ADHD小学生の息子に段取り力をつけたい…!そんな私に訪れた突然のケガによるピンチ。そこで息子は「ママを助ける」という使命感から、指示待ちではなく自分で考えて動く力を身につけていきました。我が家の段取り力の育て方をご紹介します!
1.よかれと思っていた先回りが逆効果⁉︎息子の考える力を奪っていた私
我が家の注意欠陥多動性障害(ADHD)の小学生の息子は、指示待ちの傾向が強く自分から行動を起こすのが苦手でした。
朝の支度や学校の準備、帰宅後の行動でも、順序を考えて動くことが難しいので、私の方から「まずこれをやろうね」など行動に迷わないように一つずつ指示出しをしていたのです。
夏休みの学習計画も自分でやろうとしないので、私が代わりに立ててしまっていたし、テレビを見ている時には「やることがあるから終わりにしなきゃ」と自分で気づいてテレビを消すこともなかなかできないので、私から声をかけていました。
このように、私は息子が混乱しないように、指示の出し方を工夫したり、できない部分を先回りしてサポートしてきたのです。

そんなある日、私は足をケガして松葉杖生活になり、しばらくの間家事をするのが困難になりました。
思うように動けない私の代わりに息子に助けてもらわなければならない状況になってしまったのです。
しかし、この私のピンチをただの不便で終わらせずに、どうにか息子の成長するチャンスにしたいと思い、家事をお願いすることにしました。
そして、これがきっかけで「これまで私がやってきたサポートは必要だったけど、先回りしてやり過ぎることで、息子が自分で考える練習の機会を減らしてしまっていたのかもしれない」と気づくようになったのです。
そこで、なぜ息子が自分で段取りを考えるのが苦手だったのか、その理由を振り返ってみることにしました。
2.ADHDや発達凸凹の小学生が段取りを立てられない理由
息子のようにADHDや発達凸凹の小学生が、段取りを立てられない理由として実行機能(脳の前頭前野の働き)の弱さが関係しています。
とくに「何から始めてよいかわからない」「段取りを考えるのが苦手」と感じやすいのは、次の3つの力がうまく働きにくいからです。
①考える力(段取りの土台)
・やることを整理してどの順番で進めるかを決める力
②覚えておく力(作業中の地図)
・頭の中でやることの順番を 覚えておく力(ワーキングメモリ)
・作業しながら次に何をやるか考える力
③言葉にして動く力(行動のスイッチ)
・「〇〇をしよう」と頭で考えたことを実際の行動に移す力
・自分で「これをやる」と言葉に出すことで実行に移しやすくする力

これらの3つの力が弱いと、やることを整理したり計画を立てることが難しくなり、結果的に自分から動くことができず指示待ちになりがちです。
そのため、段取り力を伸ばすためには「考える・覚える・動く」それぞれの力を育てていくことが大切なのです。
ただ、私が今回のケガを通して気づいたのは、実は段取り力よりも先に必要なものがある、ということでした。
それが次の章でお伝えする「使命感」です。
3.やらされる・指示待ちじゃない!自分からやる気になるカギは「使命感」
ADHDや発達凸凹の小学生にとって、段取り力を育てることももちろん大切ですが、実はその前にもっと大切なのが、役割を持たせ使命感を感じさせることなのです。
なぜなら彼らは「嫌々やる」という感覚では脳がうまく働かず、やる気が生まれないからです。
逆に、「やることが楽しい」または「これを自分がやる意味がある」と感じられると、やる気が出て行動につながります。
つまり「使命感」を持つことが、やる気アップのカギなのです。

こうした使命感を生み出すためには、次のような3つの力が関係しています。
①意味を考える力(どうしてやるの?)
・「自分は何のためにこれをやるのか?」を考える力
・やる意味や目標を自分なりに見つける力
②気持ちを動かす力(やってみたい!)
・「面白そう!」「できたらうれしいな」という前向きな気持ちを感じる力
・がんばろうと思える心のエネルギー
③行動につなげる力(よし、やろう!)
・「これは自分の仕事」と感じて、実際に動く力
・周りと関わりながら役割を果たしていく力
この3つが合わさることで、やらされ感や指示待ちではない、自分から動こうとする気持ち=使命感が生まれ、やる気につながります。
では、どうすれば子どもに「自分がやる意味がある」と感じさせて、行動につなげる関わりができるのでしょうか?
4.ママのピンチこそチャンス!ADHDや発達凸凹の小学生の段取り力を育てる3ステップ
ADHDタイプの小学生になっても指示待ち状態だった息子が自ら動き出すようになったのは、足をケガして動けない私が考えた「ママを助ける役割3ステップ」をやったから!
その3ステップとは…
①ママを助けよう!という使命感を持たせる
まず、「ママ、今すごく困っているんだ」と子どもにピンチを伝え、「〇〇くんの力を貸してほしい」とお願いすることで、”自分が必要とされている”という気持ちを引き出します。
②役割は、以前に見たりやったことがあることにする
完全に初めてのことではなく、「前に一緒にやった〇〇、覚えてる?あれをお願いできる?」という形で、成功体験のあることから始めると、子どもは取り組みやすくなります。
③やっている途中や寝る前に、たくさん褒める
やっている途中や寝る前に、「よく気がついたね!」「ママ、本当に助かってるよ」と声をかけることで、子どもは達成感を持ち、翌日以降も自発的に動けるようになります。

我が家では、寝る前のロボット掃除機のスイッチを押す役割を息子にお願いしました。
すると、息子は 「お父さんは帰りが遅いから、ママを助けるのは俺しかいない!」 と使命感を持って行動するようになったのです。
さらに、ただスイッチを押すだけでなく、
・床にものがないかチェック
・他の部屋に入らないようにドアを閉める
・掃除前に自分の寝る準備を終わらせる
といった段取りを自分で考えるようになっていきました。
日常の他の場面でも、自分で段取りを考えて提案してくれることも増えてきたので、私が先回りすることは少なくなりました。
ママのピンチは何回もやってきます。その機会を逃さず「ママを助けるのは俺だ!」という使命感から役割を与えるとやる気アップに繋がります。
ママが「段取り力がついてきたね!」と声をかけて、成功体験を増やしていくことで、ADHDや発達凸凹の子どもも、自分で考えて動ける力が育っていきます。
小学生のうちに指示待ちから脱出して段取り力をつけたいと思っているそんなママは、ピンチの時こそぜひ参考にしてみてくださいね。
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執筆者:長谷川アン
(発達科学コミュニケーション STELLA*Schoolアンバサダー)
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