周りの環境に過剰に反応したり、少しの出来事で傷ついてしまったり。登校しぶりのあるお子さんの特性として、お子さんの繊細さを感じている親御さんはいませんか?そのようなお子さんに当てはまる可能性の高い『HSC』の特性と不登校・登校しぶりの原因についてご紹介します。
1.HSCとは?
HSCとは、Highiy Sensitive Childの略称で、「人一倍敏感な子」という意味です。
HSCは病気ではなく、その子が持っている気質です。
そのため、親御さんの育て方や関わり方が悪かったといったような、子育ての仕方に起因するものではなく、HSCの気質自体ネガティブなものでもありません。
HSCの気質は人口の20%程度、つまり5人に1人が持ち合わせていると言われています。
そのため、決して珍しいものではなく、学校のクラスに数人程度いる割合と考えられています。
HSCというの言葉の生みの親である、アメリカの心理学者エレイン・アーロン博士によると、Is Your Child Highly Sensitive?のページに掲載されている23の質問に親御さんが回答することで、お子さんがHSCであるかを判断できるとしています。
13個以上当てはまった場合は、HSCであるとされていますが、該当する個数が少ない場合も、強く当てはまる質問がある場合は、HSCである可能性が高いとされています。
(セルフチェックテストは著作権の関係上、実際の設問を掲載することができないため、気になる方は上記のリンクからセルフチェックをしてみてくださいね)
エレイン・アーロン博士のホームページ(日本語版)【リンク】
チェックの結果、お子さんがHSCに当てはまったからと言って心配することはありません。
ですが、その気質が原因となり、不登校や登校しぶりで悩まれている場合は、HSCのお子さんにあった対応が効果的です。
2.登校しぶりの原因はHSCかも?!
HSCの子どもにとって学校は、苦手なものが多くある環境でもあります。
たとえば、自分ではなくクラスメイトが先生に怒られた場合、自分自身が怒られたように感じてしまい、教室に行きづらくなることもあります。
また、友達から何気なく言われた言葉に深く傷つき、その後の学校生活に集中できなくなってしまうこともあります。
そもそも、人混みや大きな音が苦手なHSCの子どもにとって、大勢の子どもが集まる学校で過ごすこと自体が大変なことです。
そのため、はじめのうちは我慢をして登校していても、我慢が限界を迎えて
「学校に行きたくない」
と言ったり、登校しようとすると
「おなかが痛い」
と体調不良を訴えるなどの登校しぶりがあらわれたりします。
3.学校が苦手な息子もHSCでした
わが家には不安が強く、学校が苦手な小3の息子がいます。
小2の春に登校しぶりがはじまり、1人では学校へ行けなくなったことから、登校から下校まで終日母子登校を続けています。
そんな息子に前述のセルフチェック診断をしたところ、該当する個数が17個。
そのうち、強く該当する質問が7個ありました。
息子への対応を変え、息子が自分の気持ちや登校しぶりの原因を話してくれるようになった今、振り返ると、納得する要素が多くあります。
たとえば、
「教室の匂いが嫌だ」
「音楽室はみんなで好き勝手に演奏しているときの音の大きさが耐えられない」
「全校集会は人が多すぎるから無理」
「大きい声を出す先生の授業がつらい」など。
どれもHSCの気質が原因と思われる、学校が苦手な原因だと考えられます。
4.HSCの子どもへの対応ポイント
◆絶対的な安心感を与える
HSCの子どもはあらゆることに敏感なため、常にたくさんの不安を抱えています。
そのため、学校などの集団生活の中ではたくさんの刺激を受けて疲れてしまったり、不安な気持ちで出来ないことがあると、自己肯定感が低くなることがあります。
また、先生や友だちの何気ない一言に傷つくこともあります。
家庭で親御さんができることは、不安を強く感じる子どもに対して、いつも味方であることを伝え、安心して過ごせる環境をつくってあげることです。
絶対的な安心感が得られることで、学校生活の不安を和らげることができます。
◆HSCの特性を認める
HSCの子どもはものごとを深く考える特性があり、様々な疑問を持ちます。
そのため、親御さんを質問攻めにすることもあるでしょう。
細かい質問が続くと親御さんも面倒になってしまうかもしれませんが、その特性を認めてあげることが大切です。
「よくそこに気づいたね」
「そういう考えもあるよね」
「そこまで考えることができたんだね」
と、お子さんの質問に根気強く付き合い、認めてあげる返事をすることで、お子さんに自信もつきます。
お子さんの特性を認め、自己肯定感を高めることで、自分の得意をさらに伸ばしたり、少しずつ苦手なことにもチャレンジもできるようになっていきます。
◆強い口調で叱らない
HSCの子どもは感受性が豊かなため、親御さんが強い口調で叱ると
「自分はダメな子なんだ」
と自己肯定感が低くなり、行動することをやめてしまったり、苦手なことを避けるようになります。
こうした悪循環に陥らないためにも、お子さんに伝えるべきことがある場合は強い口調で叱らずに、優しい口調で伝えるようにしましょう。
◆子どもが不安を吐き出せる環境をつくる
HSCの子どもは常に不安と戦っています。
また、親のことを気遣うばかりに「心配をかけてはいけない」と考え、ひとりで悩みを抱え無理をしてしまうこともあります。
そんなお子さんが無理をしないですむよう、いつもと変わった様子があれば声をかけたり、日頃からお子さんが不安な気持ちを吐き出しやすい環境づくりを心がけましょう。
HSCは気質のため、治さなければならない病気ではありません。
学校生活が苦手であっても、お子さんの気質を活かし、自信をつけさせてあげることで安心して学校生活を送れるようにすることも可能です。
多くの人が持ち合わせていないHSCという特性を、お子さんの長所になるようにしてあげてくださいね。
執筆者:
発達科学コミュニケーション トレーナー
永瀬 未歩