1.「明日は行く」と言ったのに、朝になると動けなくなる理由が分からなかった
わが家には、繊細な息子のむーちゃんがいます。現在は小学5年生です。
行き渋りが始まったのは、3年前の小学2年生のGW明けからでした。
むーちゃんは、人の表情や声のトーンにとても敏感で、場の空気を読むのがとても上手な子です。
その一方で、学校について行ける日と行けない日を繰り返してきました。
前日の夜は「明日は行く」と話していても、朝になると表情が曇り、食欲が無くなる日もありました。
“どうして行けなくなるんだろう”
“何がそんなに不安なんだろう”
私は、息子の不安を取り除こうと必死でした。
理由を聞いて、励まして、待って…自分なりにできることはやっているつもりでした。
当時の私は、不安は息子の中にあるものだと思っていました。
繊細な性格だから。
学校で嫌な経験をしたから。
集団が苦手だから。
まさか、自分の何気ない言葉や表情が、息子の不安を大きくしているとは、この時はまだ気づいていなかったのです。

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2.守っているつもりが不安を強めていた
行き渋りが始まってからの私は、”とにかく息子を守らなければ”という気持ちでいっぱいでした。
繊細で、不安が強く、人の目や言葉に敏感なむーちゃん。
学校でこれ以上傷つかないように、困らないように、私は無意識のうちに先回りし、不安を避ける選択を重ねていました。
✔ 無理そうな日は休ませる
✔ しんどそうなら代わりに説明する
✔ 嫌な場面はできるだけ避ける
それが「寄り添い」だと信じていたのです。
けれど今振り返ると、この関わりは「不安を避ける」経験ばかりを積み重ねていました。
その結果、
「自分でどうしたらいいか考える」機会が減り、不安に向き合う力も育ちにくくなっていたのです。
行き渋りながらも、週2、3日昼休みからの部分登校を続け、学校との関わりを頑張って保っていました。
そして校外学習のある日、久しぶりに朝から登校できた時、クラスメイトから言われた一言。
「なんで朝からいるの?」
その瞬間、むーちゃんの体は固まりました。
「自分はここにいていい存在じゃない」という思いを強くしてしまったのです。
そしてその記憶は、2ヶ月後の別の校外学習の日に蘇りました。
前日は楽しみにし、早く寝て、当日の朝も早く起きて準備をしていました。
「楽しみ〜、早く行きたい!」
そう話していたのに、家を出る直前に動けなくなり、
「やっぱり行けない、気持ち悪い」
と泣き出しました。
私は戸惑いながらも、そこで初めて、2ヶ月前の出来事を聞くことになりました。
“どうしてその時、話してくれなかったの?”
そう思いましたが、その時のむーちゃんは、まだ自分の中で気持ちを整理することができなかったのだと思います。
そしてこの出来事をきっかけに、学校そのものへの不安が強くなり、部分登校も難しくなっていきました。

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3.「大丈夫だよ」が届かない理由に気づいた
私は息子の未来が不安で不安で、押し潰されそうでした。
悩みながらも、子どもとの関わり方を模索する中で出会ったのが、脳科学・心理学・教育学をベースにした発達科学コミュニケーション(以下発コミュ)の学びでした。
家庭での関わり方や日常の声かけに目を向けていく視点に触れたことで、私自身の受け止め方が、少しずつ変わっていきました。
この学びの中で、私が大きく変えたのは、「不安への関わり方」の考え方でした。
それまでの私は、
「怖いんだね」
「不安だよね」
「行きたくないんだね」
と、気持ちに寄り添い続けてきました。
けれどここで知ったのは、ネガティブな感情に共感し続けることが、必ずしも脳の回復につながるわけではない、ということでした。
感情が強く揺れているとき、脳はその状態を何度も再生します。
そのため、言葉でなぞるほど、不安が強く残ってしまうこともあるのです。
私は、安心させているつもりで、息子の不安に意識を向け続ける関わりをしていたのかもしれません。
発コミュで学んだのは、
✔ ネガティブな感情に巻き込まれない
✔ 否定も肯定もしない
✔ 「そうなんだね」と一度受け取る
という、脳に負担をかけない関わり方でした。
これは、「気持ちを無視する」のではなく、子どもが自分で整えられる状態をつくる関わりです。
私はここで初めて、子どもを変えようとするのではなく、子どもが動ける状態を整えるという視点を持つようになりました。

