1.発達障害の子のコミュニケーションの苦手さが高学年で出てくる理由
発達障害の子、特に自閉症スペクトラムのお子さんは、コミュニケーションの苦手さがあるお子さんが多くいます。
コミュニケーションと言ってもいろいろなタイプの苦手さがあります。
その中でも「視覚優位で聞くことが苦手」というお子さんが多いです。
見たものでパッと理解していくため、聞くことになかなか意識が持てない。
そのために聞けないのです。
低学年のうちは授業についていけていた。
なのに高学年になってなんだかついていけなくなってきた。
そんなお子さんは、もしかしたら聞くことに苦手さを感じているかもしれません。
高学年になると低学年とは違い、「見て動く」より「聞いて動く」という場面が圧倒的に増えます。
また中学・高校ともなると、小学校ほど板書を丁寧にする先生が減るため、聞けないことでさらについていけない、となるわけです。
一生懸命に授業を聞いていても、聞き漏らしてしまう。
そして叱られたり失敗したりしてしまう。
本人は「聞けている」と思っているだけに、こうして叱られてしまうと、本当にどうしていいかわからなくて困っている子もいるのです。
2.実は聞けていたのではなく、空気を読んで動いていた!
「話を聞くときは、お話をしている人の目を見て聞きましょう」
わが娘は、幼稚園で習ったこの言葉を小学生になってもしっかりと守り続けていました。
私もそんな娘の姿を見て、聞けていると思っていましたし、指示の内容通りに動けていました。
学校の先生からも「しっかり目を見て、真剣に聞いてくれていますよ」といつも言われていたので、安心していました。
ところが、そんな姿に少し疑問を持ったのが、4年生の授業参観の時でした。
確かに先生の目を見て説明を聞いていました。
ですが、説明が終わって作業をするときになったら、その場で固まっていたのです。
「聞いていたはずなのに、どうしてやらないのだろう」と思っていると、周りをキョロキョロ。
そして一通り見渡した後、ものすごいスピードで作業し、クラスで一番最初に作業を終えました。
「また一番!早いね」なんてみんなに言われている娘。
確かに作業は早く終えた。けれど、空気を読んで動いている感じがしました。
帰宅して「作業の時、早くできたね。先生のお話ですぐわかったの?」と本人に聞いてみました。
すると「全然わからなかったから、みんなのやることを見て真似したの」と。
確かに目を見て聞く姿勢はしていたけれど、聞けてはいなかったのです!
女の子は男の子に比べて、わりと空気を読んで動ける部分があります。
ですから動ける=聞けている、と私は思っていたのです。
てっきり聞けていると思っていた私には衝撃的なことでした。
3.説明は、言葉そのもの以外にも気をつけて!
空気を読んで動く力も、ある程度は必要でしょう。
ですが聞く力も年齢が上がるほど必要になる場面が増えてきます。
やはり聞く力も授けてあげたいところですよね。
そんなお子さんにはまず「聞いて動けた!」という成功体験をたくさん積んでほしいと思います。
そのためには説明が聞きやすくなる工夫が必要です。
説明の言葉自体を短くすること。
それはもちろんですが、言葉そのもの以外にも注意してほしいことがあります。
それは「笑顔で、近くから、ゆっくり間をおいて」話すことです。
怒った顔で話しかけられると、聞きたくなくなり、そもそも言葉が耳に入りません。
近くから言わないと、自分に言われていると気付かないこともたくさんあります。
説明されても、脳で考える時間が必要なので、次々に言われても、最初に言われたことしか覚えていられません。
こんな理由から、言葉そのもの以外にも気を付ける必要があるのです。
お母さんとのコミュニケーションでこんな体験を積んでおくと、学校で少々長い指示になったとしても、少しずつ聞けるようになっていきますよ。
執筆者:青島 明日香
(発達科学コミュニケーショントレーナー)
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