過剰適応の子どもは外向きには真面目で良い子のため、先生にも親にも見過ごされがちです。一見何の問題もないように見えますが、お子さん自身が無理をし続けた結果、登校しぶりにつながる可能性もゼロではありません。登校しぶり初期の段階で、お子さんが『過剰適応』に当てはまるのでは?と感じられた時の対応をご紹介します。
1.過剰適応とは
過剰適応とは、自分が置かれた環境に適応するために、自分の考えや行動を合わせすぎてしまう状態です。
自分の行動や考え方を押し殺し、自身の変化の程度が度を超えすぎてしまう状態のことをいいます。
心理学においては、自分の都合よりも周りを優先させて、無理しながらもがんばっている状態をさすこともあります。
過剰適応自体は病気ではありません。
ですが、メンタルの不調を起こしやすく、過剰適応の状態をそのままにしておくと、二次障害につながる可能性もあります。
小学生の場合、慣れない集団生活の中で無理に適応しようと頑張りすぎてしまうことで、不登校や登校しぶりといったストレスの反動が出てしまうことがあります。
過剰適応の子どもは学校での問題行動がないことがほとんどのため、先生に見過ごされがちですが、そのまま放置してしまうと二次障害につながる可能性もあるため、早めの対処が必要です。
2.息子の登校しぶりの原因は過剰適応
保育園の面談でも、小学校の個人面談でも、息子はこれまで一度も、先生に問題行動を指摘されたことはありませんでした。
むしろ「お友達にすごく優しいです」「気が利きますよ!いつも助かっています」といったような褒め言葉をかけられる子どもでした。
そんな息子は小2の春から登校しぶりがはじまり、ついには教室に入れなくなってしまいました。
振り返ると、息子が小1のときの個人面談。
当時の担任のベテランの先生とのやりとりでこんな会話がありました。
「永瀬くん、1日中ずっと、きちんと座ってるんですよ。授業も真面目にきいてますし。」
「??? そうですか。」
「いや、悪いことではないんですが・・・」
当時の私は、「学校で頑張ってるんだな」としか思っていませんでした。
ですが、付き添い登校をはじめて、息子の様子を観察していて気づいたこと。
それは、息子が「過剰適応」だったのではないか?ということ。
小学校では協調性が求められます。
そして、学校は決まり事がとても多い。
「廊下は走らない」
「給食中は話さない」
「ノートのとり方はこう」
「荷物はこの順番でロッカーに入れる」 などなど
挙げればキリがありません。
集団生活において協調性は大切なものです。
そして、大人数の生徒がいる以上、学校のルールを守ることも大切。
ですが、環境にあわせようと頑張りすぎてしまい、一日中無理をし続けてしまったり、先生に好かれようと自分の行動を変えたり、友達の気持ちや意見を尊重するばかりに、自分の気持ちを押し殺し続けてしまうと、ある日突然、爆発してしまうことも。
息子の場合、小学校ではじめての進級・新学期の生活がその爆発を起こし、「学校行きたくない」という登校しぶりとなってあらわれたのだと思います。
3.過剰適応の子どもへの対応
過剰適応の子どもは外向きには良い子、そして聞き分けの良い子なため、先生にも親にも見過ごされがちです。
「学校で真面目でいい子」
「先生からの頼まれごとはすすんで引き受ける」
「友達とトラブルも一切起こさない」
一見、何の問題もないように見えますが、お子さん本人が、無理をし続けている可能性もゼロではありません。
親御さんの対応でぜひお子さんのストレスを軽減してあげてくださいね。
◆自分の気持ちを言うように教える
過剰適応の子どもには、普段から『自分の気持ち』を言うように教えましょう。
過剰適応の子どもは、「自分が我慢すれば問題は解決するんだ」と自分の気持ちを押し殺しているケースが多いです。
お子さんが我慢をしているように感じたら、
「我慢しなくていいんだよ」「何がしたいか言ってごらん」
と声かけをするようにしましょう。
◆助けを求める練習をさせる
過剰適応の子どもは、助けを求めることが苦手です。
学校で先生やクラスメイトに迷惑をかけることを避けるため、「自分がやらなければならないんだ」と考えてしまう傾向があります。
そのため「できないことは『できない』と言っていいんだよ」、「困ったことがあったら、先生やお友達に助けてもらっていいんだよ」と伝え、周囲に助けを求めることができるようにしていきましょう。
◆子どもが相談しやすい家庭環境を作る
最後の対応は、子どもが相談しやすい環境をつくることです。
過剰適応の子どもは周囲の環境に自分をあわせようとするため、家庭環境が悪く親御さんがいつもイライラしているような家庭では、安心して本音を話すことができません。
そのため、まずは親御さん自身が、ご自身を大切にゆとりのある生活を送れるようにしていきましょう。
親御さんの生活が充実し、気持ちにゆとりがある状態であれば、お子さんは安心して自分の悩みや不安を相談することができます。
そのうえでぜひ、お子さんの気持ちに寄り添った対応を心がけていきましょう。
執筆者:
発達科学コミュニケーション
永瀬 未歩