1.不登校回復期の高学年繊細な子
わが家の繊細な息子(通称:優士・小5)は、些細なお友達トラブルをきっかけに学校へ行けなくなりました。学校をお休みした当初は、1日中リビングで横になって過ごす日々。外にも出られませんでした。
そんな中、優士に心と脳に安心を与える関わり方を始めると、”食欲が戻る、犬の散歩に出掛けられる、ぐっすり眠れる、癇癪が激減する、感覚過敏が和らぐ”など日常生活から元気な姿が増えていきました。
2.不登校回復期に脳を育てると行動力が伸びる理由
こんな姿を目の前にしたら”もう学校に行けるかな?”と思ってしまいませんか?ですが、この時期に焦って復学チャレンジや勉強の遅れを勉強遅れを取り戻そうとすると、せっかく回復した心と脳にまたストレスを与え、エネルギーを消耗してしまうのです。
だからこそ、この時期は「脳を育てること」が、今後の行動力をぐんと伸ばす近道になるのです。
じゃあどうしたら、脳は育つのでしょうか?
実は、脳は、『行動』をすることで刺激を受け取り発達していきます!特に私が優士と一緒にお家で実践したのは、脳を育てる2種類の運動でした。
・粗大運動:手足などを大きく動かす
・微細運動:手先、目、口など細かく使う
これらを日常生活の中で自然に取り入れることで、繊細な子の脳は安心を貯めたまま発達し、次の行動へ繋がる力が備わっていくのです。
3.不登校回復期にある繊細な子のお家行動力の伸ばし方
ただし、ここで大切なのは「運動をやらせること」ではありません。あくまで本人が「やってみたい!」と思えるように誘うのがポイント!
そこで私は、優士の”好き”や”好奇心”をきっかけに、お家の中で行動力を伸ばしていきました。ここからは、実際の様子をご紹介します。
①「食べたい!」から始まるお料理のお手伝い
お店のロングポテトにはまっていた優士。
「作り方見つけたから、お母さん作って~」の一言に、これはチャンス!と感じて「じゃあレシピ読んで教えてね~」と、お手伝いに誘ったのです。
始めはレシピを読む係りだった優士も、次第に「皮むきやってみる!」と身を乗り出し、動画を見ながら、前のめりで料理を作り始めていきました。
料理の中には、包丁で切る・皮をむく・混ぜるといった微細運動がたくさんあります。さらに、材料を取りに行く・鍋を運ぶなどの粗大運動も自然に組み合わさります。
「こうした方がやりやすい」と、自分なりにアレンジも加えながら、切る・混ぜる・考える・試す・話すなど料理を通じて自然に行動力が引き出され、脳を育てる刺激になっていたのです。
作り終えた後には、「次はもっと細く切ってみようかな」と新たなアイディアも生まれ、満足した表情と達成感が、「次もやってみよう!」に繋がっていきました。
②「道具好き」から広がるお掃除の工夫
優士は、掃除そのものは苦手なのですが、なぜか掃除道具には興味関心がありました。
私が「大掃除で窓掃除やり忘れちゃったなー」とつぶやいただけで、「あの水鉄砲みたいなやつでしょ?!オレやる!」と、目を輝かせたのです。感覚的には遊びに近い状態でしたが、五感を働かせ、
「洗剤使った方がきれいなるかも」
「やっぱり二階まで届かないな」
「めっちゃ冷たい!」
感じたことをどんどん言葉にする姿もありました。窓ふきや床拭きでは身体全体を使う粗大運動、スポンジを細かく動かす・洗剤を調整するといった微細運動が自然に含まれています。好奇心の赴くまま取り組むうちに、脳への刺激も広がっていったのです。
さらに、掃除に対する好奇心は広がり、「いろんなスポンジ見てみたい!」と自分から買い物にも出掛けるようになりました。
お店では、パッケージの説明を読んで選び、家で実際に使い、「これ、書いてた通り、焦げたの取れたよ!」と満足げに報告。その後も、車洗い、玄関掃除、床拭きなど、自分で工夫しながらお手伝いを続けていきました。
優士のように、好きなことや好奇心をきっかけに、粗大運動と微細運動を自然に取り入れながら身体を動かし、言葉を使い、成功体験の積み重ねになりました。優士にとって「できた!」の自信となり、次の行動を踏み出す原動力になっていました。
4.不登校回復期の行動力は「安心のお家時間」から育つ
こうして、お家の中で小さな成功体験を重ねていくうちに、優士の中には「もっと工夫してみよう」「次はこうしてみたい」という挑戦する力が育ってきました。
さらに、優士の背中を押してくれたのは家族の言葉。
「優士のおかげで家がきれいになったよ」
「今日はここ、気持ちがいいね」
「ありがとう、助かったよ、働き者だね」
こうした声掛けが、「役に立った」という満足感に繋がり、行動のモチベーションを高めてくれたのです。
安心できるお家時間の中で、”行動する”、”認めてもらえる”という経験を積み重ねることが、不登校回復期の繊細な子にとって、外の世界へ一歩踏み出すための土台になっていきます。お家時間を活用して、繊細な子の脳育て楽しんでみてくださいね。
執筆者:増山陽香
発達科学コミュニケーショントレーナー