小学校に入学しても、なかなか字が書けないお子さんにひたすら練習を強いていませんか。いくら練習して書けるようにならなくて困られている場合は、学習障害の書字障害・ディスグラフィアかもしれません。この記事では、原因と楽しく学べる術をお伝えします! |
【目次】
1.字が書けない子どもに困っていませんか?
学校で文字の学習が始まったけれど、
文字が大きすぎてノートのマスからはみ出す
小さすぎたり形のバランスが悪い
お手本を横に置いて見ながらでも、字を書くのに苦労している
見た目が似ている文字を書き間違える
促音や拗音を書くのが難しい
サッカーをサカー
ゴミしゅうしゅうしゃを
ゴミしうしょうしぁ
のように書き間違えてばかり…
こんな様子が見られていませんか。
そんなお子さんをみてちゃんと書けるようになるために練習させないとと思って
「ここがちがうよ」
「はみ出たからやり直しね」
とお母さんが消しゴムでゴシゴシと消してやり直しをさせていると、すぐに子どもの機嫌が悪くなり書くのを嫌がるようになってしまった。

「練習しないとできるようにならないのにどうしよう…」と困られているお母さんもいらっしゃると思います。
練習を重ねていたらお子さんがどんどん書くことを嫌がるようになってしまっている場合は、書字障害・ディスグラフィアの可能性もあります。
書字障害・ディスグラフィアは、知的障害はないけれど、「読み」「書く」「聞く」「話す」「計算する」「推測する」のうち字を「書く」ことが極端に苦手な学習障害(LD)です。
「読む」事が苦手な読字障害・ディスレキシアがあって「書く」事が難しいこともあります。
お子さんが字を書くことを避けているようでしたら、どうして字が書けないのかの理由を探って、その原因にあった対応をしてあげると機嫌よく取り組めるようになりますよ!
ここでは、子どもが字が書けないの理由と楽しく学べる非常識な方法をお伝えします!
2.子どもが字が書けないワケ
お子さんが字が書けない書字障害・ディスグラフィアの様子が見られる場合は、色々な理由や背景が考えられますが、ここでは、主な原因として3つお伝えしますね。
◆①脳の聴覚のエリアの未熟さ
字を書くためには、頭の中にある音を文字に換える力、音韻を処理する力が育っていることが重要です。例えば、「さくら」という言葉を聞いて、「さ」「く」「ら」と分けられることです。
音韻を処理する力には、
・言葉の拍が分かる(「さ・く・ら」は3拍)
・言葉の最初と最後の音が分かる(「さ」から始まり「ら」で終わる)
・言葉を音に分けて聞き取れる(「さ・く・ら」と分けて聞き取れる)
という順で育っていくといわれています。
音が聞き分けられるようになって初めて、「sa/ku/ra」という音を「さくら」という文字に変換できるようになるのです。
音が聞き分けられるようになって初めて、「sa/ku/ra」という音を「さくら」という文字に変換できるようになるのです。
この力が育つには、聴覚のエリアの発達が必要で、音を正確に聞き取る力が育っていないと「さくら」が2拍に聞こえたり、「たくら」と聞こえていたりします。
文字を書くときに、鉛筆がなかなか動かない場合は、この音を文字に変換する力の未熟さがある可能性が高いと考えられます。
◆②脳の視覚のエリアの未熟さ
文字を書くには、文字を目でしっかりと見る力が必要です。
見る力は、まずパッパッと早く見る力が育ち、その後にジーッと見る、観察する力が育ちます。
この見たいものに焦点を合わせてジーッと見る力が育っていないと、文字の形や文字を作っている線の位置など、文字のイメージが頭の中ではっきりと描けません。
イメージがぼんやりとしか描けないと、それを覚えることも難しいですね。そのため、文字を書き間違えたり、文字が大きすぎたりバランスが悪かったりするのです。
◆③脳の運動のエリアの未熟さ
文字を書くには、鉛筆をもって書くという、手先を使って細かい作業をする力が必要です。
目で手元を見て手や指を動かすという「目と手の協応」が必要で、脳の中の視覚のエリアと運動のエリアのつながりがしっかりと作られている必要があります。
目で手元をみながら、手と指を上手にコントロールする力が育っていないと、まっすぐに線を書いたり、曲線を書いたり、角を書いたりするのが難しくなります。