4.“良かれと思っていた関わり”をやめたら子どもが動き出した
そこから私は、関わり方を変えました。
意識したのは、「何をするか」ではなく「何をしないか」を決めることでした。
それまでの私は、
✔ 前向きな言葉をかける
✔ 共感して安心させる
✔ 不安を減らしてあげる
そんな“良い関わり”を積み重ねようとしていました。
けれど、繊細な子の脳は、言葉や表情、空気から多くの情報を受け取っています。
親の「なんとかしてあげたい」という気持ちさえ、プレッシャーとして伝わることがあるのです。
そこで私は、関わり方をシンプルに見直しました。
① 褒めるのではなく「事実」を伝える
以前の私は「すごいね」「頑張ったね」と声をかけていました。
けれどそれは、「できた・できない」で自分を評価する軸を強めてしまうこともあります。
そこで意識したのが、事実だけを伝えることでした。
・「朝、自分で起きてきたね」
学校行けないとなった朝でも、
・「学校行こうと思ったんだね」
評価も期待も乗せず、起きていることをそのまま言葉にする。
すると、むーちゃんの表情が少しずつやわらいでいきました。
② ネガティブな言葉に反応しすぎない
「どうせ無理」
「行けない気がする」
「またダメかも」
以前の私は、すぐに励ましたり、理由を聞いたりしていました。
けれど、不安が強いときは言葉が届きにくい状態です。
そこで、感情を受け止めるだけの関わりに変えました。
「そうなんだね」
「今はそう感じているんだね」
共感しすぎず、否定もせず、感情を一度預かります。
すると、ネガティブな言葉が長引かなくなっていきました。
③ 先回りせず、整う時間を待つ
答えを急がせない。
気持ちを引き出そうとしない。
不安を消そうとしない。
ただ、子どもが整う時間を信じて待つ。
すると、沈黙のあとに、
「今日はお休みする」
「給食から行く」
そんな言葉が、むーちゃんの口から出てくるようになりました。
この頃から私は、子どもが変わったのではなく、子どもが”動ける状態”に戻ってきたのだとはっきりと感じるようになりました。
息子に対する不安がなくなったわけではありません。
それでも、不安に飲み込まれて止まることは、確実に減っていきました。
私自身も、「今日はこれで大丈夫」と思える日が増えていきました。
学校に行けたかどうかだけで、一日を評価しなくなったことで、親子の時間そのものが穏やかに変わっていったのです。

5.学校に行くことをゴールにしないと決めた日
以前の私は、「学校に行けるようになること」をゴールにしていました。
行けた日は安心して、行けない日は落ち込む。
その繰り返しで、親子ともに気持ちが大きく揺れていました。
けれど今は、目標そのものが変わりました。
学校に行くかどうかではなく、子どもが自分の状態に気づき、自分で選び、自分のタイミングで一歩を出せること。
その力があれば、どんな場面でも、自分で立て直すことができる。
それが、これから先の人生で何度も自分を助けてくれる力になると今は思っています。
そしてそれは、私自身にも同じ変化をもたらしました。
以前は正しく育てなければ、ちゃんと導かなければと思っていました。
今は肩の力が抜け、いつでも「整え直せばいい」と思えるようになったのです。
もし今、行き渋るわが子を前に迷っているなら、まずはひとつ、関わり方を変えてみてください。
すぐに答えを出さず、「そうなんだね」と受け止めてみる。
それだけでも、子どもが安心して動き出すきっかけになります。

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執筆者:みなみみき
発達科学コミュニケーション





