たくさんの習い事がある現代っ子、発達障害の子どもを伸ばしてくれるものを選びたいですよね。子どものどの部分を伸ばしたいのかによってピッタリな習い事は異なります。この記事では見る力と体のコントロール力を高める和太鼓についてご紹介します。 |
【目次】
1.視覚優位だから見る力が強いってホント?
2.なんでそうなるの?体の使い方が下手すぎ問題!
3.発達障害の子どもにオススメの習い事!和太鼓レッスンの効果
4.発達障害・自閉症スペクトラムの息子が1年間の和太鼓レッスンで得たものとは
1.視覚優位だから見る力が強いってホント?
発達障害グレーゾーンのお母さんなら、「視覚優位」「聴覚優位」という言葉を聞いたことがありますよね。
ものごとを見て判断する方が得意なのか、聞いて判断する方が得意なのか。
子どもの得意な方法で指示するとスムーズですよ!と言うアドバイスを受けた方もいらっしゃるかもしれません。
実は私もその一人です。
私の6歳の息子は発達障害・自閉症スペクトラムの診断がおりています。診断を受けたとき、担当してくださった心理士さんから、
「息子さんは視覚優位ですから、絵カードでの指示が有効ですね!」
と教えていただき、家でも「見せて」判断させることを意識して支援することにしました。
ところが、しばらくすると問題発生!
息子は確かに見て判断するのが得意です。ですが、パッと一瞬だけ見て判断してしまいます。
例えばワークをしているときも、問題文の最後まで読まず途中で読むのをやめて回答してしまう。
間違い探しなど、時間をかけて細部まで見るものは苦手。
とにかく「一か所を見続ける」ことができない!
パッと一瞬だけ見て判断するのは得意、でもじっくり見続けるのは苦手。 「視覚優位」と言っても、視ること全般が得意というわけではないのだと感じるようになりました。
この記事では、こういった見る力と体の使い方のぎこちなさのある発達障害の子どもにピッタリな、和太鼓の習い事の効果についてご紹介します。
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2.なんでそうなるの?体の使い方が下手すぎ問題!
じっくり見ることが苦手なのに加えて、息子は体の使い方が下手でした。
一概に体の使い方と言っても、単に運動が苦手というわけではありません。 息子は体力があり、公園が大好き。遊具でも上手に遊べています。
私が初めて体の使い方に課題があることに気づいたのは、年少のときの幼稚園での発表会でした。
クラスのお友だちと一緒に披露したダンス、私は途中から直視できなくなってしまいました。
確かに動きは似ていますが、腕が上に上がりきってないなど、角度が全然違います。
足のステップもぎこちなく、本人も途中から分からなくなるようで、みんなと合わせることを放棄して好きなように動き出す… 細かい体の使い方に課題があるのは明らかでした。
幼稚園の先生はダンスを丁寧に指導してくださっていたようですし、息子もダンス自体は大好きです。
でも先生のお手本のように手を上げているつもりなのに上げられていない。 でも自分の動きがちょっと違うことに気づかないのです。
これは見る力と体のコントロールの両方が影響しているのではと考えるようになりました。
じっくり見る力が弱いので、先生のお手本をおおまかにしかとらえられない。
体のコントロール力が弱いので、動きがずれていることに気づかない。
この2点にアプローチできる習い事が、和太鼓のレッスンなのです!
3.発達障害の子どもにオススメの習い事!和太鼓レッスンの効果
習い事としての和太鼓はピアノのように普及しているわけではありませんが、祭り太鼓など習い事以外で触れる機会もあります。
バチで太鼓をたたけば音が出ますし、手先が不器用でも大丈夫!
音楽的な要素に加えて、振付がありダンスの要素もあります。
でもダンスほど運動量が多くないので、体力がない子でもOK!
さまざまな習い事がある中で、お子さんがトライしやすいものの1つと言えます。
和太鼓は先生のお手本を見ながら暗記して曲を覚えていく側面もありますが、実は楽譜もあることをご存じでしたか?
ドンドン(四分音符)
ドドドド(八分音符)
ウン(四分休符)
スト(八分休符+八分音符)
乱打(早く大きく叩く)
などが記号であらわされ、型として腕の振り方にもルールがあります。
和太鼓のレッスンは型を何度も練習して、確実に身につけることから始まります。発表会で披露する曲も、同じ型を連続させたり、違う型を組み合わせたりして構成されるからです。
型は演奏の基礎となり、体の振りと合わせてひとつの作品が出来上がります。
和太鼓の型はまず先生の見本をしっかり見て、楽譜で記憶を補いながら先生と同じリズムを叩くことで覚えていきます。
先生がお手本を見せてくれている一定時間、先生の動きに注目する。これを繰り返すことで見続ける力を鍛えていくのです。
また、和太鼓の振りは、動いては決めポーズをとることの繰り返しです。
バチを持ったまま手を空中で数秒間止める動きが多いので、体を制止させる、コントロールの力が身につきます。
もちろん他の友達と一緒に練習することで、腕を上げる角度を合わせたり、他の子の演奏に耳を傾けたりする場面が多くなりますので、「合わせる」練習ができるのです。
実は発達に遅れがある子どもに和太鼓が有効であることは多くの研究結果が出ていて、療育の現場でも広く取り入れています。
毎年「和太鼓療育フォーラム」も開催されるほど、和太鼓が発達を加速させる力があることは知られてるんですよ!