運動といっても、力を出したり、走ったり、飛んだりといった粗大運動と、力を調節して細かい作業をする微細運動があります。
まずは体全体を動かす粗大運動から育ち、その後に手先を使う微細運動が育つといわれています。 微細運動はだいたい5歳ぐらいに育ってきて、小学校が終わる頃まで発達していくと言われています。
いわゆる極端に不器用に見えるお子さんで、文字を書く以外にもボタンをかけられなかったり、靴ヒモを結ぶのが難しい場合は、この力の発達が未熟な可能性があります。
文字を書くときに、鉛筆はすぐに動くけれど字のバランスが悪かったり、マスからはみ出してしまったりする場合は、視覚と運動のエリアが未熟な可能性が考えられます。
このように書字障害・ディスグラフィアの子どもが字が書けないのは、子どもがやる気がなかったり、怠けているからではないのです。
では字が書けない子どもには、どのように対応したらよいのでしょうか。
3.字が書けない書字障害・ディスグラフィアの子どもが楽しく学べる非常識な3つの方法!
字が書けない子どもに、ただ「書く練習をしなさい!」と言っても、なかなかスムーズには言うことを聞いてもらえないですね。
ここでは、字が書けない子どもに書かせるトレーニングはしない!楽しく学べる非常識な3つの方法をお伝えします!
◆①手遊び歌で遊ぶ!
子どもも大人も楽しいことをしているときが一番脳が発達します。そのため、楽しみながら行うことが大切です!
手遊び歌は、よく子どもの頃皆さんもやったことのある「おせんべ焼けたかな」や「ちゃつぼ」「アルプス一万尺」などの手遊びがオススメです。
拍の理解がまだ育っていない場合は、手を使って遊びながら拍をマスターでき音韻処理の力が育ちます。
また、見本の動きをよく見る力、視覚のエリアも育ちます。そして、マネをして手を動かすので視覚系と運動系のつながりが強化でき、「目と手の協応」も育てることができるんです!
・最初は指を指されたら手のひらを返す初心者レベル「おせんべ焼けたかな」からスタート
二人でもできますが、三人以上いた方が盛り上がるかもしれませんね。
遊び方は、
・それぞれ手のひらを下に向けて両手を出します。
・一人の人が「お・せ・ん・べ・や・け・た・か・な」と順番に手の甲を指差します。
・「な」にあたった手は「おせんべいの下が焼けた」のでてのひらを上に向けてもらいます。
・てのひらが上に向いた状態でもう一度「な」になったら、焼き上がりで手を後ろに隠します。
・最初に両手のおせんべいが焼けた人が勝ちです。
まずはお母さんが指のさし方の見本を見せてあげて、次からはお子さんにやってもらってもいいですね。
この遊びは、主に音韻処理の力を育てることができます。
・「ちゃつぼ」は一人でも二人でもできる手遊びです。「ちゃつぼ 手遊び」で検索していただくとたくさん動画や説明が出てくるので、ぜひ参考にしてください。
最初はゆっくりと歌いながら見本を見せてあげましょう。
両手を順番にグーにして動かすのが難しい場合は、片手だけグーにして、もう片方の手のひらをグーの上下に当てる動きからスタート。その動きも難しいようでしたら、拍手で合わせるのでもOK!
歌(拍)に合わせて手を動かすことで音韻処理の力と「目と手の協応」も育てることができます。
・「アルプス一万尺」は一番だけで十分。二人でやると楽しめます。小学校低学年・中学年のお子さんも楽しめる手遊びです。
注意点としては最初から全ての動きをやるのは難しすぎるので、最初は手を叩いて交互に相手の手をタッチする動きだけでOK。音韻処理の力と見本を見てマネをして自分も動くので、「目と手の協応」が育ちます。
「ア・ル・プ・ス・一・万・じゃ・く
こ・や・り・の・う・ー・え・で・
ア・ル・ペ・ン・お・ど・り・を・さ・あ・お・ど・り・ま・しょ
こ・や・り・の・う・ー・え・で・
ア・ル・ペ・ン・お・ど・り・を・さ・あ・お・ど・り・ま・しょ
ラン・ラン・ラン ラン・ラン・ラン ラン・ラン・ラン ラン・ラン・ラン
ラン・ラン・ラン ラン・ラン・ラン ラン・ラン・ラン ラン・ラン・ラー」
これがスムーズにできるようになってから、少しずつ手の動きをレベルアップしてあげてくださいね。

間違えても「あーおしい!」と楽しそうに声をかけてあげてください。
学校や学童でも小学校低学年ぐらいからよく子ども達がやっている遊びなので、お子さんも見たことがあるかもしれません。「できるようになりたい!」と子どもが思えたならこっちのものです。
楽しみながら拍をマスターさせて視覚のエリアと運動のエリアを育てて、つながりを太くしてあげましょう!
◆②言葉遊び!
拍の理解が育ってきたら次に、言葉の最初と最後の音が分かる力・言葉を音に分けて聞き取れる力を育てる「しりとり」や「さかさ言葉」などの言葉遊びがおススメです。
しりとりは、動物や食べ物などカテゴリーを決めてやってもいいですね。
とにかく楽しみながらやることが大事なので、お子さんが好きなもの「ポケモンの名前」やサッカー選手の名前、車のメーカー名などをお母さんがあえて言ってあげると乗ってくるかもしれません。
さかさ言葉は、自分や家族、友達の名前をさかさまに言ってみるだけでも、印象が全然違うので楽しめます。
どちらも、車の中で手が離せない時や、お風呂の中、何かを待っている時など、ちょっとした時間にも、手軽にできますね!
◆③全身の動きをマネをする!
字を書くために必要な「目と手の協調」を育てるには、視覚のエリアと運動のエリアを一緒に使ってつながりを育てることが大切です。
手や指を使った細い動き、微細運動をマネする前に、まずは全身の動きをマネすることがオススメです。
微細運動はただでさえ苦手なお子さんたちなので、まずは「できそう!」と思えて、楽しめる全身の動きからスタート。
マネをするためには、目でジーッとみることが必要になります。そのため視覚のエリアが育ち、見ながらマネをして動くので、視覚と運動のエリアのつながりも育つのです。
例えば、ダンスや料理など。お手本をマネをして体を動かすことができます。
戦隊モノが好きなお子さんだったら、変身ポーズのマネやエンディングに流れるダンスなどもマネをして動くことも楽しみながらできるかもしれません。テレビを見ながら戦闘シーンをマネするのでもいいです。
好きなモノならマネをすることも楽しめます。ぜひ、お子さんが好きなものから何かマネをして動くことはないか、アイデアを探してみてくださいね!
楽しいことから取り組んで、書く力をぐんぐん伸ばしちゃいましょう!
字が書けない書字障害・ディスグラフィアの子どもの力をグングン伸ばす方法をお伝えしています!
▼ご登録はこちらから
執筆者:山田ちあき
(発達科学コミュニケーションリサーチャー、臨床心理士)
(発達科学コミュニケーションリサーチャー、臨床心理士)