集団が「怖い」と門の前で立ちすくむわが子。無理に慣れさせようと頑張るほど、状況は悪化していませんか?実は、集団に戻す前に整えるべき「土台」がありました。不登園を経験して気づいた、わが子の心がゆるみ、自ら動き出すための秘訣をお伝えします。
1.集団を怖がる幼児期の子ども
行き渋る子どもを、せっかくここまで連れてきたのに「怖い」と言って門をくぐれない。
集団が苦手なら、慣れさせればいい。
今はちょっとつらいけど頑張ろう。
そんなふうに思うことはありませんか?
「怖い」と言って集団に入れないわが子を前にすると、このままで大丈夫なのかなと不安になりますよね。
私の息子も「怖い」と言い、行き渋りから不登園になりました。
もし、初期対応を間違えていなければ、ここまで長引かなかったかもしれない。
今でもそう思うことがあります。
この記事では、私が大きな勘違いをしていたこと、そして関わりの土台を立て直したことで起きた変化についてお伝えします。

2.不登園になった子どもは「怖い」と言っていました
息子が不登園になったのは年少のとき。
私は幼稚園に行きたくない理由を必死に探していました。
聞いても返ってくるのは「ママがいい」。
まだ言葉がたどたどしい4歳。
本音はうまく言葉になりません。
「先生が嫌なの?」
「お友だちが嫌なの?」
「給食が嫌なの?」
「何か嫌なことあった?」
どれも違う様子でした。
園での様子を先生に聞いても「問題なく過ごしています」と言われます。
じゃあ、何なの?
思い返せば、完全に行けなくなる前の「行き渋り」の頃から、息子はこんなことをつぶやいていました。
園が見えてくると足取りが重くなり、門の前で「怖い…」と動けなくなっていたのです。
そこで、私はこう考えました。
集団が怖いなら、慣れさせればいい。
もともと通っていた場所なんだから大丈夫。
そして、少しの時間でも園にいられればと、行事だけは付き添って参加させてもらいました。
クリスマス会、もちつき、豆まき…。
しかし、数カ月経っても状況は変わりません。
園にいる間、息子の表情はどこか引きつり、楽しむ様子はなく、むしろ私から離れられなくなっていきました。

3.集団が怖いなら集団に入れて慣れさせるは大きな勘違い
「怖い」と思っている場所に、あえて連れていく。
それは子どもにとって、恐怖そのものです。
数カ月前まで「普通に」通っていたように見えた場所が、実は子どもにとっては「巨大化したモンスター」のように見えていたのかもしれません。
頭の中は危険信号でいっぱい。
心も体も「ここは危ない」と叫んでいる。
そこへママと行ったからといって、魔法がかかったように楽しく過ごせるわけではありません。
私は「集団に入れない」という結果ばかりを見ていました。
でも本当は、その前段階を見ることが大切でした。
息子にとって、安心できる土台はどこにあったのか。
そもそも、安心を感じられる状態だったのか。
「集団が怖いなら、慣れさせればいい」というのは大きな勘違いでした。
集団に入る前にやることがある。
人間関係づくりの土台は、まず1対1から始まります。
赤ちゃんの頃、あやすと笑ってくれたあの時間。
あのやり取りの延長線上に社会性はあります。
自分がこう言うと相手はどう感じるのか。
どんな表情をするのか。
1対1でのやり取りを繰り返す中で、子どもは「人と関わるって安心なんだ」と学んでいきます。
社会性は、いきなり大きな集団の中で育つものではありません。
まずは安心できる1対1の土台を整えること。
そこから少しずつ、世界は広がっていきます。

4.1対1の土台を整えるためにできること
1対1の土台を整える。
そう考えたとき、私が一番効果を感じたのが「並んで何かする」ことでした。
向き合うのではなく、横に並ぶ。
・ソファで隣に座ってゲームをする
・外食先でもあえて隣に座る
・手をつないで散歩する
横にいると、お互いの表情が見えにくい分、緊張が減ります。
けれど距離は近く、ぬくもりは伝わる。
その絶妙な距離感が、息子にはちょうどよかったのです。
並んでぬりえをしたり、テレビを観たり、料理をしたり。
そんな何気ない時間の中でぽろっと本音が出ることもありました。
目を合わせなくてもいい安心感の中で、少しずつ心がゆるんでいったのだと思います。

5.「隣にいるよ」から広がっていった世界
不登園になったばかりの頃は、外に出るのも大変でした。
私のそばから一歩も離れられなかった息子。
でも、隣で過ごす時間を重ねるうちに、近所の人に挨拶をしたり、レジでお金を払ってみたり、少しずつ自分から動く姿が見られるようになりました。
集団に戻そうと頑張っていたときよりも、安心を増やすことを意識したときのほうが、結果的に世界は広がっていきました。
もし今、お子さんが「怖い」と言っているのなら、無理に前へ進めるよりも、まずは横に並んでみませんか。
集団へ戻すことを急ぐより、「ここは安心していい場所なんだ」と感じられる時間を。
遠回りに見えて、実はそれがいちばんの近道なのかもしれません。

執筆者:渡辺 さくら
発達科学コミュニケーション アンバサダー




