「宿題をしない子」それは、単にしないのではなく、お子さんの中に発達(学習)障害の特性を抱えているかもしれません。学習障害とは何か?そして、特に「読み」の苦手にフォーカスして、その原因と対応法をお話ししていきます。
1.お子さんに学習の苦手はありますか?それは学習障害の特性かもしれません。
もうすぐ2学期が始まります。学校が始まると、毎日のように宿題がでますよね。
1学期、そして夏休みの今、お子さんは宿題をスムーズに取り組めていますか?
嫌がっていたり、困っていたりしていても、宿題だからとそのままやらせ続けていませんか?
また、「勉強が苦手だから…」とワークやドリルをたくさんやらせて克服させようとしていませんか?
実は、学習障害・グレーゾーンは、注意欠如・多動性障害(ADHD)や自閉症スペクトラム(ASD)、発達性強調運動障害(DCD)などと重なり合うことが多いとされています。
なので、お子さんによっては、今ある特性の陰に学習障害の特性が隠れていることがあるんです。
もし、お子さんが学習障害の特性も併存していた場合、本人のやる気だけではどうにもならないことや、一生懸命やっているのに成功体験につながらず、自信を失っていることもあります。
また、がんばって取り組んでいたとしても、親が思う以上に疲れている可能性もあります。
学習障害の特性のある子は、周りに理解してもらいにくい世界で生きている、ということを一番近くにいるお母さんには知って欲しいです。
2.そもそも学習障害(LD)とは?
最近では、テレビやネットなどでも取り上げられることも多く、どのような特性なのか一度は聞いたことがあるかと思います。
学習障害(LD)とは、
「知的発達には遅れはないものの、聞く・書く・話す・読む・計算する・推論するなど特定のものの習得や使用に著しい困難を示す状態のこと」
を言います。
言い換えると、
全体的な知的発達の遅れはないのに、学習面での得意・不得意の偏りが激しく、がんばっているのに効果が出ない状態のことを学習障害と呼んでいます。
今回は、学習障害のなかでも、家庭学習に大きく関わる「読み」の特性について、紐解いていきますね。
3.「読み」が苦手な原因とは?
読みが苦手と一言で言っても、どこが苦手なのかで対応が違いますし、原因もいろいろあります。
「読み」が苦手な原因には、
①文字を見て音を理解する力
②目で見たものを音に変換する力
③目から入ってくる情報を処理する力
④眼球運動の力
⑤ワーキングメモリ
があります。
私たちが何気なく行なっている「読む」という作業の中には、実はこれだけのステップがあるんです!
では、ここからそれぞれについて詳しく解説していきますね。
◆『①文字を見て音を理解する力』、『②目で見たものを音に変換する力』が弱いタイプ
専門用語では、「音韻意識」と言いますが、要は文字と音の変換がうまくいかないのが原因です。
このタイプは、しりとりが苦手だったり、「でんしゃ」や「きっぷ」のように小さい文字が入るものが苦手だったりします。
文字を音に変えられないので、正しい読み方がすぐには理解できません。
推測したり、記憶をたどったりするため、読み方を間違えたり、読めなかったりするのです。
また、読めたとしても時間がかかり、意味を理解するところまでたどりつかないこともあります。
◆『③目から入ってくる情報を処理する力』『④眼球運動の力』が弱いタイプ
私たちは普段、単語をまとまりとして捉えているので、早く読めたり、意味を理解したりすることができます。
しかし、この視覚が弱いタイプは、単語のまとまりが捉えにくく、1文字ずつ読んだり、単語の途中で区切ってしまったりすることがあります。
文字の形を識別するのが苦手だと、似たような字を間違えて読んだり、一行読み飛ばしたりと、うまく読めなくなることがあります。
例えば、お子さんが、
・音読中に変なところで区切ってしまい、意味がわからないと言ってくる。
・行が変わるところでよく飛ばして読んでしまう。文章の終わりをよく間違えて読んでいる。
・形の似ている文字を読み間違えることが多い。
こんな様子が見受けられたら、このタイプの可能性が高いです。
◆『⑤ワーキングメモリ』が弱いタイプ
ワーキングメモリとは、「覚える力」と「考えをまとめる力」で、一時的に記憶をするところです。
ここが苦手だと、読んでいても、記憶として定着できず、内容が頭に残りません。
ですから読んだ後に「何が書いてあった?」と質問しても、速やかに答えることができないのです。
4.「読み」の苦手に対するタイプ別対応法
ここからはそれぞれのタイプ別対応法をお伝えします。
◆『①文字を見て音を理解する力』、『②目で見たものを音に変換する力』が弱いタイプ
このタイプに、おすすめの対応法は、
・長い文章には、事前に区切りをつけてあげ、苦手な熟語や単語をマーキングしてあげる。
・ひらがなや意味のある言葉をひとまとまりとして読めないようであれば、種類別にカードなどを作って探させる。
(食べ物をここから探してなど、関係ない言葉の中に食べ物のワードを混ぜておく)
などです。
ポイントは、お子さんが楽しんで行えるようにしてあげることです!
良いコミュニケーションをとることで、脳の発達を促進させ、効果が出やすくなります。
◆『③目から入ってくる情報を処理する力』『④眼球運動の力』が弱いタイプ
このタイプにおすすめの対応法は、
・単語をまとまりとして読むのが苦手な場合、単語カードを作って単語の一文字を穴あきにし、ゲーム感覚で読ませるなど、楽しく単語に触れる機会を増やします。
・眼球運動の力が弱い場合は、次のピント合わせのトレーニングが有効です。
◆ピント合わせのトレーニング
まずは、ウォーミングアップとして、顔は固定した状態で、眼球を①上下左右②左斜め上下③右斜め上下の8方向にゆっくり動かします。
次に、左手は伸ばした状態・右手は曲げた状態で、左手の親指と右手の親指の両方にピントを合わせるのです。
このトレーニング、実は大人でもなかなかハードです。
ましてや、苦手なお子さんにとってはちょっと頑張らないとできないつらい内容です。
ですから、お母さんもぜひ、お子さんと一緒に楽しく取り組んで、少しでもできたら褒めてあげてくださいね。
◆『⑤ワーキングメモリ』が弱いタイプ
実は、ワーキングメモリは読みだけでなく、勉強や生活全般にかなり影響を与えているんです。
ここでは読みに限らず、ワーキングメモリ自体を発達させる対応法をお伝えします。
ズバリ、ポイントは大人からの「話しかけ方」!そして、その量も大事なポイントになります。
情報を保持できる量が少ないので、あれこれと指示を一気に出したり、情報が一気に入ってくるとパニックになってしまいます。
優先順位をアドバイスをしてあげるなど、情報の整理を手伝ってあげてくださいね。
まずは、お子さんがどのタイプなのか、お子さんをよく観察することからはじめてみてはいかがでしょうか?
執筆者:水本しおり
(発達科学コミュニケーションマスタートレーナー)
(発達科学コミュニケーションマスタートレーナー)