1.「大丈夫だよ」では初めての習い事に踏み出せない高学年繊細な子
わが家には、高学年繊細な息子(通称:優士)がいます。初めての習い事に「行ってみたい!」と目を輝かせて話していたのに、当日になると、「無理、やっぱり行かない」と話してしまい困っていました。
私は戸惑いながらも、「大丈夫だよ」「行ったら楽しめるよ」と声をかけていました。優士は、その言葉に動くどころか、「絶対に行かないから!」と、ますます頑なにさせてしまったのです。
「あんなに楽しみにしてたのになんで?」と疑問しかありませんでした。
2.不安を感じやすい高学年繊細な子の脳のクセ
実は、高学年繊細なお子さんの脳は、初めてのことや、見通しが立たないことに対して、強いストレスを感じます。習い事のような、”初めての場所に行く”というだけで、脳の中が不安や心配事でいっぱいになるです。
「どんな所なんだろう」
「うまくできるかな」
「失敗したらどうしよう」
「恥ずかしい思いはしたくないな」
こうした不安や心配事は次々連鎖し、脳の中はネガティブな感情で埋め尽くされてしまいます。そして、不安や心配事で支配された脳では、「危ないからやめておこう」と判断し、行動をピタッと止めてしまうのです。
そんな優士に、「大丈夫だよ」「平気だよ」と声をかけていました。しかしそれは、「分かってもらえない」と感じさせ、不安をさらに大きくさせ、頑なに動かない状態を作っていたのでした。
3.高学年繊細な子の心のブレーキを外すお母さんの声かけ
このままでは、何に対しても「ムリ!できない!」で終わってしまうと感じた私は、繊細な子の脳に合った背中の押し方に変えていくことにしました。
①アドバイスを止める
私は、励ますことや正論を伝えることをすぐにやめました。その代わりに、「そう思ってるんだね」と、優士の言葉に耳を傾けオウム返しをすることを始めたのです。
すると、「だってさ、年下ばっかりだったら、つまんなさそうじゃん」と、習い事に対する本音を話してくれるようになりました。
不安を感じやすい高学年繊細なお子さんにとって、自分の気持ちを言葉にすること自体が、不安を整理する力に繋がります。お母さんは、「今すぐ解決しなくちゃ!」と焦らず、お子さんが安心して話せる空気を作るだけで、自分の気持ちに気付けるようになっていくのです。
②挑戦する姿に注目する
優士の気持ちを吐き出した後には、挑戦している姿勢そのものに、肯定の声かけをしました。
「自分から”やってみたい”って言ったの、すごくカッコ良かったよ」
「家族の中で誰もやってない習い事に挑戦するなんて、勇気あるよね」
大切なのは、できたかどうかではなく、新しいことに挑戦しようと思う気持ちです。そのため、「やってみたい」と思う気持ちに注目し声をかけたのです。結果よりも、挑戦する姿勢に注目された経験が、繊細な子の心の土台を強くしていくのです。
③一緒に安心できる作戦を考える
優士の気持ちが前向きになってくると、「どうしようかな。やっぱ行ってみようかな」とつぶやき始めました。私はすぐに、安心できる作戦を立てることにしました。
「お母さんは建物の外で待ってるね」
「途中で帰りたくなったら、すぐに教えてくれていいよ」
さらに、長男も「一緒に行こうか?」と声をかけてくれて、優士の中で、「1人じゃない」という安心感が生まれたのです。そして、「やっぱり行ってみる!」と自分で決めて、初めての習い事に一歩踏み出せたのでした。
4.初めての習い事で「思ったより楽しかった!」に出会えた高学年繊細な子
私は、優士の安心作戦の通り、外で待機しました。優士は長男と一緒に習い事の建物へ入っていきました。1時間後、満面の笑みで走ってきた優士は、「思ったより楽しかった!もうちょっとやってみようかな」と話してくれました。
不安を感じやすい高学年繊細な子にとって、”初めて”はとてもエネルギーのいる経験です。安心の準備とママの関わり方次第で、「行けた!」「楽しかった!」という成功体験に変えていくことができるのです。
参考にしてみてくださいね。
執筆者:増山陽香
発達科学コミュニケーショントレーナー