きた変化
前述の通り、健康体のぷにちゃんが薬を飲む機会はそうそうありません。
私は日頃からぷにちゃんに対して否定的な注目をせず、肯定的な注目をするよう意識しました。
目覚ましが鳴ってもなかなか起きないぷにちゃん、のんびりと朝ごはんを食べるぷにちゃん。タイムリミットのある朝に肯定的な注目をすることは最初は大変でしたが、
「目覚まし止めたね!」
「目開けたね!」
「もう半分食べたね!」
などと、少しでもできたことに対して肯定の声かけをしていきました。
3週間ほど経つ頃には、翌日着ていく服を前日の夜に自分で用意するなど、行動に変化が見られたぷにちゃん。
3か月経つ頃には、何分までに何をする、という朝の準備が自分で考え行動できるようになってきました。
5.冬休み目前にお腹を壊した娘にとって久しぶりのお薬
冬休み直前にぷにちゃんがお腹を壊したので病院に行きました。
熱もないし様子を見てもよかったのですが、万一症状が長引いたとき冬休みに入って病院がお休みになると困るので、念のために、と早めに連れて行きました。
お腹の風邪でしょう、ということで整腸剤が処方されました。
薬を飲むときに隣で見ているとつい口を挟んでしまいたくなりそうだったので、「少しずつでいいから〇分までにお薬飲んでみようか?」と目標の時間だけ提示して、久しぶりのお薬に少し緊張した様子のぷにちゃんをリビングに残し、私はキッチンで洗い物をしていました。
3分後、ぷにちゃんが「ママ!お薬ここまで飲めたよ!」と少量の薬の3分の1程度でしたが、「飲めた!」と嬉しそうに言ってわざわざ私に見せてきました。
私は「もうそんなに飲めたの!」と驚いてみせました。
そしてまた3分後、「ママ!これだけ飲めた~」と3分の2ほど飲めたぷにちゃんはとても嬉しそうです。
私も「すごい!あとちょっとだね!」と盛り上げます。
そして「全部飲めたよ~!10分で飲めた!」と全て飲み終わって嬉しそうなぷにちゃんに「え!もう全部飲めたの!早かったね!すごいすごい!」と私も大喜びしました。
6.繊細な子どもが苦手なことにチャレンジするために必要だったのは
味覚に限らず、聴覚や嗅覚など、繊細な子は感覚過敏があることが多いですが、感覚の過敏さは生まれ持った気質だけではなく、心のコンディションによりその過敏さは強まることもあれば弱まることもあるのです。
ぷにちゃんが苦手な「薬を飲む」ことにチャレンジするには「何かに混ぜる」というその場しのぎの方法ではなく、母親である私とのコミュニケーションで「心の土台」を強くしていくことが必要でした。
以前なら苦手な薬を飲むことにチャレンジしても私が否定してしまうので、「薬を飲むこと」と、「ママに否定されること」がセットで脳の中に記憶されており、毎回薬を飲むことを苦痛に感じていたのです。
少しでもできたことをママが肯定することで、繊細な子の自信が育ち、苦手なこと・新しいことへ挑戦する心の土台を築けていけるのです。
薬を飲むことが苦手なお子さんがいるお母さんはぜひ、普段から子どもへ肯定的な注目をし、肯定の声かけをすることを意識してみてくださいね!
執筆者:神名 美緒(かみな みお)
(発達科学コミュニケーショントレーナー)