1.不安が強い子どもの心の中とは?
世界中でコロナウイルスが猛威を振るい、その影響で私たちは今、かつて経験したことのない不安と不自由の中で生活しています。
冬休みのお子さんの様子はいかがですか?
・普段に比べて極端におしゃべりなときがある、または少ない
・食欲がない
・感情を爆発させることが多くなった
・ぐっすり眠れないため、寝起きが悪い
などなど…
いろんな人とコミュニケーションを交わす機会が減り、外で思い切り体を動かす機会も減ってしまいました。
私たち大人でさえストレスを抱えながらの毎日。子どもたちには相当な精神的な負担がかかっているはずです。
特に発達障害・自閉症スペクトラム障害(ASD)やHSCと呼ばれる「ひといちばい敏感」な子どもたちは不安が強い傾向があるため、私たちの想像以上に、つらい毎日を送っているかもしれません。
まずはそれぞれの理由を解説しますね。
◆ ASDタイプの場合
・こだわりが強く、ルーティンを好み、普段と違うことに混乱する
・融通がきかない
・視覚・聴覚・味覚・嗅覚など、すべての感覚において受け取り方に歪みがある
などの特性があります。
今回のように普段の生活と全く違った過ごし方をしないといけない状況や、普段心の支えにしているルーティンワークができない場合には特に、大きなストレスを感じやすいです。
また、視覚や聴覚が過敏なお子さんは、ニュースから流れてくる緊迫した様子から、不安を大きくする可能性もあります。
◆ HSCタイプの場合
・何ごとも深く考えすぎる
・過剰に刺激を受けやすい
・共感力が高く、感情の反応が強い
・些細な刺激を察知する
という特性から、今の状況のなかで、相当な精神的負担を感じているであろうことが想像できます。
このタイプのお子さんも、ニュースキャスターの表情や声、ビデオなどの聴覚や視覚的な情報から、私たち以上に強いショックや不安を受けているはずなのです。
2.我が家のひといちばい繊細で不安が強い息子の場合
我が家の思春期の子どもはとても不安が強く、また、とても繊細で様々なことからひといちばい刺激を受け、ひといちばい傷ついてしまう、HSCタイプです。
今年は、コロナの影響で人よりもストレスがかかったようでした。
まずは中学校生活最後の3月、楽しみにしていた特別授業が盛りだくさんだったのですが、一斉休校の指示のため、突然すべてが中止になってしまいました。
それはそれはがっかりしているところに、一斉休校の延期や、緊急事態宣言です。
4月には待ちに待った高校生になりましたが、入学式が再々延期になったり、初回の授業がオンラインで行われるようになるなど、そんなイレギュラー続きの状況にふさぎがちになってしまいました。
心に溜まった悩みやストレスを、うまく発散できればいいのですが、遠慮や思春期ならではのプライドがジャマをするのか、どんどん心の内に溜め込んでしまっていました。
そしてある日、心にパンパンにたまった感情が、まるで風船のように破裂してしまったのです。
3.お母さんは心を癒す専属カウンセラーになれます!
ストレスを上手に発散できず、心に溜め込んだ感情を風船のように破裂させてしまう息子。
そんなとき私は、息子が負の感情を爆発させることで発散させ、落ち着くのを待ちます。
そしてお茶に誘ったり、一緒に横になってリラックスできる環境をつくることにしたのです。
もし、話題のきっかけとしてテレビを付ける場合には、緊迫した音声や雰囲気から不安を感じ取ってしまいますので、ニュースは避けた方がよいでしょう。
高校生の息子は、「今の状況を知らない方が怖い。」と言います。
そのようなタイプのお子さんには、程々の量を、あまり深刻ではない雰囲気の番組を選んで、心の負担にならない程度に見せてあげましょう。
そして心が落ち着いたら、お母さんはカウンセラーに変身して、子どもの話をじっくり聞く時間を取ります。
そのときに、心がけてほしい5つのポイントを説明しますね。
①「大丈夫?」と聞かない
「大丈夫?」と聞くと、人は反射的に「大丈夫だよ。」と答えてしまうからです。
その代わりに、「どうしたの?」「何か心に溜まっていることがあるなら、話してみてね」と声をかけると、子どもは自分の気持ちを話しやすいです。
② 本人が話したくなるタイミングを待つ
おやつを食べたり、ちょっとしたおしゃべりをしながら、子どもが自分から話したくなるタイミングを待ちます。
無理に聞き出そうとしないよう気をつけます。
打ち明けることで、自分のプライドを傷つけたくない、気持ちの整理をしているところ、自分の力で解決したい、などの理由があるのかもしれません。
そのような場合は、お子さんの成長のチャンス。
お子さんを信じて、自分の心と対話するのをそっと見守りましょう。
そしてお母さんのサポートを求めてお子さんが振り返ったとき、そこにお母さんがいてあげられるようにスタンバイしておきましょう。
③気持ちをそのまま受け止める。
本音を話し始めたら、否定せず、「そうだね、わかるよ。」「ママもその通りだと思うよ。」と言葉や相づちで共感を示しましょう。
共感できないことには「そう感じたのね。」と気持ちをそのまま受け止めたりしながら、しっかり子どもの話を最後まで聞きます。
お子さんが泣きたい気持ちのときには、しっかりと泣かせてあげることも大切です。
涙を流すことで、緊張や興奮をしずめ、リラックスできるのです。
泣いてストレスを解消したら、ぐっすり眠れる効果もあります。
これらは科学的に証明されているそうですよ!
④ 一緒に考える
意見を求められたら、「どうしたらいいだろうね?」と一緒に対応策を考えた後、「こうしてみるのはどうかな?」と提案の形で、意見を伝えます。
「こうするといいよ。」と初めから指示を出してしまうと、自分で解決策を見つけるせっかくのチャンスを奪ってしまうことになります。
お母さんは、お子さんが思考の整理をするガイドのような立ち位置がちょうど良いのです。
⑤前向きで明るい気持ちになれるような、話の終わり方を目指す
辛い気持ちを吐き出してスッキリしたら、お母さんの前向きな言葉で、会話を締めくくりましょう。
ポジティブな印象を記憶に残すことは、前に進むための力を、お子さんにプレゼントすることになります。
それと、もう1つ。お子さんが嫌がらなければ、ギューッと抱きしめてあげるのも、不安を和らげるのにとても効果的です。
抱きしめることで、不安やストレスが軽くなり、幸福感が高まります。
なんと、免疫系の働きも強くなる効果もあるそうです。スキンシップはいつでもとってあげたいですね!
この一連の流れで話を聞くと、息子の心が整い 「ママ、聞いてくれてありがとう。」 の言葉とすっきりとした笑顔が返ってきます。
息子は夕方頃になると、その日の疲れとともに、ネガティブな感情がムクムクと湧いてくることが多いです。
そこで、夜寝る前にこうして話を聞くことが多いのですが、ひとしきり言葉で思いを吐き出すことで、頭の中が整理され、安心してぐっすり眠れるようです。
お子さんの心が折れそうなときは、ぜひお子さんが心に溜まったモヤモヤを吐き出せる時間を、安心できる環境の中でもってみてくださいね。
お母さんは、我が子の不安が強い心を癒す専属カウンセラーになれるのです!
執筆者:飯島なち
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
不安が強い子どもに効果的なコミュニケーションを多数お伝えしています!