1.突然、「病院行かない!」になった繊細な子
わが家には、ひといちばい敏感な何でも知りたがる博士ちゃん(通称:ミカ)がいます。ミカが1年生の頃、小学校から「発熱したため迎えに来てください」と電話があり、迎えに行った日のことです。
今までミカは高熱が出ても元気なタイプで、病院も薬も苦手ではありませんでした。しかし、その日は車に乗るなりぐったり・・・そのまま寝かせてあげて、次の日に予約を入れてインフルエンザの検査のために病院へ行く予定でした。
翌日起きてからも高熱が続いていたので「何時に予約したから病院行こうか」と言った途端、「病院行かない!絶対行かない!」と言い出したのです。私は、ミカの初めての言葉にポカンとしてしまいました。
突然、病院が平気から苦手になった理由を考えてみました。
集団生活が苦手なミカは小学校へ入学してから、「嫌だな」と思った日も、頑張って毎日登校していました。心身のバランスを崩しやすいと言われている時期でもあり、インフルエンザも流行っているので「疲れが出たんだ」と思い、この時はまだ「時間になったら行くだろう」と呑気に構えていました。
2.繊細な子の脳を見える化
何度誘ってみても、行った後のご褒美を提示しても、ミカは「病院行かない!」の一点張りでした。その理由が「痛いのもう嫌だから!」のひと言からわかりました。
ミカが年長の頃、外ではいい子で頑張りすぎちゃう、家では怒ったり泣いたりが激しく親子の会話もできない状況で、どうしたらいいのかわからず悩んでいました。
本やネットを読み漁る毎日の中、たどり着いたのが「お家で脳を育てる発達科学コミュニケーション」でした。「わが子に合っているのは、これだ!」と思い、ご自身も繊細な子のママである「繊細な子の心と脳を育てる専門家のむらかみりりかさん」の元で学び始めていました。
繊細な子の心と脳の仕組みを学んでいくうちに、繊細な子は「痛かった」「怖かった」などのネガティブな感情に敏感に反応するため、記憶にも残りやすい脳の個性を持っていることがわかりました。
そのため、以前ミカが病院に行った際に、初めて血液検査をした経験があり、その「痛かった、怖かった」というネガティブな記憶が強く残っていることで「また痛いことをするんだ」「病院は怖いところだ」と思ってしまっていたのです。そしてそれが病院嫌い、断固拒否の原因となっていました。
さぁどうしよう・・・
ここで、ママの不安や焦りは禁物!繊細な子は、ママの雰囲気や言葉を敏感に感じ取ってしまうため、さらに不安を膨らませてしまう要因となります。
私は一旦その場を離れ、深く息をして、ミカが行動できるための作戦を考えました。

3.ポジティブ変換と魔法の枕詞
ネガティブな記憶を払拭するために、2つの声かけをしました。
①できていることを思い出させる
まず、今まで病院が平気だったことや薬も好きだったことを話しました。そしてミカにとって、ネガティブな記憶として残っている血液検査のこともポジティブに捉えられることに注目して話していきました。
病院の先生がかけてくれた安心の言葉、看護師さんが優しく寄り添ってくれたこと、血液検査をしたことで病気がわかり薬がもらえたこと、薬を飲んだらすぐに治ったことなど、順を追ってポジティブな印象を思い出してもらいました。
最後には必ず自分ができたこととして記憶に残せるように「あのとき怖い気持ちがあったのに、すごく頑張ってできていたね」とポジティブな言葉を添えます。
②「できるかどうかは別として~」の魔法の枕詞
病院に行った後のご褒美を考えても断固拒否でしたが、できていることにフォーカスした後でなら受け入れられる態勢が整っていました。
「できるかどうかは別として」の魔法の枕詞は、ミカの本心を聞くため、そして私はこうしてほしいということを伝えるときに使います。
「できるかどうかは別として、病院終わったら好きな絵本買いに行く?」
「できるかどうかは別として、病院終わったらケーキ食べちゃう?」
終わった後のご褒美のために頑張ってみようかなという気持ちになってくれました。
4.大切なのは繊細な子の気持ちを受容すること
「病院行かない!」に対して「病院平気だったじゃん!何で?」と追及したり、「痛いの嫌だ!」に対して「痛かったよね」と共感したり、ママは心配がゆえにすぐに反応してしまうのではないでしょうか。何とかしなければ!の気持ちが強いほど、そうなってしまうものですよね。私もその一人でした。
繊細な子の気持ちを「そうなんだねー」とフラットな気持ちで、ママが受け止めてあげると、自分で考えて気持ちを整理する時間ができます。落ち着いたタイミングで、ネガティブな記憶をポジティブ変換したり、魔法の枕詞で背中を押してみましょう。
わが家では、病院に行った後のケーキや大好きな絵本を買うことが定番になりました。頑張った後のご褒美は悪いことではありません。
「かっこよかったよ」「ママ嬉しかった」などポジティブな言葉を添えることで「できた!」のポジティブな感情と「病院へ行った」という出来事がセットで記憶されるように意識しています。
すると、次に病院に行く機会があっても「この前大丈夫だった」「あの絵本を買ってもらった時だ」と安心と自信が育ち「お薬もらいに行こうかな」とスムーズに向かえるようになりました。
執筆者:やまさき うみ
発達科学コミュニケーション