1.些細なことで泣き叫ぶ繊細な子ども
「え、また⁉ さっきも泣き叫んでたのに…」
兄に家のドアを開けられて泣き叫ぶ、お風呂に入る順番が気に入らなくて激しく地団駄、公園から帰りたくなくて床に寝転んで手足をバタバタ…。
わが家の年少の繊細な息子(通称スカイくん)は、そんなふうに1日に何度も癇癪を起こしていました。
「寄り添えばいい、共感すればいい」とよく言われるけど、どれだけ優しく声をかけても、寄り添ってもスカイくんの泣き叫ぶ声はヒートアップするばかりでした。
「どうしたらいいの?」「もう、疲れた…」
そんなふうに毎日悩んでいました。
2.癇癪が起きる理由と共感が逆効果な理由
ここでまず、癇癪(かんしゃく)とは、泣き叫んだり、物を投げたり、手足をばたつかせるなど、感情がバクハツし、感情を調節することが難しい状況のことです。
この時、脳の中では「危険アラーム」が鳴り続けている状態です。
脳には、偏桃体(へんとうたい)という、危険を感じたときに反応する部分があります。
イヤなことや思い通りにならないことがあると、「危険だ!」と判断し、「危険アラーム」を鳴らします。
その結果、子どもはパニックになって泣き叫んだり大暴れするのです。
特に、幼児さんは、自分の感情調節や自分の気持ちを言葉で伝える力が成長中なので、思い通りにいかないとすぐに泣き叫ぶ、床に寝転がって手足をばたつかせる、地団太を踏んだりして、自分の感情を表現するのです。
また、繊細な子の脳は、自分の感情調節は苦手ですが、他人の感情にはとっても敏感に反応します。
すると、思い通りにならずに癇癪を起こしている時に、「イヤだったんだね」と寄り添ったり共感したりすると、「そうだ!ぼくはやっぱりこれがイヤなんだ!」とネガティブな感情が増してしまい、癇癪がヒートアップしてしまうのです。
3.好ましくない行動には注目せず、好ましい行動に注目する
では、わが家の1時間以上泣き叫ぶスカイくんの癇癪がゼロになった、正しい癇癪対応を紹介しますね。
それは、「好ましくない行動には注目せず、好ましい行動にのみ注目する」という対応です。
まず、自分の気持ちを癇癪でぶつけてきた時には注目をしません。
「1時間も泣き叫ぶのに、無視して大丈夫?」と思いますよね?
私も同じように、最初は「見て見ぬふりをするなんて、かわいそう…」と不安でした。
しかし、実際にやってみると、驚くほどスムーズに癇癪が落ち着いていったのです。
ある日、スカイくんが「ぼくがドア開けたかったのに!」と泣き叫び始めました。
「そうだね、スカイくんが開けたかったんだよね」と声をかけそうになりましたが、ぐっとこらえて「見て見ぬふり」をしました。
視線を合わせず、声をかけず、ため息や怒りのオーラを出さないように気を付けました。
代わりに、掃除機をかけながら、「どんな行動になったら肯定しようかな」と考えながら待ちました。
すると、スカイくんは最初はさらに大きな声で泣いていたのですが、少しずつ声のトーンが下がり、「ママ~」と駆けよって来ました。
その瞬間、私はすぐに穏やかな表情で「なぁに?」と穏やかな声で答えました。「ドアあけれなくて悲しかったのかな?」と聞くと「うん」と教えてくれました。
私はすかさず、「そっか、ドアあけたかったんだね。教えてくれてありがとう」と伝えました。
この対応を繰り返すうちに、スカイくんは「泣いてもママは反応しない。だけど、言葉で伝えると見てくれる!」と気付いたのでした。
1時間以上泣き叫んでいた癇癪は、だんだんと短くなり、1ヶ月後には癇癪を起すことはなくなっていたのです。
繊細な子の癇癪は、「好ましくない行動には注目せず、好ましい行動に注目する」という脳のしくみに合った対応に変えると落ち着きます。
「見て見ぬふり」をすることで、ママの意識が別のところに向き、自然とラクに対応できるようになります。
癇癪が始まったら、雑誌を読んだり、トイレに行ったり、音楽を聴いたり、掃除をしたり、違う部屋に行ったり、スマホで天気予報を調べたりするなどで、意識をそらしてみてくださいね。
執筆者:まるやま あやか
(発達科学コミュニケーショントレーナー)