1.新しい環境でのつまづき
我が家の一人娘つぼみ(8歳)は、新しい環境が苦手で不安が強い繊細な子です。
2年生の7月。
今まで保育園や学校に「行きたくない」と言ったことがなかったつぼみが、お友達トラブルをきっかけに、突然学校に行くと腹痛を訴えるようになり、不登校になってしまいました。
病院に行っても、学校に相談しても、はっきりとした答えはもらえず、どうしていいか分からないまま時間だけが過ぎていく日々。
8月。
不安と焦りの中で、眠れぬ夜が続き、「何かできることはないか」と必死に情報を探していた私に、おうちで脳を育てる「発達科学コミュニケーション」(以下、発コミュ)との出会いが訪れました。
そこで学んだ関わりを少しずつ積み重ねていく中で、つぼみは笑顔と元気を取り戻し、2年生の3学期には、一人で全ての授業を受けられるまでに成長していたのです。
春休みには
「3年生楽しみ!!」
と期待に胸を膨らませていたつぼみ。
もう大丈夫。
そんな娘を見て私の中で不安は無くなっていました。
2.大好きな音楽の授業までも…
3年生になり、始めは元気に登校していたつぼみ。
次第に学校から帰ってくると、元気がなくなり、朝も憂鬱そうになっていきました。
私の中に去年の夏の娘の姿が蘇ってきました。
新しい友達、新しい先生、そして新しい教室。
環境が大きく変わった新年度は、期待とは裏腹に、つぼみにとって予想以上に心の負担となっていたのです。
だんだん授業に出れなくなり、別室に行くことが増えていきました。
それでもなんとか参加できていた授業があります。
大好きな音楽です。
しかし、そんな音楽の授業でさえもストレスから受けられなくなっていったのです。
もう一度、発コミュの基本に戻り、肯定を徹底し、ストレスでいっぱいになっている脳を癒すことで、次第に元気を取り戻してきたつぼみは、授業復帰に向けて大好きな音楽の授業からトライすることにしました。
しかし、3年生からはリコーダーが始まります。
つぼみは授業に出ていなかったので、リコーダーを吹くことができません。
不安が強い繊細な子にとって、それは一歩踏み出すにはとても高い壁のように感じられました。
3.安心できるおうちから小さな一歩を
繊細な子の脳は、見通しが立たないことや初めてのことに大きな不安を感じやすい特性があります。
リコーダーという新しい楽器に対する「ちゃんと吹けるのかな」という不安だけでなく、「みんなは授業で練習しているのに、自分はできていない」という焦りや劣等感も重なって、つぼみの心には大きな負担がのしかかっていました。
久しぶりに授業に参加するだけでも勇気がいるのに、さらに「やったことのないことを、みんなと一緒にやる」という不安は、つぼみにとってはとても大きな壁です。
このまま無理に授業に出ても、「大丈夫だった」という自信につながらないどころか、「やっぱりできなかった」という苦い記憶になってしまうかもしれない。
そうなってしまうと、次に繋がる挑戦にはなりません。
そして不安から心のブレーキを踏んでしまうかもしれない。
そう思うと、私は何とかしてつぼみの心の負担を少しでも軽くしたいと思いました。
それならおうちで私と一緒に、練習してみよう!
