1. 園も外出も嫌がる繊細な子
我が家には、性格は全く違いますが、それぞれに繊細さを持つ三姉妹(現在、中1、小4、小1)がいます。
三女のはーちゃん(通称)は、大人しめで何に対しても慎重派。繊細なはーちゃんにとって、外の世界は刺激がいっぱい。好きなことができる安心な家にいたがることが多いです。
コミュニケーションについても、家と外での様子がずいぶん違っていました。
幼稚園は基本行き渋りでしたが、楽しい活動で背中を押したり、お迎えを早くし負担を減らしたりしながら、どうにか通わせる毎日。
園からの帰り道、「公園寄る?お買い物行っておやつ買う?」と誘っても、「おうちに帰る。」と、一目散に家に帰りたがります。
「ここ行きたい!」「あれやりたい!」がなく無気力状態になっているような気がして、心配していました。
2. せっかくの夏休みなのに無気力で外出を嫌がる
年長の夏休み、なかなか解消しない行き渋りに悩んでいたので、ほっと一安心と思いきや、はーちゃんは外出や外食を嫌がり、私が出かけるときでも「家がいいから行かない。」と留守番を希望するように。
唯一本人が行きたいと言ったのは、大好きなおばあちゃんの家だけ。なんとか連れ出した大好きなはずのプールも、少し遊んだら「もう帰ろうよ。家がいい。」と心から楽しむ感じではありませんでした。
そして始まった2学期。運動会練習が始まると行き渋りはさらに激しくなりました。休みを挟みつつ、午前中だけの登園にしたり、逆に練習がない午後だけの登園にしたりと試行錯誤しましたが、登園の支度は逃げ回って大泣きして拒否するまでに。
「幼稚園行きたくない。運動会には出ない。家がいい。ママがいい。」と表情も暗くなり、チックも出始め家でも口数が減ってきました。遊びに誘ってもメディアばかりになり、家の中ですら元気がなく無気力な様子に。
「運動会がどうこう言っている場合ではない。」
「このままでは心が壊れてしまう。」
と思いました。
上二人の選択登校の送迎と仕事の両立が難しくなり、家庭に集中しようと夏休み前に退職したこともあって、園はしばらくお休みし、元気の回復に注力することにしました。
3. 否定を大きく受け取り自信をなくしていたことに気づく
子どもたち全員が繊細さで困りごとを抱えていることから、様々な勉強をしました。
変わるべきは自分と気づき、「子どものありのままを大事にしよう」と思うようになりましたが、「とはいえ、もっと楽に外の世界にでていける方法はないものか」と思っていたところで出会った、お家で脳を育てる発達科学コミュニケーション(以下、発コミュ)。
繊細な子の子育てを教えているむらかみりりかさんの、「繊細さはギフト、繊細さを強みに」という言葉に、「繊細さを強みにできるなら教えてほしい!」という思いで、発コミュを学び始めます。
学び始め、はーちゃんが外へ向かう気持ちが湧きにくいのは脳の特性からだとわかりました。
◆肯定が目減りし否定を割増で受け取る脳の特性
繊細な子は肯定を目減りして受け取り、否定を割増で受けとってしまう傾向があります。
肯定の注目よりも否定の注目が多くなると、自信をなくし、怠惰になり、行動できなくなり、自立ができなくなります。
◆否定の注目、肯定の注目とは
否定の対象として注目し注意するのは、危険な行動だけにします。
できていないことへの指示やため息、負のオーラも否定の注目となり、自信を喪失するもとになるので要注意です。
危険なこと以外、生きていることすべてが肯定ポイント。
当たり前にしている日常のことを含め、できていることしていることはなんでも肯定ポイントとして注目し、声をかけたり笑顔でコミュニケーションすることで、肯定のシャワーを浴びせることができます。
学びを始める前から「大好き」はたくさん伝えてきたつもりで、危険なことをすることがないため、叱ることはほぼありませんでしたが、否定の注目については思い当たる節がありました。
長くなりがちなメディアタイムに「目も頭も悪くなるよ。もうやめたら?」と、嫌な顔をしてひと声。
ご飯をあ〜んで食べさせてと言われたら「自分で食べれるのにどうして自分で食べないかなぁ。」と、ぼやき。
外で抱っこと言われたら「自分で歩いてよ〜。重たいのに〜。」と、ぼやき。
できてないことがあれば「こうした方がいいよ。」「これやってね。」などと、指示。
そしてさらには、繊細三姉妹に寄り沿う物理的&精神的な多忙さから「いつまでたっても子育てが楽にならない。将来自立してやっていけるのだろうか。」という、私のネガティブな心の声。
情報を受け取るセンサーが敏感なはーちゃんは、耳から聞こえる言葉だけでなく、ネガティブな心の声もきっと敏感に察知し、肯定が追い付かないほどに否定を割増で受け取り、自信をなくし、親子の愛着の土台がグラグラだったのだなと気づきました。
4. 否定を封印し肯定に徹した母の関わり
発コミュを学び、まずは親子の愛着の土台を固めるべく、「肯定:否定=10:0」の関わりに徹しました。
