外ではいい子で問題なし。でも家で癇癪が絶えなかった小学生の息子。『ちゃんとしつけなきゃ!』と必死だった私たち家族が、どうやって息子の変化を引き出したのかをお伝えします。
1.外ではいい子、家では癇癪を起こす子どもの対応に困っていませんか?
学校では「ちゃんとしないといけないんだ!」と頑張っていて、大人しくて真面目な子ども。
なのに家に帰った途端「ママのせい!」「パパなんて大嫌い!」と些細なことに怒ったり泣いたりしながら家族を叩いたり蹴ったり・・・
そんな風に外と家での様子が全く違うので、他の人に相談しても 「えー?全然そんな風に見えないね!」と驚かれるだけ。
こちらの悩みをあまり分かってもらえない・・・ということはありませんか?
以前、私はその悩みで本当に困っていました。
外ではいい子なのに、家では大暴れしていた我が家の次男。
その原因と、どうやってその癇癪が劇的に減ったのかをお伝えします。

2.学校では大人しくていい子、家で癇癪(暴言・暴力)の息子・・・
我が家の次男は、いつも父・母(私)・6つ上の兄からあれしろこれしろ、と言われてプンプンと怒っていることが多い子でした。
外ではいい子で、お友達にとても優しく、暴言も吐かない次男。
年少の頃は家と幼稚園での姿が全く変わらずお調子者で、懇談で園での様子を聞いても 「家でも全く一緒です!」 と先生と母が大笑いするほど裏表がない様子でした。
年中になり、優しくもしつけに厳しい先生が担任になると
「年中さんだから、お弁当はちゃんとおはしで食べないと!」
「もう5歳だから、おしりを床に付けないようにしながら、ちゃんと立ってズボンを履くよ!」
と幼稚園で習った通りにやらないといけない!と1日中頑張っていました。
そしてその頃から幼稚園では変顔も封印して真面目に過ごし、家ではすぐ癇癪を起こして暴言・暴力が出るようになっていきました。
周りのママ友に話しても
「全然そんな風に見えない!きっと家族だから甘えてるんだね」
と言われ、先生方に相談すると
「おうちではいい子、外で暴言・暴力が酷い子は問題なのですが、外で頑張ることができておうちで甘えるのは子育てが成功していると言えます。
ご家族は大変でしょうけど、教室ではきちんとできていますので問題ないですよ」
と言われました。
そういうものなら仕方ない、そのうち大きくなったら落ち着くのだろう、と思いながら卒園を迎えました。
小学校に上がっても家族に対しては相変わらず荒れていた次男でしたが、幼稚園の頃と同じく学校生活は頑張って過ごしていました。
しかし、秋から急に登校渋りが始まり、2年生になるとついに不登校にまでなってしまったのです。

3.なぜ外ではいい子、家で癇癪を起こす子どもになってしまったのか?
「不登校の原因を探る手がかりになるかもしれない」と発達検査を受けると、息子はASD(自閉スペクトラム症)であることがわかったのです。
乳幼児健診でも幼稚園でも一度も指摘をされたことがなかったので、家族としてはかなり驚きの結果でした。
ASDの特性は大きく分けると3つあり
①言葉やコミュニケーションが苦手
②社会性の発達がゆっくり
③強いこだわりや感覚の偏り(気持ちの切替えが苦手など)
が挙げられます。
次男は幼稚園や小学校にいる時には「ちゃんとしないと!」と“正しいことをすること”にこだわり続け、その分の疲れが家でどっと押し寄せる。
家族はまさか次男にそんな特性があるとは夢にも思わず、言うことをすぐにやらずに暴言を吐く次男に対し、毎回間髪入れずに
「そんなこと言ったら(したら)ダメでしょ!止めなさい!」
「テレビを止めてすぐお風呂に入って。早く!」
など次から次に注意や指示を出していました。
コミュニケーションや気持ちの切替えが苦手な特性があるのに、家族は1番年下の次男に対してしつけのつもりで、あれこれ有無を言わさず注意や指示の言葉を浴びせ続けていたのです。
次男は自分の気持ちの整理もつかず、言われたことに対して瞬時に上手く言葉で気持ちを伝えることが難しく
「イヤだ!」
「うるさい、黙れ!」
「バカ!」
と暴言を吐いて癇癪を起こしていたのでした。