おうちという安心できる場所で、安心できるママと一緒に楽しくリコーダーを吹く練習ができたら、「自分は吹ける!」という小さな自信がつき、きっと授業にも安心して参加できるはず。
つぼみの「できた!」を増やしてあげたい。
そんな思いで、私はおうちでリコーダー練習を始めることにしたのです。
4.楽しいが一番の魔法!親子でリコーダーを楽しむコツ
まずは、リコーダーに興味を持ってもらうことから始めることにしました。
私が楽しそうにリコーダーを吹いてみせると、つぼみは目を輝かせて「何なに!?」と興味津々で近づいてきました。
そして知っている曲を楽しそうに演奏してみせると、
「つぼみも吹きたい!」
と、自分からやってみたいと言ってくれたのです。
大人が真剣な顔で「さあ、練習するよ!」と言っても、子どもの心はなかなか動きません。
でも、ママが楽しそうに吹いている姿を見せるだけで、
「なにそれ!やってみたい!」と子どもの気持ちは自然と動き出します。
親が楽しんでいる姿を見せることは、子どもにとっては最高の「やってみたい!」のきっかけ。
だからこそ、教える前にまずは
「楽しそうだな!」と思わせる空気を作ることが大事なのです。
しかし、初めて吹いたリコーダー。
思っていたような音はならずに、ピーッと音がひっくり返ってしまいました。
落ち込むつぼみ…。
でも、私はすぐに上手に吹けることを求めようとは思いませんでした。
上手にできるかどうかよりも、「楽しかった」という気持ちを残すことが何より大事だと思ったのです。
「お!音が鳴ったね!初めてなのにしっかりした音鳴ってるよ!」
挑戦できたことを肯定すると、つぼみは少しずつ表情をほころばせました
できる・できないではなく、「やってみたことが素晴らしいんだよ」と伝えることで、つぼみの中にほんの少し、自信の種が芽生えたように見えました。
しかし耳がいいつぼみは、クリアな音が鳴らないことに気付いていました。
「お母さんみたいな音が出ない…」
繊細な子は小さな違いにも敏感で、それを気にする気持ちが強いのです。
「音の違いが分かるの!?それならすぐに上達するよ!」
「秘密のトレーニングがあるんだけど知りたい?」
声を少しひそめて、秘密のお話みたいにしてみると、つぼみの目がぱっと輝きました。
「知りたい!」
ただ、やり方を教えるのではなく、子どもが「何なに!?知りたい!」と興味を持つ声かけをすることで、聞く耳が開きスッと行動に移すことができます。
「ストローあるかな?」
すぐにキッチンからストローを持ってきたつぼみ。
「ストローで吹くみたいに息を小さくまとめて吹くと綺麗な音が出るよ」
まずはストローで息を吐く練習。
遊び感覚で楽しそうです。
「そうそう!!いいね!その感覚だよ〜」
そしてリコーダーで吹いてみると、さっきよりもまとまった綺麗な音が!?
自分でも違いがわかったつぼみは嬉しそう。
二人でハイタッチ!
基本の音が出せるようになったら、簡単な練習曲を一緒に吹いてみることにしました。
私はフルートを吹いていたこともあり、リコーダーとフルートのセッションです!
一人で吹くのとは違い、誰かと一緒に音色を奏でる感覚が、耳のいいつぼみにはとても心地良かったようで
「もう1回!」
と何度もせがんできました。
どんどん上達していったつぼみ。
「リコーダー楽しい!」
と笑顔で練習を終えることができました。
そして不安が安心に変わり、音楽の授業にも参加できたのです。
参加した後も積極的に家で練習するようになり、
「あ〜リコーダー吹きたくなってきた」
と言うほどに。
今では音楽の授業を楽しみにするまでになりました。
5.繊細な子は安心の中で自信を育てる
新しい環境が、繊細な子にとってこんなにもストレスを与えるものだとは思いませんでした。
ですが、そんなときこそ私まで一緒に不安になってはいけない。
焦らず、どんと構えていることが大事なんだと気づきました。
私の落ち着いた態度が、つぼみにとって安心の土台になるからです。
授業に不安がある場合は、安心できるおうちで安心できるママと楽しく練習することで、新たに踏み出す一歩の大きな力になると感じました。
小さな「やってみようかな」の一歩は、決して小さなものではなくて、その後の大きな自信へとつながる一歩だと思います。
これからも娘の小さな変化を見逃さずに、一緒に楽しみながら挑戦していきたいです。
執筆者:なかたに のぞみ
発達科学コミュニケーション