ADHD傾向の不登校の姉とASD傾向の正義感が強い弟。正反対の特性がぶつかり合い、衝突が絶えないきょうだい関係を改善するために、親として実践した具体的な対応方法をお伝えします。特性の理解、提案型の声かけ、ルール作りなど家庭で試せる工夫をご紹介します。
1.きょうだいの違いが目立つとき、親がするべきサポートとは?
「きょうだいなのに、どうしてこうも真逆なのだろう?」
これは、私が子どもたちを見て日々感じていた疑問です。
9歳の注意欠如・多動症(ADHD)傾向で不登校になってしまった娘と、6歳の自閉スペクトラム症(ASD)傾向の息子。
正反対の特性を持つ2人が一緒に暮らす中で、特性の違いがぶつかり合い、親としてどう対応すべきかわからなくなることが増えていきました。
特に弟が持つ強い正義感が、姉に対する厳しい言葉となり、娘の自信をどんどん奪っていったのです。
「弟の言うことは正しい。でも、これでは姉がつぶれてしまう…」
頭ではわかっているのに、具体的にどう対応すればいいのか悩む日々が続きました。
この記事では、きょうだいの特性を理解し、2人が安心して暮らせる環境を作るために、私が学んだことをお伝えします。

2.ADHDとASD真逆の特性を持つきょうだいの衝突
我が家には、9歳のADHD傾向の娘と、6歳のASD傾向の息子がいます。
娘は、ADHDの特性として以下のことが苦手です。
・出したものをそのまま出しっぱなしにする
・YouTubeに過集中して時間を守れない
・すぐにソファに寝転がるなど、姿勢を正すのが苦手
一方、弟はASDの特性があり、整理整頓が得意で完璧主義なタイプです。
・ゴミやおもちゃをきっちり片付ける
・ルールを守ることに強いこだわりがある
・「ちゃんとしないと気が済まない」という強い意志を持つ
きょうだいなのに、これほどまでに正反対の性格を持つ2人。
特に最近はお互いの特性が際立ち、親としてどのように対応するべきか、頭を悩ませる日々が続いていました。
娘が不登校になったことをきっかけに、きょうだい間の関係がさらに複雑になりました。
例えば、こんな場面が日常的に起こるようになったのです。
・ゴミを捨てない姉に対して
→「ゴミぐらいちゃんと捨てろよ!」
・YouTubeに集中して動かない姉に対して
→「僕はちゃんと時間を守っているのに!」
・ソファでゴロゴロしている姉に対して
→「座って見ないとダメなんだよ!」
正義感の強い弟にとって、「できない姉」はどうしても許せなかったのでしょう。
弟が姉を注意するたび、娘はどんどん自信を失っていきました。
そして、ついには「自分なんていない方がいい」と言い出すようになってしまったのです。
弟の指摘は確かに正しい。
しかし、その正しさが娘の心を傷つけている…。
このままでは娘はどんどん自分に自信をなくしてしまう…。
親として、どうすればよいのか途方に暮れていました。

3.なぜ?ASDの子どもが正義感を持ちやすい理由
なぜ息子のようなASD傾向の子どもは、正義感を持ちやすいのでしょうか?
その理由は以下の特性にあります。
◼️ルールへの強いこだわり
ASDの子どもは、ルールや決まりごとを守ることで安心感を得ます。
そのため、自分が守れているルールを他の人が守れていないと、指摘したくなってしまいます。
◼️完璧主義と白黒思考
「正しいか間違っているか」「良いか悪いか」という極論で物事を捉えやすい傾向があります。
このため、少しでも「間違っている」と感じると、他人にも強い指摘をしてしまいます。
◼️他人の気持ちへの共感が苦手
ASDの特性として、相手の気持ちや立場を、その場で想像することが難しいことがあります。
そのため、ストレートに思ったことを言ってしまい、結果的に相手を傷つけてしまうことがあります。
息子の場合も、これらの特性が強く現れ、姉を指摘する言葉が日に日に厳しくなっていきました。

4.ADHDの姉とASDの弟、それぞれに実践した対応方法とは?
「このままでは娘がつぶれてしまう…」
そう感じた私は、姉と弟の衝突を少しでも減らすため、以下の対応を取り入れました。
①注意ではなく提案する
私たち親が娘に「ダメ」「やめなさい」と注意していたため、息子もそれを真似していました。
そこで、注意ではなく提案の形に変えました。
寝転がってYouTubeを観る→「座って観ようね!」
片付けない→「この本はどこにしまうんだっけ?」
できるかできないかは別として、息子にも「お姉ちゃんに言う時は提案の形で言ってみよう」と教えました。
②ルールを明確に変える
「お姉ちゃんに注意するのは親だけ」というルールを決めました。
息子には、「お姉ちゃんのことで気になることがあったら、まずお母さんかお父さんに教えてね」と伝え、直接指摘をすることをなるべく避けるようにしました。
このルールは、息子を黙らせるためではなく「正しさを振りかざさなくても安心できる場所」を作るためのものでした。
③姉を尊敬する機会を作る
弟にとって、姉は「注意される存在」になってしまっていたので、「姉を尊敬できる場面」を増やすよう意識しました。
「お姉ちゃんは逆上がりができるんだよ!すごいね!」
「お姉ちゃんは算数が得意なんだよ。さすがだよね!」
弟が姉を尊敬しやすい場面を作ることで、姉に対する態度が少し柔らかくなりました。
④弟の心のケアを忘れない
不登校になった娘ばかりに目を向けていた私。
息子が「自分は後回しにされている」と感じていたことに気づきました。
そこで、息子にも「あなたも大事だよ」と伝えるために、息子の好きな遊びに付き合ったり、2人だけでお風呂に入るなど、ちょっとだけでも2人の時間を楽しむことを意識しました。

5.それぞれの心を守りながら特性を理解して乗り越えた3ヶ月
我が家はそれぞれの特性を理解し、それぞれの対応を繰り返すことで、3ヶ月後には娘の不安がずいぶん落ち着いてきました。
そして、今では息子は娘が大好きになり「ゲームを一緒にやろう!」「このゲームのやり方教えて!」と2人が一緒に遊ぶことも増えました。
さらに、息子が娘を注意することもずいぶん減って、衝突することもなくなり、きょうだい共に心が落ち着いたんだと改めて感じることができました。
もしきょうだいの特性で悩まれているご家庭があったら、どちらの心も守りながらまずは 「注意を一つ、提案に言い換える」ところから始めてみてください。
それだけでも、きょうだいの空気は少しずつ変わっていきますよ。

執筆者: 豊泉 えま
発達科学コミュニケーション トレーナー





