すぐ怒る、人のせいにする子どものその行動には必ず理由があり、わがままではなく脳の働きが関係しています。ADHDグレーゾーンの子どもが人のせいにしてしまう理由と、親ができる具体的なサポートの方法を解説します。
1.なんでもすぐに怒って人のせいにする子どもはわがまま?
子どもがすぐ怒る!人のせいにする!
そんな姿を目の前で見ると、胸がざわっとして心配になりませんか?
「またすぐ怒っている…」 「なんで全部、人のせいにしちゃうんだろう?」「ワガママ言ってる」と感じながらも、心のどこかでは「私の関わり方が悪いの?」と自分を責めてしまうお母さんも少なくないのではないでしょうか?
実は、私自身もかつてまったく同じことで悩んでいました。

「どうして自分のしたことを人のせいにして認められないんだろう」
「もっと素直になれたら、毎日が楽なのに…」
そんなふうに思いながら、子どもとの関係にモヤモヤがつのっていった時期がありましたが、実はなんでもすぐ怒る・人のせいにするように見える行動には、その子なりの背景が必ずあるということに気づいたのです。
わがままだからでも、性格がひねくれているわけでもないんです。
まずはその背景を知ることが、お母さんの不安を軽くし、子どもへの理解が深まる一歩になります。
では、なぜ子どもはすぐ怒ったり、人のせいにしてしまうのでしょうか?
2.すぐ怒るADHDグレーゾーンの子どもが人のせいにする理由
ADHDグレーゾーンの子どもがすぐ怒る、なんでも人のせいにしてしまう背景には、実は次の3つの理由が隠れています。
◆頭の中で情報を保持しながら処理するワーキングメモリの弱さ
子どもは本来、大人よりも「頭の中で情報を整理する力」が未熟です。
特に、ADHD(注意欠如多動障害)グレーゾーンの子どもは、自分の行動と結果を結びつけて振り返る力がまだ育つ途中の傾向があります。
そのため
・ミスした理由を思い出せない
・「自分が原因だったのかも」と考えにくい
・結果だけ見て「誰かのせいだ」と感じやすい
といった反応が起こりやすくなります。
・ミスした理由を思い出せない
・「自分が原因だったのかも」と考えにくい
・結果だけ見て「誰かのせいだ」と感じやすい
といった反応が起こりやすくなります。
例えるなら、頭の中のホワイトボードがすぐいっぱいになってしまい、「自分がどう行動したか」のメモが残らないイメージです。

◆自信のなさと強い自己否定感
ADHDグレーゾーンの子は叱られ経験や失敗体験が多く、その経験が増えれば増えるほど子どもは傷つきます。
「自分が悪い」と思う → 心がつらくなる → それを避けたい
という自然な反応から、咄嗟に人のせいにして心を守ろうとしたり、自分を責めないように無意識に回避するといった、「防衛反応」が出てきます。
そのため、無意識に「ぼくじゃない!」「あの子が悪いんだ!」「ママが悪いんだ!」と、人のせいにして自分を守ろうとしてしまうのです。
これは決して甘えているわけではなく、 自分を守るための必死のサインなんです。
◆感情のコントロールが苦手
ADHDグレーゾーンの子どもは、脳の感情を処理する機能と気持ちをコントロールする機能が発達の途中にあります。
そのため、うまくいかない、注意された、思い通りに進まないといった刺激が入ると、理性よりも感情が先に大きく反応してしまいます。
結果として、咄嗟に「ママのせい!」「あの子がやった!」という、すぐ怒る行動に繋がりやすくなってしまいます。
3.すぐ怒って人のせいにする子どもへの3つの対応ポイント
すぐ怒る子どもを前にすると、「どう接するのが正しいのか分からない…」 そんなふうに感じるお母さんも多いと思います。
しかし、先ほどの3つの理由を踏まえると、叱るよりも自分で考えて行動できる力をゆっくり育てる関わりをする方がとても大切です。
ここでは、お母さんが今日からできる3つの具体的なポイントをお伝えします。
・「原因を一緒に考える時間」をつくる
子どもは、自分だけで原因を振り返るのが苦手です。
だからこそ、お母さんが質問でやさしく導きながら、子ども自身が少しずつ原因を見つけていける関わり方が大切です。
たとえば、「どうしてこうなったと思う?」「そのとき、どんな気持ちだった?」とお母さんが質問で導くと、子どもはすぐ怒るのではなく、「原因と結果を結びつける力」が少しずつ育っていきます。
自分で気づいたときのほうが「なるほど」と頭に残りやすく、次に同じ場面が来たときに思い出して行動につながりやすいという特徴があります。
ポイントは、 責める口調ではなく一緒に探すスタイルで聞くことです。
・「できている部分」を積極的に拾って、自信を育てる
すぐ怒って人のせいにしてしまう子の中には、「自分はできない」「怒られるかも」という不安や思いこみを抱えている子がいます。
その不安を隠すために、咄嗟に人のせいにしてしまうこともあるのです。
必要なのは、「できていないところを指摘する声かけ」ではなく、「できている部分に目を向けて、それを伝えてあげること」です。
たとえば、「最後まで話を聞こうとしていたよ」「前より落ち着くのが早くなったね」と、できている部分に注目して、小さな変化をすこしずつ見つけていくことで、自信が育ち責任を受け止める余裕も育っていきます。

・「感情を落ち着かせる習慣」をつくる
怒りが爆発した瞬間は、どんな言葉も子どもの心には入りません。
まずは 落ち着く(クールダウン)時間 をつくることが大切です。
たとえば、タイマーを使って「落ち着く時間」を決めたり、落ち着いてからお話しするルールをつくります。
そして落ち着いたあとに、「嫌だったね」「悔しかったんだね」と気持ちを代弁してあげると子どもは自分の感情を整理しやすくなります。
これを繰り返すことで、 子どもは気持ちが動いたときにどう対処すればいいかを学び、怒りをコントロールする力が少しずつ育っていきます。
子どもがすぐ怒るのは「わざと」でも「反抗」でもなく、まだ育つ途中の脳の機能が一生懸命フル稼働しているだけです。
この3つのポイントをお母さんが日々の中で積み重ねていくことで、すぐに怒り、人のせいにする子どもの「考える力」「自信」「感情のコントロール力」はゆっくり確実に伸びて、脳は成長していきます。
毎日の関わりの中で少しずつサポートしていくことで、すぐ怒って人のせいにすることは必ず減っていきますので、少しずつ声かけを試してみてくださいね!
執筆者:山本みつき
(発達科学コミュニケーショントレーナー)
(発達科学コミュニケーショントレーナー)
すぐ怒る、人のせいにするお子さんは、ストレスMAXのサインが隠れていることがあります。実は、この状態から登校しぶりや不登校につながることも多いです。心配なサインが見えるときこそ、関わり方を知ることが力になります。電子書籍にストレスへの関わり方のポイントをまとめていますので、ぜひ読んでみてくださいね!




