不登校の子に「あいつばっかりずるい」と言う兄弟。学校に行く子と休む子で対応を分けるのではなく、どちらにも共通する「育てたい力」と親の関わり方を、3人の息子の不登校経験からお伝えします。
1.不登校の兄弟に「あいつばっかりずるい」と言われた
2.なぜ「ずるい」が生まれていたのか
3.兄弟で同じにするのは「ルール」ではなく育てたい力
4.兄弟への対応に迷わなくなった「子どもに決定権を返す」関わり
①「あなたはどうしたい?」と聞く
②自分で決めたプロセスを肯定する
③うまくいかなければ「次はどうする?」
監修者:吉野加容子
発達科学コミュニケーション創始者/パステル総研主宰/発達科学ラボ代表
脳科学をベースに、発達障害・発達グレーゾーンの子どもの発達支援を専門とする。広島大学教育学部卒業後、東京学芸大学大学院修士課程、慶應義塾大学大学院博士課程で学び、民間企業での脳科学研究、医療機関での発達支援、大学での教育に従事。
15年以上にわたり発達に悩む親子と向き合う中で、「子どもの発達を本当に伸ばすのは、家庭での365日の関わりである」という結論にたどり着く。
病院や学校だけでは支援が届きにくい発達グレーゾーンの子どもたちに対して、家庭で再現できる支援を確立するため、脳科学・教育学・心理学を融合した独自メソッド「発達科学コミュニケーション」を開発。
これまでに数多くの親子の変化を生み出し、“ママが変われば子どもが変わる”という発達支援の新しい当たり前を広げている。
著書に『発達障害とグレーゾーン 子どもの未来を変えるお母さんの教室』『脳を育てる親の話し方』『脳が喜ぶ子育て』など。
1.不登校の兄弟に「あいつばっかりずるい」と言われた
不登校の子が学校へ行かず、勉強もせず、家で一日中ゲームをしている。
その姿を見た兄弟から、
「あいつばっかりずるい、なんで俺だけ学校に行かないといけないの?」
と言われて、どう答えればいいのか迷ったことはありませんか?
わが家の長男は、中学1年生から完全に学校へ行けなくなりました。昼夜逆転し、起きても一日中ゲーム。
一方、弟たちは朝起きて学校へ行き、帰ってきたら宿題をして、習い事にも行く生活を送っていました。
そんな中、次男から言われたのが、「なんで俺だけ学校に行かないといけないの?」という言葉でした。
さらに、
「お兄ちゃんは夜更かししても何も言われないのに、なんで俺はダメなの?」
「ゲームだって、お兄ちゃんは一日中やってるのに、なんで俺は制限があるの?」
とも言われました。
当時の私は、「お兄ちゃんは今、大変だから」と答えることしかできませんでした。
けれど今振り返ると、それでは次男が納得できなかったのも当然だったと思います。
2.なぜ「ずるい」が生まれていたのか
当時の私は、不登校の長男には、「今は無理をさせないようにしよう」と考え、何も言わないようにしていました。
一方、学校へ行っている次男には、
「やるべきことはやろう」「守るものは守ろう」
と求めていました。
私は無意識のうちに、学校へ行く子と行かない子で「違う基準」を使っていたのです。
けれど、苦しかったのは次男だけではありません。長男だって、楽しく学校を休んでいたわけではありませんでした。
自分は学校へ行けない。
弟は普通に学校へ行けている。
言葉にはしませんでしたが、長男側にも悔しさや劣等感があったと思います。
その後、小学2年生だった三男も学校へ行けなくなり、しばらくして小学6年生だった次男も学校を休むようになりました。
兄弟3人とも家にいる状態になり、私は改めて考えました。
「学校に行かせること」
「朝起きること」
「ゲームの時間を守ること」
本当に、これが子育てのゴールなのだろうか、と。
3.兄弟で同じにするのは「ルール」ではなく育てたい力
子どもたちは、この先、自分の人生を生きていきます。母親である私が、ずっとそばで答えを出し続けることはできません。
だから私が本当に育てたいのは、
学校へ行けることでも、
親の言うことを聞けることでもなく、
自分で考えて、自分で決めて、自分で動ける力なのだと気づきました。
そう考えると、学校へ行く子も、休んでいる子も、育てたい力は同じでした。
ここで大切なのは、「兄弟全員を同じルールにする」ということではありません。
年齢も違えば、そのときの状態も違います。
同じにするのは、ルールではなく「育てたい力」です。
不登校だから何も言わない。
学校へ行っているから頑張らせる。
そんなふうに学校へ行く・行かないで基準を分けるのではなく、
「この子が自分で考え、自分で決めるために、どう関わるか」という同じ考え方で見るようにしたのです。
すると、兄弟それぞれに違う正解を考え続けなくてよくなり、私自身もずいぶんラクになりました。
