小学校の通常級に通い、不登校や行きしぶりが続いたお子さんはもしかすると環境が特性に合っていないのかもしれません。我が子がのびのび過ごせる環境を見つけられると良いですよね。お子さんにとってどのような環境が適しているのか先生方と考える「就学相談」という機会があります。就学相談は2学期に予定されていることが多いようです。この記事は次年度に特別支援学級の利用を考えていらっしゃる方、まだどうしようか悩んでいる方に向けて書いた記事です。私の体験談からぜひ就学相談への理解を深めてほしいと思います。
1.我が子に合う環境ってどこにあるの?
小学校生活で不登校や行きしぶりを経験したことをきっかけに、我が子に合う環境を見つけたいと思っている親御さんはいらっしゃいませんか?
✔️集団生活が苦手
✔️教室に入れない
✔️感覚過敏がある
✔️不安が強い(母子分離不安である)
✔️周りの空気を読みすぎて疲れ切ってしまう
不登校や行きしぶりの原因は様々ですが…。
上記のようにお子さんの発達の特性によって、難しさや苦しみが生じている場合は、集団生活の場=学校という環境がお子さんに合っていないことが大きな原因になっていることが多いようです。
我が子に合う環境を学校の中で見つけたい。
そう思われているのなら、ぜひ特別支援学級の選択肢について考えてみませんか?
この記事は、小学校生活で不登校を経験した娘が特別支援学級に移籍した時の実体験を書いたものです。
ぜひ、参考にしていただけると幸いです。
2.娘の困り事と転機
私の娘(小6)は通常級に小2まで学校に通っていましたが、小3の担任の先生が大きな声で常に怒っている方で雰囲気に耐えられなくなり、小3の1年間は不登校になってしまいました。
小さい頃から人見知りが激しく集団生活が苦手でしたが、性格によるものとされ障害の診断がつくことはありませんでした。
しかし、不安・緊張が強く特定の場所(学校)では喋れなくなってしまう場面緘黙があります。
感覚過敏もあり太陽光が眩しすぎたり(視覚過敏)、うるさい教室に入れない(聴覚過敏)、偏食ぎみで給食が苦手(味覚過敏)、人混みのニオイが苦手(嗅覚過敏)、制服が着れない(触覚過敏)などがあります。
これらの困り事があり、先生に自分の意志を伝えられなくて不安がとても強くなってしまうので現在は母子登校をしています。
娘は少人数であればお友達と遊ぶのは好き。
保育園からずっと1クラスでお互い知っている子ばかり。
学校(教室)に行けないだけ。
こんな状況を学校の先生に相談すると、学年の途中からは移籍ができないからと、『特別支援学級のお試し』をさせて頂けることになりました。
お試し期間を経て本人の希望もあり、次年度から特別支援学級に移籍する目的で就学相談を受けてみることになりました。
3.特別支援学級は障がいのある子が行く所でうちの子は関係ないのでは…
みなさん、特別支援学級の対象になる児童はご存じでしょうか。
私が対象外と思い込んでいた娘は、実は対象だったのです。
特別支援学級の対象となるのは、発達障害、学習障害、言語障害、知的障害など何らかの障害を持っている子どもたちです。
一方で、障害がなくても、学習に著しい困難を抱えている場合や社会生活への適応が困難である場合も考慮されます。
「知的学級」と「情緒学級」があり、「知的学級」とは、知的発達に遅れのある子どもを対象とした教室です。
「情緒学級」とは、知的発達に遅れはありませんが、子どもの特性・困り事(過度のこだわりや過敏、集団行動に参加できない、多動や衝動が激しすぎる、感情の起伏が多く授業をしばしば妨害してしまうなど)に対し、個別に適した環境で支援や指導を受ける教室です。
法律の話になりますが、2002年に『発達障害者支援法』ができ、それまでの教育現場では情緒面、心理面での問題行動のある子は重度の障害ではないとされ、福祉的支援の枠に入りませんでした。
しかし、この法律ができたことにより支援を受けれるようになりました。
私が小、中学生の時には特別支援を受けられる子は『知的障害がある子だけ』で、この法律があることを知らなかったので我が子が対象になるとは知りませんでした。
また、2013年には『障害者差別解消法』が施行され、障害の特性に応じた環境の調整や工夫をする「合理的配慮」が学校現場、公教育や公的機関に義務付けられました。
これのおかげで、一人一人の特性に応じた関わり方をしていただけるようになりました。
4.特別支援学級への移籍を考えている方へ、就学相談が必須です!
