感情を言葉にして伝えることは大人でも難しいですよね。この記事では、不安が強く自分の気持ちを伝えるのが苦手な我が子に効果的だった「ありがとう」の使い方、また親として意識したポイントを具体的にご紹介しています。ぜひ、試してみてくださいね。
1.自分の気持ちが言えない…大丈夫かな…と心配していませんか?
「この子、ちゃんと自分の気持ちを言えてるのかな…」
「嫌なことがあっても我慢してるんじゃないかな…」
そんな風にお子さんの感情表現に不安を感じたことはありませんか?
感情を言葉にすることは、大人にとっても簡単なことではありません。
特に繊細で不安が強い子は、頭の中に気持ちがあっても、それをうまく外に出せないことがよくあります。
我が家の息子も、まさにそうでした。

2.我が家の息子もそうでした…
小学校に入ったばかりの頃、息子は学校の出来事をあまり話しませんでした。
「今日どうだった?」と聞いても「ふつう」とか「べつに」としか返ってこない。
嫌なことがあっても、困ったことがあっても、どう言葉で表現していいか分からない。
私自身、どう接していいのか…、息子が何を思っているのか分からず
「もっとちゃんと話さないと分からないよ?」
「言葉で言わないと分からないよ?」
と責めてしまうこともありました。
しかしある時、「ありがとう」という言葉が息子の感情に変化をもたらしたのです。

3.なぜ、気持ちを言えないの?
不安が強く感情表現が苦手な子にはいくつかの共通点があります。
✔失敗したくない気持ちが強い
✔言葉でうまく表現できない
✔相手の反応を気にしすぎる
また、聴覚や言語のネットワーク(聴覚処理)に時間がかかるタイプの子は、
「聞いて→理解して→言葉で返す」という一連のプロセスがとても負担になります。
本人にとっては、「気持ちはあるけど、どう伝えていいか分からない」状態なのです。
♦親の言葉は“子どものモデル”になる
ここで大切なのが、「親がどんな言葉をかけているか」です。
子どもは親の言葉や表情を毎日見て、知らず知らずのうちに「真似る」ことで言葉を覚え、感情表現の仕方を学んでいきます。
例えば、
・親がいつも「ありがとう」「嬉しい」「楽しいね」と言っていれば、子どもも「そんなふうに気持ちを言葉にしていいんだ」と学びます。
反対に、親が感情を我慢しがちだったり、無意識に命令口調になっていると、子どもは感情を口に出す経験自体が少なくなってしまうのです。
♦ミラーニューロンが教えてくれる「感情のまね方」
脳の中には「ミラーニューロン」と呼ばれる神経細胞があります。
これは、誰かの行動や表情を見ると、自分もまるで同じ体験をしているかのように「脳が反応する」という仕組みです。
例えば、
・誰かが笑っていると、自分もなんとなく楽しい気分になる
・怒っている人を見ると、なんだか緊張してしまう
これらは、ミラーニューロンの働きによるものです。
つまり、子どもは親の感情の出し方を『脳の仕組み』として自然にまねて学んでいくのです。
だからこそ、親が意識して「気持ち」を丁寧に言葉にすることが、子どもの感情表現の力を育てることにつながります。

4.行動+「ありがとう」+感情で感謝の気持ちを伝える
そこで私が意識するようになったのは、「行動」+「ありがとう」+「感情」をセットにして伝えること。
・「重たい荷物を持ってくれてありがとう。とっても助かってうれしかったよ!」
・「待っててくれてありがとう。ママ、安心したよ。」
このようにしてくれた具体的な行動、「ありがとう」のあとに、自分の気持ちをプラスして伝えるようにしたのです。
すると、少しずつ息子にも変化が出てきました。

5.自分の感情を言語化できるようになった息子
ある日、息子がこんな風に話してくれました。
「ママ、今日、心配してくれてありがとう。嬉しかった。」
「ママ、今日、お友達が優しくしてくれて嬉しかったよ。」
その瞬間、「気持ちって言葉にしていいんだ」と息子自身が感じてくれたように思えました。
また、私が日々かけていた「ありがとう」の言葉が、感謝の気持ちと一緒に息子の心に届いていたのだと実感しました。
今では「嬉しい」「楽しい」「悲しい」と、少しずつ自分の気持ちを言葉で表せるようになっています。
「ありがとう」は、たった5文字の短い言葉ですが、子どもの自己肯定感や感情の語彙力を育てる、とても力のある言葉です。
相手に気持ちを届けるだけでなく、自分の中にある感情に気づくきっかけにもなります。
感情表現が苦手なお子さんにこそ、ママの「ありがとう+気持ち」をぜひ届けてあげてください。
使い方の一工夫が、親子の関係を深め、子どもの感情の芽を育てていきますよ。

執筆者:たるみ あや
発達科学コミュニケーション アンバサダー