「思春期になって不登校になったら、もう遅い」と諦めていませんか。実は、発達障害グレーゾーンASD症状の繊細な子どもの脳は、親の関わり方を変えることで何歳からでも育ちます。今回は、不登校を経験した娘が大学へ進学し社会人になるまでに変化した、親の関わり方をご紹介します。
【目次】
1.なぜ思春期のASD傾向の子どもに、脳に合った関わりが必要なの?
2.優等生だった娘が不登校になって初めて気づいたこと
3.思春期だからこそ親の関わり方を変えることが大切だった
4.子どもの脳が育ち始める関わり方
5.思春期からでも子どもの未来は変えられる

監修者:吉野加容子
発達科学コミュニケーション創始者/パステル総研主宰/発達科学ラボ代表
脳科学をベースに、発達障害・発達グレーゾーンの子どもの発達支援を専門とする。広島大学教育学部卒業後、東京学芸大学大学院修士課程、慶應義塾大学大学院博士課程で学び、民間企業での脳科学研究、医療機関での発達支援、大学での教育に従事。
15年以上にわたり発達に悩む親子と向き合う中で、「子どもの発達を本当に伸ばすのは、家庭での365日の関わりである」という結論にたどり着く。
病院や学校だけでは支援が届きにくい発達グレーゾーンの子どもたちに対して、家庭で再現できる支援を確立するため、脳科学・教育学・心理学を融合した独自メソッド「発達科学コミュニケーション」を開発。
これまでに数多くの親子の変化を生み出し、“ママが変われば子どもが変わる”という発達支援の新しい当たり前を広げている。
著書に『発達障害とグレーゾーン 子どもの未来を変えるお母さんの教室』『脳を育てる親の話し方』『脳が喜ぶ子育て』など。
1.なぜ思春期のASD傾向の子どもに、脳に合った関わりが必要なの?
「今まで何の問題もなかったのに、突然学校へ行けなくなった。」
そんなわが子の姿を見て、
「なぜ頑張っていた子が、学校へ行けなくなったの?」
と悩むことはありませんか。
特に、発達障害グレーゾーン・自閉スペクトラム症(ASD)傾向のある子どもは、周囲からは頑張れているように見えても、学校生活の中でさまざまなストレスを抱えていることがあります。
ASD傾向のある子どもは、音や光などの感覚情報の受け取り方や処理の仕方、脳のネットワークの働き方、計画や切り替えなどの脳の働き方に個人差がみられることがあります。
学校では、
先生の話を聞く、授業に集中する、友達との関係を調整する、周囲の音や人の動きを処理する、予定変更に対応する、相手の気持ちを考える
など、多くの情報を同時に処理する必要があります。
そのため、ASD傾向があり、感覚や人間関係、予定変更などにストレスを感じやすい子どもにとって、学校生活そのものが大きなストレスになる場合があります。
さらに、繊細で真面目な子どもほど、
「ちゃんとしなければ」
「失敗してはいけない」
「最後まで頑張らなければ」
と、自分の疲れや苦しさを後回しにしてしまうことがあります。
その結果、外からは「優等生」「頑張り屋」に見えていても、本人の中では少しずつストレスが積み重なり、「学校に行きたくない」「何もしたくない」という状態につながることがあります。
つまり、「学校に行けない=頑張りが足りない」わけではありません。
その背景には、子どもの発達特性と環境とのミスマッチや、脳にかかるストレスが関係している可能性があります。
だからこそ、できないことを無理に頑張らせるのではなく、その子の脳の特性を理解し、ストレスを減らしながら、安心して力を発揮できる環境をつくることが大切なのです。