通常級から特別支援学級への移籍は学年途中にはできないので『就学相談』を受けてからの判断になり、年度初めからの開始となります。
移籍の面談も小・中学校就学前の就学相談と同じ時期に行われます。
『就学相談』とは、子どもの就学先(通常学級、通級指導教室、特別支援学級、特別支援学校などの選択肢の中からどこへ進学するかを選択します)を決めるための保護者、児童、教育委員会の間の話し合いと、その決定までのプロセスを指します。
特別支援学級に入る基準は、障害の有無や程度だけではなく、子どもそれぞれの状態や、校内・地域の体制などを総合的にみて判断されます。
保護者や本人の意向も重要な要因です。
就学相談は市区町村によってその方法や内容が大きく異なりますので、お住まいの市区町村の教育委員会へお問い合わせくださいね。
5.特別支援学級ってこんな所!
お子さんが特別支援学級に移籍することを決めるまでには、親御さんは沢山悩むと思います。
私はこれまでの娘の小学校生活の経験を通して、子どもにとって学校という場が過ごしやすく、個々の特性に合った支援が受けられるような環境を整えていくことが大切だと痛感しております。
最後に…
私の娘が実際、特別支援学級に転籍した後どうなったかをご紹介したいと思います。
※学校や自治体によって対応が様々ですので、参考程度にご覧ください。
特別支援学級では『得意を伸ばし、苦手なことは無理をしない。』
得意なことを伸ばしていくと苦手なこともいつのまにか解消できている関わりをしてくださいます。
例えば
・睡眠障害がある→登校時間を遅らせてもらった
・人の目が気になり1人じゃないと食事ができない→給食時間は1人の部屋で食べる
・太陽光が眩しい→教室の席を廊下側にしてもらう、遠足や運動会など屋外で活動する場合、無理をせず休みやすくなった
・聴覚過敏でざわざわした教室や全校集会に出れない→リモートでつないでもらい、音量の調整を自分でする
・普通級との交流授業→遠足の相談などをする時に少人数のグループに分けて部屋がうるさくならないようにしてくれた
・制服が着れない→制服を着なくてもOKにしてもらった
・先生に言いたいことが言えない→カードを提示して行き先を伝える
・場面緘黙→無理に喋らせようとせず、うなずきや首を横に振ることでコミュニケーションOKとしてくれた
・今後の見通しがわからないと不安(自分から聞けないし、心の準備が必要)→ 一週間の予定を前もって知らせてもらう。大きなイベントはわかった時点で教えてもらえる。
・母子分離不安症→母子登校OK など
まだ他にも細かい支援はありますが支援級の担任の先生は、『娘が過ごしやすい環境になるように』を1番に考えて接してくださいます。
そして、娘のペースを優先してくれるので無理して周りに合わせなくても良くなり疲れも軽くなりました。
移籍して半年近くになりますが、娘が一番変わりました。
無理をしなくても心地よい空間の教室があると、表情から違います。
自分らしくいられることが、今までなかったのでのびのびしています。
登校しぶりや不登校の時には考えられなかった『自分で起きて自分から準備をする。教室に自分から入っていく』そんな当たり前が手に入りました。
今はまだ色んな先生の手や心遣いが必要ですが、娘を見ていると『環境が整えばこの先も明るい!』と思えるようになりました。
大人もブラック企業からは転職するように子どもも合わない環境があったら自分が合うような環境に身を置いても良いと思うのです。
特別支援学級に移籍したら中学生、高校生はどうなっていくんだろう…周りの人からどう思われるんだろう…と、そんな悩みがあるかとは思います。
もし今、特別支援学級に移籍することや、今後の進路に不安があるようでしたら
ぜひ学校に相談をし、不安の解消をしてみてください。
お子さんに合った環境を見つける「就学相談」を受けることをおすすめします。
しっかりと先生方と話し合い、色んな方のサポートを受けてお子さんに合う環境を探していけることを心より応援しています。
執筆者:
発達科学コミュニケーション リサーチャー
田中さくら