4.家で癇癪を起こす子どもに、親はどう対応したらいいの?
まず、子どもがよく癇癪を起こしている場合は「何か困っているのかもしれない」と冷静に子どもの様子を伺うことがポイントです。
次々にあれこれきつく指示を出すのは止めて、笑顔で優しく伝えるようにします。
それでも子どもの癇癪が起きてしまったときには、以下の2つの対応が効果的です。
①子どもの癇癪(暴言・暴力)に振り回されず、距離を置く=『ディスタンシング』
どんな子でも怒ったまま何時間もいることはまずありません。
怒りが治まるまで子どもを刺激せずにそっと「待つこと」が大切です。
完全無視ではなく、そっと遠くから様子を見守る気持ちで子どもが落ち着くのを待ちましょう。
お子さんが小さい場合は1人にさせると危ないこともあり、離れるのが難しい場面もありますが、その場合は
・近くにいるけど別の事を考える
・家事をする
・読書をする
などして「心の距離」を取るようにします。
②子どもが落ち着いたら「落ち着けたね」と優しく声をかける
人間の脳には、注目してもらえた行動をくり返し、注目されなかった行動の回数を減らしていくという習性があります。
ギャーギャーと癇癪を起こしていてもかまってもらえなかったのに、落ち着いたら優しく声をかけてもらえた、という成功体験を増やしていくと、癇癪の時間が短くなったり、減ったりする効果が出てきます。
ここで注意したいのが、落ち着いた時に「やっと泣き止んだの?」「長かったねー」などと嫌味を言ったりしないこと!!!
せっかく落ち着いたのにまた癇癪が再発する恐れがあります・・・
親がイライラしているとついやりがちですが、ここはグッと気持ちを抑えて優しく声かけができるように気をつけましょう!

5.“ディスタンシング”の効果で自分の気持ちを少しずつ家族に言えるように
我が家ではそれまで、次男がギャーギャーと癇癪を起こしていると
⇒家族が注目して慰めてくれ、要求を聞いてくれる
⇒もしくは家族に怒られて余計に不機嫌モードが延長になる
と、家族の対応もその時々で色々でした。
しかし『不機嫌になっても注目してもらえない』ということが分かるようになると、1人でプンプンと怒りながら他の部屋に行っておもちゃで遊んだり、テレビで自分の好きな番組をつけて見たりして心を落ち着かせられるようになりました。
そして時間をかけてしっかり自分と向き合った後、
「さっきはごめんなさい」
と家族に言えるようになったのです!
ディスタンシングをして次男が落ち着いてから
「自分で落ち着けたね。さっきお兄ちゃんに『バカ!』って言ったのはどうして?お兄ちゃん悲しかったと思うよ。」
などと聞いてみると
「○○って言われたのが嫌だったの」
「まだ○○したくなかったの」
などと少しずつその時の気持ちも言えるようになってきました。
理由を教えてくれたら「そうだったんだね。教えてくれてありがとう」と伝えることも大切にしています。
今となっては、本人の気持ちを聞くこともせず、選択肢や考える時間すら与えずにあれこれ指示を続けていたことが、次男を追い込んでしまったのかもしれないと反省しています。
お子さんの癇癪や不機嫌な様子に振り回され、家族が疲れてしまっているご家庭も多いと思います。
そんなご家庭は、しつけを頑張ろうとして逆にお子さんを追い込んでしまっていないか、振り返ってみてください。
そして癇癪が起こっても、お子さんの感情に振り回されずに距離を置き、お互いが落ち着ける時間を作ってみて下さいね。
しつけをがんばらないと!と気合いを入れていた頃よりずっと穏やかな日々が訪れることと思います。

執筆者: しまたに あすみ
発達科学コミュニケーション アンバサダー