自信が削れてしまう前に、関わりを整えることが大切です。
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4.兄弟への対応に迷わなくなった「子どもに決定権を返す」関わり
では、自分で考えて、決めて、動く力を育てるために、親はどう関わればいいのでしょうか。
私が意識したのは、ひとつで「子どもに決定権を返すこと」です。
◆①「あなたはどうしたい?」と聞く
たとえば朝、「学校行かないとダメ?」と聞かれたとき。
すぐに、「そりゃ行かなきゃダメでしょ」と親が答えを出すのではなく、「あなたはどうしたい?」と聞いてみます。
まだ自分で決めるのが難しそうなら、
「1時間だけ行ってみる?」
「玄関まで行ってみる?」
「今日は休む?」
と選択肢を渡して、自分で選んでもらいます。
ゲームなら、「何時までなら終われそう?」と聞いて、自分で決めてもらいます。
◆②自分で決めたプロセスを肯定する
大事なのは、子どもが出した答えが親の思っていた答えと違っても、すぐに修正しないことです。
「今日は休む」と決めたなら、
「でも昨日も休んだよね」ではなく、
「自分で考えて決めたんだね」と受け止めます。
結果ではなく、
「自分で考えた」
「自分で選んだ」
というプロセスを肯定します。
◆③うまくいかなければ「次はどうする?」
もちろん、自分で決めたゲームの時間を守れないこともあります。
そんなときも、「やっぱり守れないじゃん」と責めるのではなく、
・時間を意識できたこと
・前より少し早く終われたこと
・自分で終わろうとしたこと
できたところを見つけます。
そして、「じゃあ次はどうする?」と、また本人に考えてもらいます。自分で決める、やってみる、うまくいかなかったら、また考える。
この経験を重ねていったところ、子どもたちにも変化が出てきました。
長男は2年間の不登校を終え、中学3年生から学校へ戻り、今は全日制高校へ毎日通っています。
次男は2週間学校を休んだあと、「俺はやっぱり学校行くわ」と、自分で決めて戻っていきました。
三男は今も不登校ですが、最近、「俺、学校行けるようになりたい」と自分から言うようになりました。
そして、一時は「もう仲良くなるのは難しいかもしれない」と思うほどいがみ合っていた兄弟も、今では一緒にゲームをして笑ったり、長男と次男が二人で映画やカラオケへ出かけたりするようになりました。
私が一番うれしいのは、学校へ行けるようになったことだけではありません。
誰かに言われたからではなく、自分で考えて、自分で決めて、自分の人生を動かし始めていることです。
学校に行く子も、休んでいる子も、育てたい力は同じです。
今日、おやつを選ぶときでも、服を選ぶときでも構いません。「あなたはどうしたい?」
と、子どもが自分で考えて決める余白を渡してみてください。
その小さな経験が、自分で自分の人生を動かす力につながっていきます。
よくある質問(FAQ)
Q1:不登校の子と学校へ行く兄弟は、家庭のルールも同じにした方がいいですか?
A1:同じルールにすることが目的ではありません。年齢やそのときの状態によって必要なルールは違います。大切なのは、「自分で考えて、自分で決めて、自分で動く力を育てる」という考え方を兄弟で共通にすることです。
Q2:兄弟から「あいつばっかりずるい」と言われたら、どう対応すればいいですか?
A2:「お兄ちゃんは今大変だから」と説明するだけでは、学校へ行っている子が納得できないこともあります。まず、学校に行く子と休んでいる子で、親自身が違う基準を使っていないか振り返ってみましょう。そのうえで、どちらの子にも「自分で考えて決める」経験を渡していきます。
Q3:子どもに決めさせても、ゲームの時間を守れなかったらどうすればいいですか?
A3:守れなかった結果だけを見て「やっぱりできない」と終わらせるのではなく、時間を意識したことや、自分で終わろうとしたことなど、できた部分を見ます。そのうえで、「じゃあ次はどうする?」と、もう一度本人に考えてもらいます。
執筆者:沢木十和子 (発達科学コミュニケーショントレーナー)
引きこもりのお子さんから行動力を引き出す専門のトレーナーです。お風呂に入らない、歯を磨かない、昼夜逆転、無気力…そんなお子さんは、今まで通りの声かけでは動き出せません。それは、不登校生活で行動量が減り、脳がスリープ状態だから。行動を分解して、脳にストレスをかけない声かけに変えると動き出すんです!生活リズムを取り戻し、お子さんを自立へ導きましょう!
不登校でも大丈夫!そのヒントを毎日お届けします。
執筆者:沢木十和子
(発達科学コミュニケーショントレーナー)