そして、脳には経験や学習によって神経回路や働き方が変化する「神経可塑性」という性質があります。
そのため、「思春期だからもう変わらない」と決めつける必要はありません。
何歳からでも、子どもの特性を理解し、安心な環境で小さな成功体験を積み重ねることで子どもの脳は伸びるのです。
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2.優等生だった娘が不登校になって初めて気づいたこと
私には、この春社会人になった発達障害グレーゾーン・自閉スペクトラム症(ASD)傾向の娘がいます。
娘は幼い頃から活発で明るく、空気を読むことが得意な子でした。
学校では先生に褒められ、スポーツも勉強も頑張り、中学受験にも合格しました。
私は「この子は大丈夫」と信じて疑いませんでした。
ところが、中学2年生の終わり頃、「学校に嫌な友達がいる」と話すようになり、少しずつ学校を休みがちになりました。
高校へ進学してからも何とか通っていましたが、高校1年生の冬、学校行事の英語キャンプをきっかけに登校できなくなり、通信制高校へ転校しました。
その後はアルバイトを始め、一生懸命働いて社員登用のお話までいただきましたが、「先輩との関係がつらい」と辞めてしまいました。

当時の私は、どう声をかければいいのか分からず、ただ心配することしかできませんでした。
娘が不登校になって初めて知ったのは、「もっと頑張って」では子どもの脳は動けないということでした。
発コミュを学び、娘には発達障害グレーゾーンASD傾向があり、繊細さや強い不安、完璧主義の0か100か思考があることを理解しました。
学校では周囲の人の気持ちを敏感に感じ取りすぎて、「期待に応えなければ」「失敗してはいけない」と無理を重ね、疲れ切っていたのです。
それなのに私は、「学校へ行くべき」「頑張れば大丈夫」と、自分の価値観で励ましていました。
さらに、娘は自分の気持ちを言葉にすることが苦手でした。
学校で受けたストレスを家で吐き出せず、心も脳も疲れ切っていたのだと思います。
3.思春期の今だからこそ、ASD傾向の子どもの脳に合った関わり方が大切
「もう思春期だから、今さら親が関わっても遅いのでは?」
そう思ってしまうことはありませんか?
でも、思春期だからこそ、親の関わり方を見直すことが大切です。
思春期は、子どもが少しずつ親から自立し、自分で考え、自分で選び、自分の力で行動することが増えていく時期です。
学校生活でも、勉強や進路、友人関係など、自分で判断しなければならないことが一気に増えていきます。
特に、発達障害グレーゾーンASD傾向のある繊細な子どもにとっては、思春期の環境の変化や人間関係が大きな負担になることがあります。
小学生の頃は「先生の言う通りにする」「親に言われたことを頑張る」ことで乗り越えられていたことも、思春期になると、そう簡単にはいかなくなります。
さらに、友達との関係が複雑になったり、進路を考えたり、自分と周囲を比較したりする機会も増えてきます。
そのため、今まで頑張れていた子どもが、思春期になって突然、
「学校に行きたくない」
「何もしたくない」
「自分にはできない」
といった状態になることがあります。
そして一度「できない」「失敗した」という経験が続くと、「どうせやっても無理」と新しいことに挑戦することを避けるようになる可能性もあります。

