1.繊細な子が負けるとすぐ泣く…兄弟関係が崩れた私の体験
負けると、決まって泣き出して怒る息子を前に、私はいつも途方に暮れていました。
繊細な息子、エイジくん(仮名)は、ちょっとしたカードゲームやじゃんけん、大きい勝負も小さい勝負も関係なく、負けると必ず大声で泣いてしまいます。
そのため、家族で遊ぶときは、みんながエイジくんが勝つように気を遣うようになりました。
「ゲームだから負けることもあるよ!」と叱ったこともあります。
「頑張ったね」と慰めたこともあります。
けれど、どんな声かけも息子の心には届かないように感じていました。
何度繰り返しても同じ場面が訪れ、そのたびにため息が出て、私は次第に勝負がつくような遊びを避けるようになっていったのです。
「このままずっと、負けるたびに泣いてしまうのかな」
「周りの子のように気持ちを切り替えられる日は来るんだろうか」
そんな不安が、私の中で少しずつ大きくなっていったのです。
2.「すぐに泣く繊細な子」にイライラしていた私の気づき
「負けるたびに泣く息子を見て、私は心のどこかで『負けたくらいで泣くのは恥ずかしい』『早く克服させなきゃいけない』と思っていました。
しかし、何度も同じ光景を繰り返すうちに、ふと自分に問いかけるようになりました。
「どうしてこんなに泣くんだろう。何をそんなに悔しいと感じているんだろう」と。
そんなとき、解決方法はないか調べる中で、繊細な子の心と脳を強くする親子の関わり方を専門に教えているむらかみりりかさんと出会い、発達科学コミュニケーション(発コミュ)を学びを始めていました。
彼女の言葉に触れるうちに、私の中で何かが変わり始めました。
「泣くのは心が弱いからじゃない。繊細な子は負けることを“全否定”だと感じてしまうほど感受性が強いんだ」
そう知ったとき、これまでの見方が大きく揺らいだのです。
もっとエイジ君の気持ちを理解したいと思い、むらかみりりかさんのもとで発達科学コミュニケーションを学ぶことにしました。
そこで初めて、繊細な子には特有の感じ方や受け止め方があることを知り、疑問に思っていたことには理由があることを学びました。
そして、新しい視点を持つことができたのです。
3.繊細な子がすぐに泣くとき、親ができる声かけと関わり方
①「悔しかったんだね」で変わった繊細な子の泣き方
発達科学コミュニケーションを学び始めてから、私はまず「気持ちを認める声かけ」を意識しました。
それまでは、「泣かないの!」や「大丈夫、大したことないよ」と、泣くことを否定するような声かけをしてしまっていたのです。
しかし、今は、負けて泣いているときには、
「悔しかったんだね」「勝ちたかったんだね」
と、息子の気持ちを代弁する言葉をかけるようになりました。
最初のうちは大きな変化は見られませんでしたが、少しずつ泣く時間が短くなっていきました。
以前なら大泣きしてその場を離れていたのに、「もう一回やってもいい?」と言える日が出てきたのです。
そして何より、気持ちを代弁される経験を重ねることで、息子自身が「悔しい」と言葉にできるようになりました。
それが、「泣かなくても大丈夫」と思える自信につながったのだと思います。
②すぐに泣く弟との関係が変わった、兄の心の変化
そんなお兄ちゃんも、最近ではまた一緒に遊ぶようになりました。
「負けても泣かない日がある」という経験を重ねることで、お兄ちゃんも少しずつエイジくんの変化を感じ取ってくれたのかもしれません。
以前は「また泣くでしょ」と言って遊ぶのを避けていたお兄ちゃんが、今では「悔しいよね〜」と気持ちをわかってくれるような声かけをしてくれるようになったのです。
「もう一回勝負する?」と誘う姿も見られ、兄弟の間にあった勝負前のピリピリした空気が少しずつ和らいでいきました。
それはきっと、私がエイジくんの気持ちを代弁したことで、言葉で伝えられるようになり、家族の中の空気が変わっていったからだと思います。
「弟をどう扱っていいか分からなかった」お兄ちゃんも、安心して関わることができるようになったのかもしれません。
③「泣かせない」より「また挑戦できる」子育てへ繊細な子がすぐ泣く理由を知り、行動できる子へ導く関わり
以前の私は、「また泣いてる…」「なんでこんなに負けず嫌いなの?」と戸惑いと苛立ちの気持ちでいっぱいでした。
しかし、発達科学コミュニケーションを学び、息子の姿を見つめ直す中で、あることに気づいたのです。
「泣くことは、感情をうまく言葉にできないサインなんだ」
「自信が持てないのは、親との関わりの中で、愛着や安心感がまだ足りていないだけなんだ」
そう思えたことで、私は「どうしてこんなに泣くの?」ではなく、 「今、何を感じているのかな?」と考えられるようになりました。
息子の感情を否定せず、まずはまるごとお預かりすること。
そして、小さなできた!を一緒に喜ぶことで、少しずつ自信を積み重ねていきました。
そう思えるようになった今、親としての関わり方も、私自身の子育ての軸も、ずいぶん変わってきたと感じています。
4.「泣かせない」より繊細な子が「また挑戦できる」子育てへ
「負けると泣く」
そんな息子の姿に、以前の私は戸惑い、どうしたらいいのか悩んでばかりでした。
でも今は、泣くことを否定せず、「どうしたらまた挑戦できるか」を一緒に考える関わりへと変わってきました。
負けたときの涙には、悔しさやプライド、努力の証が詰まっている。
だからこそ、その気持ちも理解しながら、「もう一度やってみよう」と思える声かけることで、息子の中にも小さな変化が生まれてきたように感じています。
これから先、きっといろいろなスポーツや遊びの中で、また勝ち負けに直面することがあるでしょう。
でもそのときには、勝つことだけにこだわるのではなく、勝負を楽しみ、悔しさも力に変えて、また挑戦できる子に育ってほしいと思っています。
同じように悩んでいるお母さんたちにも「泣いても大丈夫。その先に、ちゃんと成長が待っている」 そんな未来の姿を少しでもイメージしてもらえたら嬉しいです。
執筆者:ますながゆみこ
発達科学コミュニケーション