私の娘は場面緘黙症です。そして私も幼少期は場面緘黙症でした。経験者だからこそ伝えることができる!本記事では、場面緘黙症の特徴や克服に向けてのポイントを実体験を踏まえてご紹介します。
1.話すことに苦手意識を持つ場面緘黙症
みなさん、場面緘黙症をご存じでしょうか?
家では話せるのに、学校などの特定の場所では話せなくなる、または体が動かなくなる症状で不安障害の一種です。
私の娘は家ではよく話す子なのですが、学校ではほとんど声を発しません。
検査の結果、場面緘黙症の診断がおりました。
娘が場面緘黙症とわかってから、私は場面緘黙について調べるようになったのですが、調べれば調べるほど、「私も子どもの頃、場面緘黙症だったかも?」と思うようになりました。
私は娘のように学校ではほとんど話さないわけではなかったので、周囲の人からは『恥ずかしがり屋』『大人しい子』と思われていました。
大人になった今でも話すことに苦手意識をもっています。
家では難なく喋れますが、外では3人以上の集団になると無意識に身を引いてしまいます。
自分の性格だから…と思っていましたが、娘を見ていると似ている所が目につきます。
自分が幼少期の頃、助けてほしかった気持ちを思い出し、娘のできないことばかりに目を向けずに、娘の味方になってあげたいと思うようになりました。
この記事では同じようなお子さんを持つママに子どもにどう接したら良いのか,克服のヒントをお伝えできればと思っています。
参考になれば幸いです。
2.今思えば昔の私、場面緘黙症でした。
私自身、話すことに苦手意識があると書きましたが、子どもが不登校になるまで看護師として働いていました。
常に誰かとコミュニケーションをとっている職種です。
私の場合、大人数の中で話すことは避けてきましたが、患者さんと1:1で話すのは苦には思いません。
しかも、私のことを知らない人と話す方が話しやすいのです。
これは娘も同じことを言っていました。
相手の人が私が話しやすいようにとにっこり笑顔で話してくれたり、自分だけ特別扱いをされるより、態度を変えずむしろ淡々と接してくれる方が構えずに済むので話しやすいのです。
「話さない子」と思われていると感じると余計に話せなくなったり、一度読み取ったネガティブな感情から脱出するのが難しかったです。
私が幼少の頃は『場面緘黙症』やその対応策を知っている人も今のようにはいませんでした。
そして私自身も知る由もなく、全く話せないわけではなかったので『恥ずかしがり屋、大人しい子』と思われていました。
私は家や仲良しの子の前(1:1)ではよく喋れて、大人数のいる学校や女の子の集団の中ではほぼ喋れませんでした。
自分でも猫かぶりずぎと思ってしまうくらい、集団の中では喋ろうとしても喋れないのです。
中学生までは同じメンバーだったので喋れないままでしたが、高校は県外の誰も私のことを知らない高校に進学したので、この頃から自然と喋れるようになりました。
3.場面緘黙症とは?
場面緘黙症の原因の1つに、生まれつき不安になりやすい気質をもっているから、という事が挙げられます。
脳の中の「扁桃体」(危険や恐怖を察する機能)が生まれつき人よりも過敏に反応しやすいと言われています。
その気質によって集団に入ることに人一倍不安に襲われ、思ったように話せないことに傷つきます。
その失敗経験が重なると、どんどん不安が高まり学校で話せなくなり、自分や周囲の無理解・環境の悪さが様々な悪循環となっていきます。
学校で話せないと『言葉が理解できない?』『怖がらせないようにしないと』と気を遣って話してくれる方もいました。
場面緘黙症の人は、相手の声色や態度から気持ちを読み取る事が得意なので、屈辱的な思いをしたり話すことを強制されていると感じるとプレッシャーに思ってしまいます。
話せないからと言って言葉が理解できないわけでも精神年齢が低いわけでもありません。
むしろ言葉を深読みしたり、空気を読みすぎる能力は高いです。
それに対処できる能力が伴っていないために、固まったり話せなくなるのです。
しかし、お子さんが場面緘黙症だから、人前で喋れないからといって悲観することは無用です。
今話せないことでお子さんを責めるより、今は不安なく過ごせて将来自然に話せるようになった方が負担が少ないと考えられます。
4.「私はできる!」親が手助けできる自信の育て方
学校で話せない場面緘黙症の子のゴールは『今、話せるようになること』ではありません。
話せるようにと周りが動くと、話さなきゃいけないと不安ばかりが大きくなり、話せなかった自分を責めてしまいます。
そうなると自己否定をしてしまい、話すことからますます遠のいてしまう悪循環になってしまいます。
ゴール設定は『不安が軽くなるようにするには!』と考えてみましょう。
お子さんによって困っていることや配慮して欲しいことは違います。
お子さんの希望を聞いてから、不安が軽くなるように環境設定を考えてみるとよいでしょう。
<例>
◆①学校の先生に配慮をお願いする
・話すことを強要せず、頷くことや首を横に振ることで意思表示をOKにしてもらう。
・発表が苦手なので一人よりもグループで発表になるようにしてもらう。など
お子さんが出来ること、苦手なことは個人差があるのでお子さんと相談して先生にお願いしてみましょう。
娘の特徴を知ってもらい先生に希望を伝えたところ、学校に行くことが大きな不安となっていた娘が以前のように登校拒否をすることなく登校できています。
◆②特別支援学級の転籍も考慮する
場面緘黙症は特別支援学級の対象です。
普通級では集団が苦手、話せないから困っていることも伝わりにくい、学習にも影響が出ている、すごく頑張っているのに先生に伝わらず評価されない。
このようなお子さんにとってマイナスになる事があるのなら、選択肢の一つに入れてみてはいかがでしょうか。
娘は小6で支援級に転籍しましたが、良いことばかりです。
・小集団なら話せることがわかった
・できないことをできるようにするより、できることや得意なことを積極的に取り入れた指導をしてくださるので娘の不安が軽くなった。(様々な支援級があります。参考程度にされてください)
・話すことにこだわらず学校生活が送れるようになった などです。
こちらの記事も参考に読んでみてくださいね。
就学相談を受けて良かった!通常級(普通級)に合わなかった子が特別支援学級に移籍してのびのび学校に通えるようになった記録
◆③いいね!と肯定する
自信がない場面緘黙症の子は自分の行動や言動にも自信を持てずにいます。
話そうとすると話せないし、話すタイミングや沈黙に自問自答してしまう日々でした。
そこで、ママの「いいね!」で答え合わせができます。
「今の行動良かったんだ」「今のタイミングでいいんだ」と自分の行動、言動に自信が持てるようになります。
ママが子どもに「いいね」と伝えるのは、話すことに限らないでください。
当たり前にできていることも「いいね」と伝えます。
グーを作り親指を立てるGOOD JOBサインでも十分伝わりますよ。
「7時に起きれたね。good jobサイン」
「おはようって言えたね〜 いいね〜!」 のように。
外では話せなくても、そのことについてはスルーして下さい。
ママにしか話せなくても、ママに話してくれたら「いいね」を伝えます。
コミュニケーションの基本はママと子どもの1:1だからです。
将来お子さんが大きくなった時に不安なく話すことができるように、コツコツいいねを積み重ねて「私はできる!」という気持ちを育てていきましょう。
執筆者:田中さくら
発達科学コミュニケーション リサーチャー