特に注力したのは、以下です。
①ぼやきやネガティブな心の声を封印
否定として思い当たっていたぼやきは言わないように気を付け、子どもの前では平静を装い穏やかな顔でいるようにしました。
「も~!」と思うことがあったら、どうしてそうなったのかなと俯瞰して原因を考えたり、呼吸に集中して気持ちを落ち着けたり、可能なら状況なら子どもから離れたりしました。
ネガティブな心の声については、発コミュでたくさんの親子の変化にふれることで「この子育ての軸を信じていればきっと大丈夫」と思えるようになり、すぐに手放すことができました。
②メディアタイムは否定せず会話の種に
悪の根源のような気持ちで注目をしていたメディアタイムを、否定せず、会話を増やす種として興味を示す関わりにしました。
興味を示すことで、「好きなことをわかってくれている」という満足感や安心感を得ることができます。
視力や脳への影響を考えると長時間になることは気になったので、やめるタイミングは自分で決めてもらうなど、切替のお手伝いをしました。
③感謝の気持ちを伝える肯定
「ご飯食べてくれて嬉しい」「助かる〜」「ありがとうって言ってくれてありがとう」と、自分の気持ちを伝えました。
また、子どもが最も喜ぶ「ママのところに生まれてくれてありがとう」を伝える回数を増やしました。
これまでは、ときどき「生まれてくれてありがとう」を伝えていましたが、「自分の元に生まれてくれたからこそ嬉しいんだよ」という気持ちを伝えたいなと思い、ぼぼ毎日「ママのところに生まれてくれてありがとう」を伝えしました。
「ママのところに〜」の言葉は、毎回ふにゃにゃ〜と微笑んで抱きついてくれ、ママは自分のこと大好きなんだなと実感している顔になります。
④褒めではなく感想を伝える
こどもが描いた絵やびっくりするようなことをすると、ついつい「すごい!」「上手!」と褒めてしまいがちですが、繊細な子にとって褒めは「すごくないといけない」「上手じゃないといけない」と、逆に自信ややる気を失うことへつながることも。
反射的に言っていた「すごい!」「上手!」ではなく、「この色使い工夫してるね~」「はーちゃんが描いた絵、ママ好きだな~」と感想を伝えるようにしました。
⑤なんでもないことを実況中継
寝て起きただけでも、日常的にしていることにも、「起きたね」「手を洗ってるね」「くつろいでるね」「パンツはいたね」と実況中継しました。
実況中継は、ママが見てくれているなという安心感に繋がります。
はーちゃんはあまりしつこいと嫌がるので、言っても嫌がらないものについて中継しました。
◆子どもの変化
否定的な言葉をかけながらメディアを無理やりやめさせていたときは、大泣きしてしばらく泣き止まない癇癪になっていましたが、肯定的な関わりだと、自分で決めたタイミングですんなりやめることができるようになりました。
そして、理解を得られている満足感からか、メディアで見たものを細かく描写して描いたり、聴いた曲をピアノで弾いてみたり、メディア以外の好きな活動への集中力が増し、得意がぐんと伸びるおまけがついてきました。
「生きてるだけでハナマル!否定の注目や声かけなし!肯定シャワーをあびせる関わり」を1ヶ月ほど続けると、無気力状態から脱して表情が明るくなり、誘った外出や外食を楽しめるように。
「かぁか、はーちゃんのこと好きなん?」
「絵描いても上手くないし。」
という発言が、3ヶ月後には
「かぁか、はーちゃんたちのこと大好きだからねぇ〜。」
「いい感じに描けたでしょ。」
と自信がついた発言に変わり、「〇〇に行きたい!」と自分から言うようになりました。
さらには、ひょうきんでおしゃべりになり、家族や姉のお友達からは「はーちゃん明るくなったよね。めっちゃしゃべるようになってる!」と言われるように。
家でよくお尻をふりふりして笑わせてくるようになったのですが、姉がたまに通っている支援センターへ一緒に迎えに行った際、先生に「ハロ〜」とお尻をふりふりする姿を見たときは驚愕でした。
これまでは、先生が挨拶しても顔をうつむけて挨拶することはなかったので、「親子のコミュニケーションでこんなに変わるのか。発コミュを始めてよかったな」と思うと同時に、母って責任重大だなと感じました。
また、就学前の言葉の検査の際は、初めて会った先生と流暢にたくさんおしゃべりし、変化に驚いたというエピソードも。
5. どんな環境でも自分らしくいられるように
発コミュを学び、子どもの心と脳の現在地がわかり、親子の愛着の土台が整ったこれからがスタート。
今やっと本来の姿に戻ったところなんだなと思っています。
はーちゃんが笑顔で自分らしくいられるよう、どんな環境でも本来のひょうきんでおしゃべりな自然体の姿でいられるよう、外の世界でいろんなことに挑戦したいなと思えるよう、心と脳を育てていきたいです。
執筆者:たにぐちいろは
発達科学コミュニケーション