1.「学校が楽しいって思いたいよ」登校しぶりの繊細な子の本心
我が家の息子・しょうくんは、“はじめて”や“変化”にとても敏感な繊細な子です。
小学1年生の秋に、友達とのトラブルをきっかけに、先生の対応に不信感を持ち、「学校は地獄」「敵ばかり」と話すようになり、約3ヵ月間もの登校しぶりがはじました。
やがて登校を嫌がるようになり、大好きな野球の練習にも行けなくなってしまいました。
「このまま不登校になってしまうかも…」
「ママと離れられない…私も苦しい…登校しぶりがこんなにも辛いなんて。」
そんな毎日は、まるで出口の見えないトンネルの中にいるようでした。
どうにかしようと、学校・スクールカウンセラー・教育委員会の相談室にも通いましたが、決定的な解決策は見つかりませんでした。
次第に私たち親子から笑顔が消え、ただただ疲れていく日々。
そんなとき、おうちで脳を育てる発達科学コミュニケーション(以下:発コミュ)を教えているむらかみりりかさんに出会いました。
まるで、しょうくんのことかと思うほどのエピソード。
親子で困難を乗り越えていく姿に心を打たれ、「発コミュを学べば、もしかしたら…」という希望がわきました。
学び始めて3日目。
しょうくんの口から出た言葉は、「学校は嫌い。でも友達と遊ぶのは楽しい。本当は学校を楽しいって思いたいよ」
その気持ちを大切にしたいと思い、「学校の友達と遊ぶことが楽しいのであれば、学校も少しずつ楽しいって思える気持ちを育てていこう」と親子で新しい一歩を踏み出しました。
2.繊細な子の脳の特徴
◆情報キャッチが得意、言葉にするのが苦手
しょうくんは、興味のあることには理論的に説明できる一方で、自分の気持ちを言葉で表すのはとても苦手でした。
ある日、先生に廊下へ呼び出され友達の制服にマジックで書いたかと事情をきかれたときのこと。
声のトーン、周囲の視線、先に呼ばれていた友達は泣いている、空気感……そういったものを一気に感じ取ってしまい、「僕はやってないのに怒られるかも」と、頭が真っ白になってしまったそうです。
「やっていない」と言葉にできず、ただ涙が流れるだけ。
この体験が、「学校=敵」と思い込む決定打になってしまいました。
◆嫌な記憶が鮮明に残る
登校しぶりの初期には、無理やり先生に引き離された出来事もありました。
その体験がトラウマとなり、学校の近くを通るだけで強い不安が湧いてくるようになってしまったのです。
繊細な子は、楽しい記憶よりも、辛い記憶が強く残る傾向があります。
「行きたい気持ち」があっても、体が拒否してしまう……。
それが、登校しぶりの背景にはあるのです。
3.子どもの心がホッとする、親子の関わり方
発コミュの学びで、最初に教わったのは、「心の土台」は親子の愛着関係にあるということでした。
しょうくんの安心を取り戻すために、私は次の3つの関わり方を意識するようにしました。
◆愛着を育てる3つの関わりポイント
① 否定的な注目を減らす
「忘れ物ない?」「宿題した?」「ちゃんとあいさつして」
これまで当たり前のように言っていた声かけが、実は“否定”として響いていたことに気づきました。
それが積み重なると、「どうしたらいいの?」と指示待ちになってしまいます。
② 肯定の声かけを増やす
「ニコッと笑ってくれたね」「やさしく話してくれてうれしい」「もう制服着られたんだ!」
そんな小さな“できた”を伝えていくと、しょうくんの表情が少しずつ変わってきました。
③ 自分で動ける仕組みをつくる
学ぶ前は「早く着替えて!」「準備できた?」と、声かけばかり。
それでもうまく動けず、親子でつらい朝が続いていました。
そこで、「自分で選べる安心の仕組み」をつくることに。
登校前に「今日はどこから入る?」と聞き、しょうくんが落ち着ける場所(保健室・図書室など)を自分で選べるよう、学校と連携しました。
「今日は自分で決めて保健室に行けた!」「保健室から教室に戻れた!」
そんな小さな成功体験の積み重ねが、「ぼく、やればできるんだ」という自信につながっていきました。
4.ハナマル大作戦で始まった13日目の奇跡
発コミュのはじめての講座で「できていることに注目する」と学びましたが、どうしても“できていないこと”ばかりに目がいってしまい正直難しかったです。
しかし、私は決めました。まずはひとつだけ、やってみよう。
それが――ハナマル大作戦!
どんなに小さなことでも「できた!」と思ったら、すかさず「ハナマル~!」と声をかける。
とにかく、何回でも、何回でも。たくさんのハナマルをあげていきました。
最初は「ちょっと照れるかも…」と思いましたが、しょうくんはニッコニコ。
「ハナマル~!」と言うたびに、ニヤニヤが止まりません。
気が乗らない日もありました。習い事の公文の宿題も、「この7カッコイイね~ハナマルだね~」「この2もいいね~特大ハナマルあげちゃう」の声かけでスイスイ問題を解いていきました。
しょうくんの中に“やる気スイッチ”が入るのが見えました。
できていることに注目することに慣れてきたら、「起きられたね」「ごはん全部食べられたね」「車に乗れたね」何気ない毎日の一コマに「できたね」を積み重ねていきました。
気づけば、チックのように出ていた深呼吸もなくなり、
「学校は好きじゃないけど、友達といた方が楽しいから行く」
そんなふうに、自分の意志で登校できるようになっていたのです。
肯定の声かけを始めてから、13日目。
しょうくんは、休まず学校に行けるようになりました。
もちろん、毎日が順調というわけではありません。
「今日は行きたくない」という日もあります。
今は、しょうくん自身が“どうすれば行けそうか”を考えてくれるようになりました。
「今日は保健室から始めようかな」
「朝にキャッチボールしてから行きたい」
「帰り、途中まで迎えに来てくれる?」
自分の気持ちを整理して、自分なりの方法で登校しようとする姿に、大きな成長を感じています。
そして、私自身もイライラが減りました。
お互いに、ゆるやかに、確実に変わってこれたのだと思います。
5.小さな”できた”が親子を変える
子どもの“できてる”に目を向けることで、その子らしさがどんどん輝いていく。
そして、自分自身の心も、少しずつ軽くなる。
そんな体験を通して、「親子の関わりって、本当にすごい力があるんだな」と感じました。
これからも、しょうくんと一緒に、 笑ったり迷ったりしながら、心の土台を育てていきたいと思います。
執筆者:いとう あやこ
(発達科学コミュニケーション)