小学2年の息子は不登校で家に閉じこもりゲーム三昧。フリースペースの中にも入れなかった息子が、「ゲームしに行く?家で遊ぶ?」という声かけをきっかけに少しずつ自分のペースで動き出すまでの体験談をお伝えします。
1.家に閉じこもる不登校の息子を見て感じた焦り
小学2年生、自閉スペクトラム症(ASD)の息子は、不登校になり、外にも出られず家でYouTubeやゲームばかりしていました。
私は「このままでいいのかな…少しでも外に出て欲しい」と焦る気持ちが日に日に強くなっていきました。
「ちょっとお散歩いこう」
「水族館とか動物園いく?」
「ガチャガチャしにいこうか」
と息子が興味を持ちそうな提案を試行錯誤。
それでも「イヤだ」「誰かに会うかもしれない」「ママだけ行けば」と断られていました。
私はどう声をかければいいのか分からず、「このまま引きこもりになるのではないか」と不安な気持ちが大きくなっていました。

2.一歩が踏み出せない息子との葛藤
ある日、ゲームを買う約束をして、なんとか息子を連れて近所のフリースペースに見学へ行きました。
そこでは、ゲームをしたり絵を描いたり、それぞれがしたいことをして過ごしていました。
「ここなら息子も安心して過ごせるかも」
そう願いながら入口に立ったものの、息子の足は止まり、わずか数秒で車に戻ってしまいました。
その後ろ姿を見た瞬間、私の胸の中に「やっぱり無理なのかな…」と重たい気持ちが押し寄せてきました。
息子を責めたいわけじゃない、 でもどうしたらいいのか分からない。
私の方が泣きたくなるほど、途方にくれていました。
ところが帰宅後、息子がふいに「フリースペースでゲームしてた子いたね」とつぶやいたのです。
その小さな一言が胸に引っかかりました。
「あれ?外に行くことが全部嫌じゃないのかも」
「ほんの少しは興味があるのかもしれない」
そう感じた瞬間、ちょっとだけ前に進めるかもしれないと思いました。
けれど次の日にフリースペースに誘っても「いかなーい!」と拒否。
私はまた迷いました。
どう接すればいいのか…。
そんな時、発達科学コミュニケーション(発コミュ)で学んだ「子どもに選択肢を与えること」を思い出したのです。

3.行動よりも大事な『心の土台』
発コミュで学んだ中でも、特に心に残ったのが「子ども自身が選べる環境や選択肢を用意することの重要性」 という視点でした。
これは「行動を促す前に、安心して選べる心の土台を整えることが大切」という考え方です。
それまでは、外に出てほしくて、
「どう言えば動いてくれるのか」
「どうしたら行動が変わるのか」
そこばかりに意識が向いていました。
でも発コミュの学びを通して、息子の様子をあらためて見つめてみると、息子は「出ない」のではなく、不安が大きすぎて 『出るという選択ができない状態』だったことに気づいたんです。
叱っても、励ましても動けなかったのは「やる気がない」からではない。
ただただ不安でいっぱいの息子の中には、こんな不安が渦巻いていたんだと思います。
「外に出て、友達に見られたらどう思われるんだろう…」
「フリースペースってどんな場所?怖い人はいない?」
「行ったら、何をさせられるんだろう…自分にできるかな…」
大人から見ると些細なことでも、息子にとっては大きな壁で、その不安が「行動する」という選択肢を完全にふさいでしまっていたのだと気づきました。
その視点に触れた瞬間、
「私、息子の不安を見落としていたんだ…」
「行動させる前に、安心を渡すことが大事なんだ…」
と胸の奥がじんわり熱くなりました。

4.選択肢が子どもの行動を後押しする理由
次のフリースペースの日。
「行く?行かない?」と聞きそうになった私でしたが、ぐっとこらえて、こう言いました。
「ゲームしに行く?それとも家でママと遊ぶ?」
これは、発コミュで学んだ選択肢を与える声かけ。
どちらを選んでもOK。
行かなくてもいいし、無理に頑張らなくてもいい。
そう思いながら声をかけると、息子は少し考えてから「うーん、ゲームできるなら行ってみる」と答えました。
このとき私は、「選択肢を渡すって、こういうことなんだな」と実感しました。
なぜなら、この声かけには、息子の不安を軽くする要素がいくつも重なっていたからです。
①「行かなきゃいけない」が消えた
「行く?行かない?」と聞かれると、息子にとっては“行けない自分を選ばされている”ような感覚になってしまいます。
でも「ゲームしに行く?家で遊ぶ?」と聞かれたことで、どちらを選んでも否定されない安心感が生まれていました。
② 自分で決めた、という感覚が残った
人は「自分で決めたこと」には責任感とやる気が生まれます。
この日は、「ママに連れて行かれた」のではなく、「自分で選んで行った」という形になりました。
その小さな違いが、息子にとっては大きな意味を持っていたように思います。
③ 行ったあとも“戻れる”と分かっていた
発達特性のある子どもにとって、「何が起きるか分からない」「次が見えない」ことは大きなストレスです。
「疲れたら、いつでも一緒に帰ろう」
そう伝えたことで、フリースペースは“頑張らなきゃいけない場所”ではなく、“試してみてもいい場所”になりました。
私は心の中で「よし!」とガッツポーズをしました。
それと同時に、冷静でいようと心を落ち着かせました。
なぜなら、「フリースペースに行く→ママが喜ぶ→行けない僕は駄目な子だ」と思わせたくなかったからです。
なんとかフリースペースに行けた息子は約2時間、1人でゲームをするだけでした。
でも、終わりの時間まで過ごすことができました。
それだけでも息子にとっては大きな一歩でした。

5.これからの一歩へ
そこから息子は「ゲームができるなら」と少しずつ自分のペースで通えるようになり、やがて同じゲームが好きな子と話すようになりました。
さらには、ゲームの中だけでなく、キャラクターになりきって“ごっこ遊び”を楽しむようになっていきました。
今では私がいなくても過ごせるほどで、「明日も行く!ゲームしてから〇〇君とごっこ遊びするんだ」と目を輝かせて伝えてくれます。
この経験を通して、私は「子どもに選択肢を与えること」の大切さを改めて実感しました。
まずは子どもの気持ちを尊重し、不安を少しでも減らすことが大事だと気づいたのです。
発達の特性がある息子にとって、安心できる環境や自分で選べることがどれほど行動のきっかけになるか。
私がそのことを理解して関わり方を変えただけで、息子の様子は少しずつ変わっていきました。
閉じこもっているように見えても、子どもは止まっているわけではありません。
安心できるタイミングと形を探しているだけなのだと思います。
もし今、同じように立ち止まっているお子さんがいたら、この経験が少しでも参考になればうれしいです。

執筆者: おちあい ひろみ
発達科学コミュニケーション トレーナー