だからこそ、思春期の今、子どもの自信を失わせない関わりを始めることが重要なのです。
子どもが安心して成長できる環境を家庭の中につくることが、今まで以上に重要になっています。
「学校に行きなさい」
「もっと頑張りなさい」
と行動だけを変えようとするのではなく、
「今、何がつらいのかな?」
「どうしたら安心できるかな?」
と子どもの状態に目を向ける。
そんな関わり方に変えていくのに、遅すぎるということはありません。
「もう遅い」と諦めるのではなく、思春期の今だからこそ、親子の関わり方を変えてみる。
その一歩が、子どものこれからの自立につながっていくのです。
「できない」「無理!」が増えた子に、
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4.子どもの脳が育ち始める関わり方
発コミュを学んだ私は、まず娘との関わり方を変えることから始めました。
それまでの私は、「こうした方がいいよ」「頑張ってみたら?」とアドバイスや指示をすることが多く、娘の話を最後まで聴くことができていませんでした。
しかし、発コミュで学んだのは、子どもの脳を育てるためには、まず安心できる環境をつくることが大切だということです。
私は「肯定10・否定0」を意識し、娘の話を否定せずに最後まで聴くこと、どんな気持ちも受け止めることを続けました。
最初にやったことは、「実況中継」です。
これは、子どもが今できていることを、そのまま言葉にして出すだけです。
ポイントは、お母さんが「3S(明るい笑顔で、優しい口調で、ゆっくり)」話すこと!
脳は言葉よりも非言語情報を先にキャッチするからです。
お母さんの明るく優しい雰囲気で脳が安心して、言葉が脳に届きやすくなるのです。
そして、お母さんの言葉によって、「自分の出来ていること」が脳に入り、それが小さな成功体験になって脳が伸びていくのです。
子どもが朝起きてきたら、「起きたんだね、おはよう。(早く起きれたね。目覚ましセットしたの?)」
歯磨きをしていたら、「歯磨きしてるんだね(毎朝磨いてるね!)」
顔を洗っていたら、「顔洗ってるね(顔洗うと気持ちいいよね)」
お風呂に入っていたら「お風呂入ってるね、いいね」
最初はぎこちなく、「もう高校生なのに、こんな言葉掛けでいいのかな」と不安になることもありました。
子どもから「もういい!」と言われることもありましたが、めげずに続けました。
それでも続けていると、発コミュの声掛けを始めて約2か月後、娘は自分から新しいアルバイトを2つ見つけ、掛け持ちで働き始めました。
さらに、自分の部屋を模様替えし、ベッドやテレビ台を組み立て、居心地の良い空間を自分で作り上げました。
その後は教習所へ通い、自動車免許を取得しました。
そして、「友達と同じように大学へ行きたい」と自分から高卒認定試験を受けることを決め、合格。
短期大学へ進学した後、「やっぱり4年制大学に編入したい」と新たな目標を見つけ、自ら受験して編入しました。
大学では勉強にも熱心に取り組み、2度奨学金を受けるほど努力を重ねました。
アルバイトや一人暮らしにも挑戦し、友達との海外旅行も経験するなど、自分の世界を少しずつ広げていきました。
そして、自分の「好き」や「やりたい」を大切にしながら就職活動を行い、この春から社会人として働いています。

もちろん、ここまでの道のりは決して一直線ではありませんでした。
悩んだり、不安になったりすることもありました。
それでも私は、発コミュ対応を続け、娘の気持ちを聴き、「そう思ったんだね」「頑張っているね」と受け止める関わりを続けました。
すると娘は、ストレスがたまると自分から「お茶しながら話を聞いて」と誘ってくれるようになりました。
親子で食事をしたり散歩をしたりしながら話す時間は、今では私たちにとって大切なホームカウンセリングの時間になっています。
5.思春期からでも子どもの未来は変えられる
以前の私は、「思春期になってしまったから、もう変われない」と思い込んでいました。
けれど、発コミュを学び、親の関わり方を変えたことで、その考えは大きく変わりました。
子どもは何歳になっても、発コミュ対応である、安心できる環境の中で自分の気持ちを受け止めてもらい、小さな成功体験を積み重ねることで、自分の力で前へ進めるようになります。
発達障害グレーゾーンASD傾向の繊細な子どもは、周囲の刺激を受けやすく、人一倍頑張りすぎてしまうことがあります。
だからこそ、「もっと頑張って」と背中を押すよりも、「あなたの気持ちを大切に思っているよ」という安心感を届けることが、脳の発達につながります。
娘は今、社会人として新しい環境で働いています。
仕事で悩むことがあっても、「ちょっと話を聞いて」と自分から声をかけてくれるようになりました。
思春期に一度崩れてしまった親子関係も、安心して話せる関係へと変わったのです。
もし今、お子さんの不登校や行き渋りに悩み、「もう遅いかもしれない」と感じているお母さんがいたら、どうか諦めないでください。
脳は何歳からでも育ちます。
そして、子どもの可能性を一番近くで信じてあげられる存在は、お母さんです。
今日から、お子さんの気持ちを少しだけ丁寧に聴くことから始めてみませんか。
その小さな積み重ねが、お子さんの未来を大きく変える第一歩になるはずです。

いかがでしたか。何歳からでも脳は育てられます。私たち大人の脳も伸びます。可能性を信じていきましょう。
発達障害グレーゾーンASD症状の繊細な思春期女子の脳を育てる関わりをご紹介しています!
執筆者:佐藤 絢子
(発達科学コミュニケーションアンバサダー)
(発達科学コミュニケーションアンバサダー)