ここまで和太鼓が療育に活用されているので、レッスンの先生方も発達障害について理解がある方が多い印象です。
我が家がお世話になっている教室では、発達障害の他、ダウン症や知的障害・身体障害のある方も和太鼓を楽しんでいます。
4.発達障害・自閉症スペクトラムの息子が1年間の和太鼓レッスンで得たものとは
私の6歳の息子が和太鼓と出会ったのは、昨年の夏でした。進学する予定の小学校の夏祭りで和太鼓が演奏されていたのです。
「音が大きいから怖がるかもしれない!」と不安になる私をよそに、和太鼓の音色に聴き入る息子…この子にも日本人のDNAが入ってるんだなと妙に納得したのを覚えています。
「僕もやりたい!太鼓たたきたい!」とはっきり息子の意思が分かったので、和太鼓教室の門をたたくことにしました。
私としては、何か好きになれるものがあったらいいなという思いだけだったのですが、思いがけず発達のさまざまな効果を目の当たりにすることができたのです!
◆レッスン中はずっと立ちっぱなし!
我が家がお世話になっている和太鼓教室にイスはありません。50分間のレッスン中、ずっと立ちっぱなし。
最初は座り込んでしまうことが多かったのですが、最近は最後まで立っていられるようになりました。
普段の生活で、体力や体幹がついてきたと気づく場面は少ないですが、毎週のレッスンで息子の変化をしっかり感じ取ることができました。
◆八分音符のリズムがたたけない!
息子は四分音符のリズムは周りと合わせて上手に演奏できるのですが、八分音符のリズムになると途端にたたく速さが分からなくなっていました。
息子本人も「ここは早くする場面だ」と言うのは理解しているのですが、周りとリズムを合わせることができずに乱打…
レッスンを始めて1年たった今も、完全に八分音符のリズムをマスターしたとは言えません。でも、周りの音をよく聞くようになり、一部でも周りと合わせようとしています。
八分音符のリズムは叩けないけれど、演奏に大きな影響がないまでに自分でコントロールできるようになりました。
◆発表会が大きな自信に!
息子が通っている教室では、半年の1度のペースで成果発表会があります。
昨年の9月にあった初めての発表会は、先生も心配してくださって、普段のレッスンとは別に特別レッスンをしてくださったり、家で練習したりして何とか本番を迎えました。
本番は…大成功!演奏スタートの合図をするという大役を任されましたが、見事にやり遂げることができました。
他の音楽系の習いごとの発表会と比較して、和太鼓の場合は間違っても周囲に気づかれにくく、本人の自信を損なう心配がありません。
息子の場合はうまくいってほっとしましたが、多少間違ったり、曲を暗記しきれていなくても大きな問題がないのが和太鼓のいいところだと感じました。
そういう理由もあってか、息子の教室では習い始めて1か月程度で発表会に出演する子もいます。
発表会は、子どもたちに大きな成功体験を与えてくれます。息子は「何でもやってみたい!」というタイプですので、発表会に出演した数だけ、自信につながっていると感じます。
◆体のコントロールもだんだん上手に!
和太鼓のレッスンを開始した当初は、やはり先生のお手本のように腕が上がりきらず、手首だけで太鼓をたたいているような状態でした。
だんだんひじが使えるようになり、肩が大きく動くようになり…だんだん体の使い方も上手になってきています。
バチを持った手がピン!と垂直に上がると、我が子ながらカッコイイなと思ってしまいます(笑)
「腕がピーンって伸びててすごくよかったよ!」と具体的に褒めて伝えるようにしています。
◆もっとうまくなりたい!レベルアップを目指して
和太鼓は幼児から大人まで幅広い年齢層で楽しめます。息子が通っている教室でも、3歳半から大人まで、レベルごとに分かれてレッスンが受けられます。
発表会では上のレベルの演奏も見ることができるので、息子は興味津々!
「上手だね~!すごいね!」と言いながら、最後は「僕もやりたい!」と意欲満々に言うようになりました。
もちろん今よりももっと上手に演奏できるようになったらとても楽しいでしょう。見る力・体のコントロール力ももっとアップするに違いありません。
そういったことにももちろん期待していますが、それよりも私は和太鼓の無限の可能性にとてもワクワクしています!
日本でも祭り太鼓は地方によって全く異なりますし、和太鼓の楽器そのものも多くの種類があります。そして、海外でも和太鼓は少しずつ形を変えながら多くの人に楽しまれています。
我が家がお世話になっている先生は、アメリカに留学中にマレーシア風和太鼓に出会ったことから、プロの和太鼓奏者になったそうです。
和太鼓は日本古来の音楽でありながら、世界でも受け入れられているんです!
言葉は通じなくても音楽は正解共通。人とのコミュニケーションに課題がある息子の助けになってくれるのではないか…そんな期待を抱いています。
そんな大きな可能性を秘めた和太鼓。ぜひ和太鼓の価値を改めて感じていただけたらうれしいです。
執筆者:丸山香緒里
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)