外食先での嫌な記憶が忘れられない子どもに困惑しているママはいませんか?もしかすると、「ネガティブな記憶を残しやすい」という発達の特性が隠れているのかもしれません。外食が不安な子どもが怖さを克服するための安心の積み重ね方を解説します。
1.外食先での怖い記憶を忘れられない子ども
外食先で嫌な思いをしてしまい、それをいつまでも忘れられない子どもに、どう関わったらいいのかわからない。
こんなお悩みを抱えているママはいませんか?
一度外食で嫌な思いをすると、外食を嫌がるようになる子どもは少なくありません。
特に発達の特性がある場合、外食そのものができなくなってしまうこともあります。
このようなとき、「次は大丈夫だよ」と無理に連れ出すことはおすすめできません。
もちろん、外食しなくても生活はできます。
そのまま外食を避け続けるという選択もあるでしょう。
ですが、できていたことができなくなってしまったということは、お子さんの中に強い不安が残っているサインでもあります。
このようなとき、親はどのように関われば、子どもが怖さを乗り越えていくことができるのでしょうか。

2.外食を怖がるようになってしまった息子
私の息子は、もともと食べることが大好きな子でした。
そのため、月に何度か家族で外食を楽しんでいました。
しかし、外食先で続けて嫌な経験をしてしまったことをきっかけに、外食を怖がるようになってしまったのです。
1回目は、外食先のレストランで息子の体調が急に悪くなってしまったときでした。
息子はほとんど食べられずに、タクシーで帰宅することになりました。
タクシーの中で、息子は悲しさと悔しさとで泣いていました。
2回目は、外食先のレストランで、近くの席の女の子が突然嘔吐する場面に遭遇してしまったときです。
それを見た息子はすっかり食欲をなくし、何も食べられないまま帰宅することになりました。
そして、「もう2度と外食したくない」と言ったのです。
この2回のネガティブな経験が、息子を外食嫌いにしてしまいました。
その後、誘っても「具合が悪くなるのが心配」と言って断られる日々が続きました。
一度嫌な経験をしてしまった子どもを、再び外食に連れ出すことは簡単ではありませんでした。

3.「ネガティブな記憶を残しやすい」という特性
私の息子には、自閉スペクトラム症(ASD)の特性があります。
ASDの特性をもつ子の中には、ネガティブな記憶を強く残しやすい子がいます。
脳には、不安や危険を感じるエリアと、それらを理性でコントロールするエリアがあります。
通常は、不安や危険を感じても理性のエリアが働くことで、「もう大丈夫」と気持ちを落ち着かせることができます。
しかしASD特性がある子どもは、不安や危険の情報を強く受け取りすぎてしまい、理性のエリアがうまく働かなくなることがあります。
そして、感じ取った不安や危険をそのまま記憶していってしまうため、いつまでもネガティブな記憶が残ってしまうのです。
その結果、不安や怖さの記憶がそのまま強く残ってしまうのです。
息子の脳には、「外食=怖いもの」としてインプットされてしまっていました。
まず必要だったのは、外食への不安を少しずつ軽くしていくことでした。

4.安心を積み重ねるステップ
嫌な記憶は「大丈夫だよ」という言葉では消えません。
安心できる経験を少しずつ積み重ねることで、はじめて「もう大丈夫かもしれない」と感じられるようになります。
そこで私は、発達科学コミュニケーション(発コミュ)で学んだスモールステップを取り入れることにしました。
子どもの行動を変えるときは、大きな目標を一気に目指すよりも、小さな成功体験を積み重ねていく方がうまくいくからです。
そこで息子の不安を少しずつ減らしていくために、段階を踏んで取り組むことにしました。
ステップ1 家で楽しく食べる
まずは外食を無理に勧めるのではなく、家で楽しく食べることを大切にしました。
「食べることは楽しい」という感覚を守ることを意識しました。
ステップ2 テイクアウトやメニューを見る
次に、テイクアウトを利用してでお店の入り口まで行くことを何度かしました。
お店の前を通ったときには、メニュー表を一緒に見ながら 「おいしそうだね」「元気になったら食べに行きたいね」といったポジティブな声かけをしました。
ステップ3 実際に外食に誘う
外食に誘っても、「具合が悪くなったらどうしよう」という不安を口にすることもありました。
そんなときは無理に誘わず、「じゃあまた今度にしよう!」と穏やかに対応しました。
「いつまで引きずってるの!」といった否定の言葉はNGです。
また、「具合が悪くなったらいつでも帰れるよ」という安心の声かけも添えるようにしました。

5.怖さを乗り越え、再び挑戦できるように
このような関わりを続けていくうちに、息子の気持ちに少しずつ変化が見えてきました。
「行きたいけど、不安」だった気持ちが、「不安はあるけど行きたい」に変わっていったのです。
そして外食できなくなってから2か月後、息子は自分から「行ってみたい」と言いました。
こうして、ずっと避けていた外食に再び行くことができたのです。
息子の不安を否定せず、少しずつ安心を積み重ねていったことが、怖さを乗り越える力につながったのだと思います。
子どもが怖い記憶を抱えているとき、必要なのは「乗り越えささせること」ではありません。
安心を少しずつ積み直すことです。
その積み重ねが、子どもがもう一度挑戦する力になります。

執筆者:三谷 のぞみ
発達科学コミュニケーション アンバサダー




