1.突然、学校で行われたソーシャルスキルトレーニング
私の娘は中学3年生で、繊細で感覚の過敏さがある自閉症スペクトラム(ASD)タイプの子です。
小学6年の時、学校でソーシャルスキルトレーニング(SST)の授業が行われたことがありました。
このソーシャルスキルトレーニング(以下SSTとする)は、社会生活や人と関わりながら生きていく上で欠かせないスキルを身につける訓練です。
そのSSTを娘の学校でも取り入れてみようということだったのでしょう。
ある時、突然全学年が体育館に集められ、SSTの授業が始まりました。
「誰でもいいから5人に声をかけて!まずはグループを作りましょう」というところからスタート。
まずこれをするためには、話しかける時のあいさつなどいろいろなスキルが要ります。
他の子たちがどんどんグループを作る中、わが子はポツン…。
そこへ隣のクラスの先生が「何ぼーっとしているの!早くグループ作りなさい!」との声が。
それでも動かなかった娘の腕を引っ張って知らない下級生の前へ連れていき
「6年生なんだから、あなたから声をかけなさい」
このようにして進められていきました。
その後はグループで好きなものの話をしたりして、終わったそうです。
2.コミュニケーション苦手な発達障害の子にSSTをした結果…
学校でこのようにSSTの授業が行われ、帰宅した娘。
さて、どうなったか?
過去最高に荒れた一日でした!
「何の目的で全校生徒が集められたのかわからない」
「グループを作る意味が分からない」
「この1コマの授業で何を学ばせたいのか、先生の意図が読めない」
「腕をつかまれてまでやれと言われ怖かった」
と怒りと恐怖で大泣き。
ASDタイプの娘は、先の見通しが立たないことにとても不安を覚えます。
ぽつんとしていたのもコミュニケーションの取り方がわからないというよりは、なぜ今これをやるのかをじっと考えていたというのです。
SSTを取り入れた学校は、「SSTやりました!」とホームページやお便りで大絶賛…。
後日先生からも「どうでした?」と誇らしげに聞かれた私。
違和感だらけでした…。
もちろんSSTが悪いわけではありません。SSTをやってよかったという事例もたくさんあります。
ただコミュニケーションが苦手と感じている子がいきなり集団で学ぼうとしてもハードルが高いのです。
3.家庭でお子さんにまず○○力を作ってあげましょう
それでは、コミュニケーションはどのようにどこで学ぶのがいいのでしょうか。
それは…
「コミュニケーションの基本は一対一で安心できる環境から」です。
会わない環境で無理にさせても、いい効果を生むより、自信を失うなど副作用が出ることも多いのです。
だからこそ、学校任せでなくおうちで家族でのコミュニケーションでスキルアップさせてあげることが大切です。
コミュニケーションの本を見ていると「こういう時は、こう言いましょう」というような本も結構多いです。
ただ、コミュニケーションは自分から「話す」ばかりでなく、「聴く」力も大切ですよね。
ですから、ぜひお子さんに「聴く」姿勢を作ることからしてほしいと思います。
思春期になり、親が何か言うと「ウザい」と言い、まるで聞かない…なんて事もあると思います。
そんな子どもに「聴く」姿勢を作るには、「聴きたくなるような第一声」が必要なのです。
もし第一声が「コラーーっ!」という一言だったら。その続きの言葉、聴きたくなりますか?なりませんよね?
…ということは、この逆をすればいいのです。
「優しい声で」
「笑顔で」
「近くから」
「肯定する」
こうすれば続きを「聴いてみようかな?」という気になり、回数を重ねるうちにだんだんお母さんの言うことを聴けるようになります。
そうして相手の発言にやっと耳を傾けられるのです。
一生懸命「しゃべらせよう」というより、「聴かせる」を意識してみてくださいね。
コミュニケーションが苦手な子には、その子に合うやり方でおうちでさりげなくサポートしてあげましょう!
執筆者:青島明日香
(発達科学コミュニケーションリサーチャー)
家庭で365日、お子さんのコミュニケーション力をUPさせてあげる方法あります!