1.個別相談で伝えられたこと
繊細な娘、こはるちゃん(仮名)は年少、年中、年長と行きしぶりを繰り返す日々。励ましたり、共感したり、お休みしたり自分でできることをやってみるものの行きしぶりは悪化の一途をたどっていきました。
そんな中、「おうちで脳を育てる」発達科学コミュニケーション(以下発コミュ)の繊細な子に特化したトレーナーである、むらかみりりかさんに出会いました。
個別相談でりりかさんから娘の特徴を伝えられました。その中でも印象に残っているのが「こはるちゃんは情報を受け取る力(インプット)は強いが、その刺激を処理する力(アウトプット)が追いついていない」という事でした。
インプット?アウトプット?なんとなく理解できるものの、どういう事だろう。という思いが始まりでした。
2.繊細な子の脳のしくみ
親子のコミュニケーションを変えることで、繊細な子は、繊細さを強みに変えることができるという事を知り、「何か変わるかもしれない!」と思い、年長の4月に発コミュを学び始めました。
発コミュで、インプットとアウトプットについて学びを深めました。
繊細な子は、まわりの情報をキャッチするアンテナ(インプット)がとても高い一方で、それを整理したり処理したりする力(アウトプット)がまだ育っていないため、頭の中にどんどんたまってしまいます。
その結果、知らないうちに心が疲れてしまったり、不安やイライラとして表に出てくることがあること。
幼稚園という場所は、子どもにとって毎日たくさんの刺激や感情が飛び交う場です。特に繊細な子は、先生の声のトーンやちょっとした表情の変化、友達の視線やその場の空気の流れなど目には見えにくい「気配」や「雰囲気」まで感じとります。そしてそれは、言葉にならない不安や緊張として心の中にたまっていくことがあります。
「怒られているのかな?」「私のことかな?」「どうしたらいいんだろう」そんなふうに自分なりに考えて感じ取りながらもそれを誰かに伝えたり、言葉にして整理することが難しいのです。
だからこそ「気持ちを整理して外に出す力=アウトプットの力」が大切になります。
そこで私は、日常生活の中でこのアウトプットの力を育てられないかと考えました。
3.絵本を通して自分の気持ちを伝える練習をする
最初はどうして集団生活の中では気持ちを伝えられないのか、なんとなくわかるもののやっぱり不思議に感じていました。
学びを深めていく中で、わかったのが「安心できるかどうか」でした。
娘にとって家は安心して話せる場所。幼稚園は、音の動き、人の気配などたくさんの刺激や情報があふれていて、娘にとって落ち着ける環境ではなかったのです。
だから私は安心できる家の中で、自分の気持ちや考えを言葉にする練習を始めることにしました。
年長の10月、絵本を毎日読み、娘と色々な会話を交わすことを始めました。
たとえば雪国の絵本を読んだ時は、「どの季節が好き?どうしてその季節が好き?」「お母さんはこの場面がおもしろかったな、こはるちゃんはどの場面がおもしろかった?」「冬にスキーに挑戦した時のこと覚えてる?」
こんなふうに、絵本をきっかけにしたやりとりを通して、娘は「理解して考えて自分の言葉で伝える」練習を重ねていきました。
絵本を読む時は、娘を膝の上に載せて読んでいたので、スキンシップで安心感も加わります。
毎日幼稚園で借りてきた絵本を数冊読みながら、少しずつ「気持ちを伝える力」を育んでいきました。
4.気持ちを言葉で伝えることで広がった娘の世界
毎日少しずつ絵本で会話を重ねていくうちに、娘の中に「気持ちを言葉にすること」が育ってきたように感じました。安心できる家の中で育ててきたその力を、次第に幼稚園という集団の中でも発揮できるように。
はじめに変化が見られたのは先生との関わりでした。
「今日、先生に給食一緒に食べようって伝えたんだよ」と教えてくれました。
「家庭の中で気持ちを言葉で話すこと」が、園生活の中でも少しずつできるように。そこから娘は、特定のお友達との関係を深め、最初は1対1の関わりだけでしたが、安心できる友達ができたことで会話や遊びの幅が広がっていきました。
少しずつ、自分の気持ちを伝えたり、相手の気持ちを聞いたりする経験が増えていったのです。
そして卒園の頃には、グループで遊ぶ姿も見られるようになりました。
娘の中に「伝えれば、わかってもらえる」「話してみると、楽しいことがある」という実感が少しずつ積み重なっていったのだと思います。
これからも娘のペースを大切にしながら「気持ちを言葉にする力」を伸ばせるようにサポートしていきたいです。
執筆者:葉月 まき
発達科学コミュニケーション